陸亀

体長30メートルはあるリクガメに遭遇する夢。

 

いとこが再び上京して、大学で授業を受けていた僕は、
彼と大学周辺で待ち合わせをすることになった。
そしたら、教務の方から紙切れを渡され、その中には

 

「北朝鮮の拉致被害者、曽我ひとみさんが上京したが
政府関係者とはぐれてしまったので、見つけ出してほしい」

 

と書かれてあった。何で僕が?と思ったがあっさりと
大学構内で曽我さんを発見し、一緒にエレベーターを降りた。

「ダメじゃないですか曽我さん」「ごごめんなさい」

大学は何故かざわついていた。事件でもあったような。

 

その後いとこと無事に会い、うちの家族も全員いて、じゃあ
みんなでごはんでも食べに行こうかとゆうことになった。
どこかのリゾートホテルの、池がある中庭を抜けようと歩いて
いたら、池の中には大量のアマガエルが棲んでいた。

 

大のカエル嫌いな弟がなぜか夢の中ではカエル大好き少年になっていて、
あり得ない程喜んでいた。池をもっと見てみよう、ということになった。
水面から出っ張った泥の山を足がかりに、池の中心へと恐る恐る歩く。

 

そこに。居た。リクガメが。
ネバーエンディング・ストーリーで見た、
あの巨大なリクガメに間違いない。一番感動していたのは父だった。

 

その時、突然リクガメが立ち上がった。巨体が池に大きな波を作った。
その波を全身に浴びた僕らは、ひいひい言いながら陸を目指して走った。
が、父だけ遅れた。「どうしたん?!」と聞くと、泥の上でズボンを見せ
一言。「亀の糞を踏んだ」。

どうせ裾は泥まみれなのだ。変わりはしないのに!
だけど父の落胆は相当のものだった。30メートルはある亀の糞なので、
それを踏んだということは確かにショックかもしれないな、と思った。

 

それでもリクガメはこっちに向かってのっそりと歩いてくる。
よく見ると、足が不自然に長くて恐竜のようだった。
首から甲羅、しっぽにかけて、背びれのようなものまで見えた。

 

落胆の父の背中を押して、僕らはどうにか池のふちに辿りついた。

 

おしまい。


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職