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三連休の初日に、大学の後輩さんたちの
写真展を観に、下北沢へ行きました。

 

『武蔵野美術大学映像学科3年 写真コース 学外展』

かつて、僕も横浜赤レンガで学外展を開きましたが、
懐古趣味で下北まで行ったわけではありません。

今回のお目当ては、渡辺直翔(なおか)さんの作品。
http://naoka-watanabe.com/

縁あってTwitterでフォローさせてもらっていて、
そのおかげで展示の存在を知りました。

ただ、後輩とはいえ面識はなく、サイトで
写真を見るだけ。でもその写真が面白くて、
生で見たいと前々から思っていました。

会場で見た作品は3m×2m、巨大なコラージュで、びっくり。

 

(c) Naoka WATANABE 「mori」
(c) Naoka WATANABE 「mori」

 

僕が知っていたnaocaさんの写真といえば、
いわゆるストリートスナップ。
まったくもって手前勝手な解釈ですが、
自分に似た趣味の目線を持った方だなぁと思っていました。
撮影フィールドがムサビ近辺だったからというのも相まって。

ところが、整然と並べられているようでノイジーでもある
この写真群を見て、スナップをより広大に再構築されていることに
まず気持ちのいい裏切りがありました。

 

(c) Naoka WATANABE 「mori」
(c) Naoka WATANABE 「mori」

 

やっていることは単純ですが、これは見るほどに複雑な作品。
群れの中にあるいくつかの「一枚」を基点に、イメージが拡張されている。
一見すると、上目遣いの女性の写真であるように見えます。
しかし四隅はそれぞれ建物や地面の写真が基点になり、増殖しています。

ネタというか、タネとなる一枚の写真も紛れ込みつつ、
それぞれが混ざり合ってより大きなイメージになってる。
トンボに記憶力があったら、こんな複眼で見えるのかしらん。

四隅の処理が写真(というかイメージ)に終わりを感じさせません。
ローディングしながら、次々と「その先のイメージ」が立ち起こりそう。

この、「写真なのに時間を感じる」ところに、
僕がヒットしたゆえんがありそうです(卒制のテーマでもあった)。

それと、この作者はとってもサービス精神が旺盛なところも好き。
庵野秀明に通じる、オタク的とも言える「見せ場」のサービスを
マクロとミクロの両方に持たせようとしているように感じました。
この志向は写真というより動画向きの考え方なんじゃないかと
これまた勝手に解釈しています。

 

Webとか広告とかばかり見ていると、
どうしても、手法としての新しさで評価しがちですが、
この組み合わせがいいんだ、と思いました。

卒業制作展が楽しみです。


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職