2009 第56回カンヌ国際広告祭 入賞作品上映会

に参加した。

 

カンヌ国際広告祭(正式名称International Advertising Festival)は、毎年6月、一週間にわたって南フランスの保養地・カンヌ市で開催される広告コンクールです。期間中は世界各国から一万人もの業界関係者が集まり、文字通り”広告漬け”になります。近年では広告業界のワールドカップと呼ばれるほど大規模なフェスティバルとなっています。
この上映会ではグランプリ作品をはじめ、現地でフィルム部門の日本代表審査員として選考にあたった講師が入賞作品の中から選んだ必見の秀作CMを上映。審査会場の様子を交えながら、それらについて解説します。日本語字幕つき。一般の方が、世界の代表的なCMを見ることの出来る数少ない機会です。

 

やっぱり自分は広告が好きなんだ!と思えた上映会でした。
「表現が研ぎ澄まされた過去のカンヌライオン=オールドスタイル」と、「広告然しない映像表現の’09年型カンヌライオン=バズになるニュースタイル」の移り変わりを体験しました。

 

グランプリを獲得した、Phillips社のワイドTV「Carousel」

[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=C5yhxqkJiAQ&hl=ja_JP&fs=1&rel=0]

 

カンヌ広告祭審査員であり、博報堂 エグゼクティブCDの
河野俊哉氏のことばが非常に示唆的だったので紹介します。

「世界各国から集まった広告が、あるひとつの兆候を示していた。金融危機をトリガーとした世界不況によって、広告がのん気に幸せだった時代の終焉を告げていた。

広告は、もう広告でいられなくなった。広告は広告を超えることを要求され、テクノロジーというアダムとイブの樹の実を食べた。多くの価値が価値を持たなくなり、多くの新しい常識が生まれた。Web2.0の意味がやっと明らかにされ、人々が企業とメディアの被支配から解放された。声を持たないピープルが、大きな叫び声をあげた。」

 

フィルム部門のグランプリ作品は、
TVCMではなくWeb用のコンテンツムービーでした。
映画マニアのための超ワイドテレビというファクトを、
その画角のまま、トリッキーな映像で訴求しています。

実際にはタイムスライスも使わず、リアルに静止した状態で
撮られたらしいです。その事実がネット上で話題を呼びつつ、
ラストシーンでピエロと警官が同一人物だった!という
ミステリアスな円環もまた、非常に映画チックなシズル(=謎)に
なって、これまた話題の提供につながっています。
映画ファンはこの手の謎を語り合いたいんです。

これがつまり、声を持たないピープルがしゃべりたくなる、
2009年からの広告のカタチだ、というわけです。

 

以前にも「すげー!」と書いたこのムービーを、解説と共に改めて
見返すことができ、そのすごさの本質に気づかせてもらえました。

2010年はどうなるか?


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職