Cannes Lions 2013プレ勉強会

6月です。カンヌライオンズの季節が近づいてきました。

cl13-logo-homepage

今年はPerfumeがゲストパフォーマーとして出る!という、広告関係者視点ではなくPerfumeファンクラブ会員としても俄然注目のイベントになりそうですが、その前にちゃんと(?)賞レースにあがってきそうなものをピックアップして好き勝手に予測しようぜ!ってことで、6月7日(金)、Cannes Lions 2013プレ勉強会に行ってきました。

『広告批評』元編集長の河尻亨一さん主宰、ゲストは毎年恒例・kiramekiの石井義樹さんによるプレ勉強会。副題は「今年は工作系(メイカーズ)来んじゃね?」。今回で4度目の開催だそうで、僕にとっては3回目の参加です‥‥が、仕事の関係で大幅に遅刻。それでも最後にプロジェクターに映し出されたスライドに感銘を受けたので、行った甲斐はありました。その話は最後に書くとして。

いくつかピックアップします。

 

イギリスの公共テレビ局 チャンネル4によるパラリンピックのコマーシャル。勝負師の顔にゾクゾクする。あまり馴染みのなかった彼らの競技を見てみたいと思う。多民族で形成されているからでしょうか、身体障害者への理解は欧米の方が進んでいる気がします。

 

学校の唯一無二の美女、スーザン・グレン。ただひたすら彼女をありったけの美辞麗句で荒唐無稽に称えるナレーション。

「『コミックのヒーローを魅了するヒロイントップ10』のライター達は、スーザン・グレンみたいなヒロインを作り出したいと願ったに違いない。スーザンが近くにいると僕の震度計は8を記録し、彼女の周りの女たちはたちまちゴブリンみたいになる」

そして「If I could do it again, I’d do it differently.」(もしもう一度やり直せるなら、今度は別のやり方にする)と現在の男(なんとジャック・バウワーasキーファー・サザーランド!)が語り終える。そして、AXEとともにFear no Susan Glenn.(スーザン・グレンなんて怖くない)。

男が惚れるヒロインと、男が憧れるヒーローのサンドイッチ。すばらしい!

 

悪魔に魂を売らなくても手が届く値段のメルセデスですよ。

この悪魔が『スパイダーマン』シリーズでグリーン・ゴブリンを怪演したウィレム・デフォーってのがいい。昨年、同じスーパーボウル枠のCMでクライスラーがクリント・イーストウッドを起用して話題になりましたが、ハリウッドスターの説得力はすさまじい。

 

クルマ続きで。

「Audiに乗って自信が持てた」
いいパパだなぁ。親子で乗ってカッコイイのって、Audiかもなぁ。と思わせてくれるCM。

 

『Smoking Kid』

路上でタバコを吸う喫煙者に、少年や少女が駆け寄って「ライターを貸して下さい」とお願いをする。すると喫煙者は必ず「え?」といった反応を示し、「タバコは健康によくないんだよ?」や「寿命が縮まるんだよ?」などと、子どもたちに対して優しく説明をし始める。タバコがどのように体によくないのは、理解しているのである。そして子どもたちは「じゃあ、なんであなたはタバコを吸っているの?」と逆に問いかけつつ、そっと手紙を喫煙者に渡す。そこには「あなたは私の心配をしてくれた。でも、なぜ自分自身への心配はしないの?」と書かれているのである。

(ロケットニュース24「タイの禁煙プロモーションCMが心にガツンとくると世界中で話題に」より)

これは見てて辛くなりました。ただ、「効く」だろうなぁ。

 

コカコーラ『Small World Machines – Bringing India & Pakistan Together』

第二次大戦による分裂以降、対立が続くインドとパキスタンを結ぶベンディングマシーンをコカコーラが提供。これは取り組み自体もさることながら、プレゼンテーションビデオが素晴らしい。本当にこんな風にハッピーな風景が生まれたのかはちょっと懐疑的ですが。絶対ダンスする人いるよな(とか思っちゃう)。

参照:対立関係の続くインドとパキスタンの国民がコカ・コーラ社のキャンペーンで笑顔に / 世界にも感動を与える

余談ですが、BGMの「Go Do」はプレゼンビデオによく多用されますね。

 

Ram Trucks『Super Bowl Commercial “Farmer”』

「だから神は8日目に農夫をつくった」という言葉がつづく、農作業用トラック会社のCM。重厚なHDR写真はよく見ると微妙に視差を生む角度をつけていたり雲が流れたり、見る者を引き込む細かな演出がされています。ナレーションはPaul Harveyというアメリカの有名なラジオパーソナリティ(2009年に90歳で没)による演説だそうです。

 

メトロ・トレインズ・メルボルン『Dumb Ways to Die』

オーストラリアの鉄道会社による事故防止啓蒙ビデオ。Dumb Ways to Dieとは「おバカな死に方集」。コミカルな死に方に笑って見てしまうけれど、実際、こういうマヌケな死に方が後を絶たないらしい。ソーシャルで流行る「キャラクター」「歌」「シンプルなメッセージ」が三拍子揃ってて、ACの『あいさつの魔法』を思い出しました。毒っけは比べものになりませんが。

ちなみに、カンヌの前哨戦ともいわれるOne Showでグランプリを受賞。

参照:かわいいキャラが歌に乗せて死にまくるメルボルン鉄道公式のアニメムービー「Dumb Ways to Die」 – GIGAZINE

 

Dove『Real Beauty Sketches』

Doveによると、世界中の女性の4%しか自分のことを美しいと思っておらず、一方でDoveはポジティブな自尊心を築き、女性たちのポテンシャルを最大限まで引き出すことにコミットしているため、女性たちに重要なことを伝えたいという想いからこのビデオを作成するに至ったとしている。そしてその伝えたいとても重要なこととは…

“You are more beautiful than you think. ―あなたはあなたが思っている以上に美しい。”

心に触れるDoveのブランドプロモーションビデオ Real Beauty Sketches [動画]より)

自分のネガティブな証言によって描かれた肖像と、他人のプレーンな証言によって描かれた肖像。シンプルだけどこれほど説得力のあるものもない。拍手したくなるムービーです。

 

さて、ここからは、「今年は工作系(メイカーズ)来んじゃね?」という副題にのっとって、なんか作っちゃった系のプロモーションたちを。

 

『The Popinator』

ポップコーンで有名なお菓子メーカーが「ポップコーンプロジェクト」を展開。「Pop!」の掛け声に反応する“ポップコーン投げマシーン”を開発しちゃいました。

 

『Super Angry Birds – a Tangible Controller』

世界中で人気の「アングリーバード」にリアルなコントローラーを作っちゃいました!手作り感満載だけど楽しそう。3人くらいで綱引き状になってて200インチくらいのスクリーンでやったら盛り上がりそうですね。

 

『The Most Powerful Arm』

筋肉が急速に衰える筋ジストロフィーへの寄付を訴えるメッセージ。筋ジストロフィー症の女性が呼びかける言葉をロボットアームがたどたどしく書き起こします。キャンペーンサイトに行って寄付すると、このロボットアームが署名してくれるようです。10日間で20,000人分のサインが集まったとか。

 

他にもいろんな事例が紹介されたようですが、最後にスクリーンに映し出されたショットがこちら。

cannes_studypng

80歳代のおばあちゃんが勝手に修復作業してとんでもない仕上がりになったキリストのフレスコ画。世界中でパロディが生まれ、遊び尽くされました。しかもスペイン南部にあるこの教会は一躍観光名所となり、入場料を取り始めたら“作者”のおばあちゃんと訴訟問題に発展したとか。

河尻さんいわく「意図して広告にしようと企んだものではないけれど、これだけ世界中で話題になるような出来事をどうやって作り出すか、注目せざるを得ない」と。

ちょうど僕も先日、うちの社長に「今年印象に残ったプロモーション教えて」と訊かれ、Googleの「World Wide Maze」や「キリンのどごし 夢のドリーム」や「リアル脱出ゲームTV」や「TOKYO CITY SYMPHONY」や手前味噌ですがIntelの「PUSH for Ultrabook」が思い出されましたが、どれにも勝って印象深いのはこれ(↓)でした。

makankousappou

女子高生がTwitterに投稿したことで大流行した「マカンコウサッポウ」。これも「おばあちゃんのフレスコ画」と同じく、プロモーションじゃない。けれど日本を飛び越え世界中でこの遊びが流行し、北米のカプコンが「波動拳コンテスト」を開催するまでに至りました。

USカプコンのフットワークの軽さは見習うものがあります。折しも日本では『ドラゴンボール』の映画版が公開中だったので「映画のプロモーションか?」とも囁かれましたが、そういった形跡は見られませんでしたし、もし実際にそうだとしたらここまで流行らなかったでしょう。USカプコンは後乗りだったから良かったのかも。そこがなんとも難しいところで、「広告だとわかった途端に冷める気持ち」とどう寄り添いつつ、面白いものを仕掛けるか?おばあちゃんや女子高生の純粋さがあればこその流行に勝負を挑まないと。そのためには、動機の純粋さではなくメッセージの純粋さが求められるのかな?言葉にすると陳腐だけど。

 

それにしても、アメリカのスーパーボウル枠で放映されるCMでほぼ埋まってしまうフィルム部門の注目作。映像の派手さではなくメッセージの普遍性、人間賛歌で評価が高いものが多いのは最近の風潮でしょうか。どれも心に沁みます。

そして、どうしても工作系といえばおバカな方向で魅力を発揮しがちですが、メッセージを乗せる領域に手を伸ばしている『The Most Powerful Arm』も印象的でした。テクニカルなことやSNSで下支えしながら、確実に誰かの笑顔をふやす仕事がしたい。そう思いました。

クリント・イーストウッドが昨年訴えた「ハーフタイム」=癒やしの時間は、まだ世界的につづいているのかもしれません。だからこそ今「効く」ことを考えたいなと。今年のカンヌライオンズは6月16日から22日まで。僕は日本から見守ります‥‥。

 

おまけ参照:

アドフェスト2013まとめ
(河尻さん編集)

Cannes Lions 2013 Prediction
(Pinterestで予想している人のまとめ)


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年:武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業 2006年:(株)博報堂アイ・スタジオにてプランナー/コピーライター職 2012年:(株)BIRDMANにてプランナー/ディレクター職 2017年:(株)某広告代理店にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職(現職) デジタルガジェット、広告、映画、Netflix、写真、ももクロのあーりんを愛してやまない37歳