Cannes Lions 2013 閉会

先週土曜(6/22)にカンヌライオンズが閉会しました。
日本からウォッチしていた自分なりに大ざっぱに振り返ってみます。

60周年を迎えたクリエイティビティの祭典が閉幕
60周年を迎えたクリエイティビティの祭典が閉幕

今年は開催60周年でレジェンドの年と言われ、いま新しいか?ユニークか?ということと同時に、いやそれ以上に、「この作品・仕事を後世にも残したいかどうか?」がジャッジの基準に掲げられたのではないか?と言われています(というか、現地に行っていたうちの社長が周囲とそういう話をしてたそうです)。まるでMoMaのパーマネントコレクションにふさわしいか?的な視点ですね。それもあってか、全体的に受賞作品(広告を作品と呼ぶのは個人的にはすごく違和感があるのですが、めんどくさいので作品で通します)は社会貢献モノ、人助けモノ=ソーシャル・グッドな作品が目立った年だったように思います。おそらく来年はその方向性を掘り進めたものと揺り戻しでエンタメに振り切ったものの両方がよりぐちゃぐちゃに混在するんじゃないか?と思ってます。というか、そうあってほしいな。

公式Facebookページより
公式Facebookページより

それから、これは日本での話ですが、Perfumeがゲストパフォーマーとして出演したこともあって、一般の方々にも映画祭以外の「もうひとつのカンヌ」が広く知られるきっかけとなりました。NAVERまとめに連日まとめ記事がアップされたり、BlogやFacebook、Twitterでわかりやすく速報してくれる人がいたりして、現地にいなくても何が受賞し、何がトピックとして語られているのかは瞬時に伝わるようになっていますが、その動向が今までより分かりやすくパッケージングする方々が多く現地に行かれているおかげで、広く注目されているなぁと実感します。ま、これも錯覚なんでしょうが。

直接伝わらないとすれば、あの現場特有の熱気でしょうか。あれは行った人にしか味わえない「カンヌ熱」。良くも悪くも、その熱におかされて帰ってくるのが行った人の常です。「やっぱ時代は社会貢献だよ!」とか言ってる人がいたらものすごく警戒しますが。

で、僕の身近では社長が行ってきたのですが、熱よりも冷静さをまとって帰ってきました。それは僕らの主戦場であるサイバーライオンで成果を上げられなかったことがいちばん大きく作用しています。その要因はいくつかあるでしょうが、そのひとつは先に書いた「レジェンド」=広告界の重鎮たちの審査視点がいつもと異なっていたからではないか?と個人的には思います。ことサイバーライオンに関しては。やはり審査員の構成によって結果は大きく変わりますから。

とはいえ、決まった結果にケチつけても覆りようもないですし、受賞作品にはそれぞれ見習うポイントがあるはずです。カンヌは終わったけど僕のカンヌは、というか「いいものをつくる」という思いはこの仕事をしている以上は終わらないので(あれ?熱くなってきたな‥‥)、これからも地道に気になった作品をピックアップして、自分なりの視点と言葉を添えてBlogにアップしていこうと思います。

そう、大事なのはデコンストラクション!ある成功事例を自分なりに分解してインサイトから掘り起こし、アイデアの根源へと潜り込む作業です。そうすることで事例をただ知ったかぶりで終わらせない。誰かの記事と被ったとしても、誰かの言葉をなぞることになったとしても、自分のアタマで考えて自分の手で残すことがあとあとすごく効いてくるんです。英語を音読するような感じ?「ただ聞き流すだけでいいんです」なんて嘘です。この通称「デコン会」を僕は2年前に博報堂で石井うさぎさんや木村健太郎さんらとやらせてもらって、これをやりきらないとカンヌを体験しきったとは言えないなぁと思ったのです。本当は複数人でやるのが効果的なんですが、Blogはどこまでも個人のものなので、ここではひとりでやっていきます。

あと、会期中にプロモ&アクティベーション部門モバイル部門のグランプリをBlogにまとめて気づきましたが、英語の勉強になります。アワード用のムービーは非常にシンプルに作られているので文法的には難しくないのですが、短時間に多くのことを伝えるので早口気味。そこで分からない単語や聞き取れなかったワードを調べていくと英語のボキャブラリが増えます。特殊な言葉すぎて日常では使わないよ、というものもありますが。

‥‥とまあ、2013年のカンヌは終わり、蓋を開ければメルボルン鉄道の「DUMB WAYS TO DIE」がグランプリ5冠という前代未聞の快挙を成し遂げたエポックな年になりましたが、テキスト(教科書ね)としてのカンヌはまだ終わってないのです。

 

そういえば、2011年のカンヌ勉強会で電通の岸勇希さん(ブランデッドコンテンツ&エンターテインメント部門審査員)がこんなことを仰っていました。

「今年は節目の年です!ってこの6年くらい毎年聞いてる気がするんですが、要は、カンヌは自分の中での発見でしかない。金銀銅の色を見るな、自分がどれをいいと思うかを素直に見ろと。賞を伏せてひとつの事例を徹底的に分析すると、その人の血肉になる。あと、たくさん見る。どれがすごい、ではなくて、とにかくたくさんの事例に触れられるんだから、見まくって学べばいい。今は公式サイトでも見られる」

(拙Blog CREATIVE KITCHENに行ってきました。#03 より)

つづく。

 

参考記事:
カンヌライオンズ2013受賞結果出そろう 日本は33のライオン獲得 | AdverTimes(アドタイ)
NAVERまとめ:タグ「カンヌ国際広告祭」
世界最大級の広告祭「カンヌ・ライオン」で注目された日本人


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職