チームPerfume / テクノロジーで“想い”を身にまとう

昨日、全国ツアーが発表されたばかりのPerfumeですが、昨年の夏に河尻亨一さん主宰のもと出版された『クリエイティブ手帳』に寄稿したPerfumeに関するコラムを掲載します。

 

私たちは Perfume
ここに来た
日本は遥か東 出会うために
世界と 私たちと みんな
ここに立つ
日本とつながって 伝えるために
世界に

2013年6月20日、Cannes Lions 2013での電通によるプレゼンテーション「Happy Hacking: Redefining the Co-creation Frontier(ハッピー・ハッキング:共創の最前線を再定義する)」でゲストとして迎えられたPerfume。冒頭の言葉は、世界中から集まった4,000人もの広告関係者が見守る中、メイン会場であるグランドオーディトリアムのステージから世界に発した彼女たちの挨拶(メッセージ)である。

厳かな雰囲気から一変し、小刻みなビートと衣装に映し出されるプロジェクションで始まる『Spending all my time』エクステンデッドミックス。この模様はCannes LionsオフィシャルYouTubeでも全世界に生中継され、世界へのお披露目となった。

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日本で固唾を呑みながらモニタにかじりつくように見ていた僕・・・・を含めたTwitter上のPerfumeファン(Perfumeクラスタ・通称 パフュクラ)は「いいぞいいぞ!」と、まるで甲子園に出場した母校を見守るかのような緊張と連帯感をタイムライン上で共有していた。しかもプロジェクションマッピングで3人の全身に投影されていたのは、サイバー部門でSILVERを獲得したグローバルサイトに集約されたファンからのツイート。僕のタイムラインでは「俺もカンヌデビューw」というツイートも見られた。

冒頭の「日本とつながって」を体現したこの粋な演出こそが、2010年よりPerfumeのLIVEアクトの演出を手掛ける真鍋大度氏(ライゾマティクス)の真骨頂だと思う。これまで数々のテクニカルなアプローチから、ファンとの間に物語を紡ぎ出してきた。メンバーのあ〜ちゃんはこの日のことを

「みんなの想いでPerfumeはつくられているんだっていう、前々から私が思っていたことを形にしてくれた」

と、後日ラジオでしみじみと語っていた。

perfume01ここで「Perfumeグローバルサイト」について触れておこう。世界展開にあたって、ワールドワイドに自己紹介する拠点として生まれたWebコンテンツにもかかわらず、肝心の彼女たちの顔写真やアートワーク、PVなどは一切ない。不親切なほどに情報がなく、あるのは中田ヤスタカ氏のバキバキのBGMと、それに合わせて踊る3人の3Dモデリング映像のみ。

当初は、ノンバーバルな世界観の中で最小限の構成に絞り込んだ「記号としてのPerfume」をキャッチーかつミステリアスに体感してもらうことが狙いなのかもしれない(海外ファンにはYouTubeという強力な補完サービスがあるし)と思ったが、実はそうでもなさそう。

perfume02いつでもつながれるオンライン上の「ステージ」は、公開時からツイートを集積してビジュアライズする機能を持っていた。ティザーサイトは専用ハッシュタグでツイートすることで3人の3D CGによる全身像が浮かび上がる。それはハイコンテクストな「ファンレター投稿」。さらに3人の3Dデータをダウンロード可能とし、コアなファン(でありクリエイター)たちによってさまざまなテクスチャーで踊るダンシングビデオが作られたり、3Dプリンタで3人のフィギュアが作られたり。もはや「海外への自己紹介」としてのグローバルサイトではなく、3人とファンをつなぐプラットフォームになっている。ノンバーバルな顔して、言葉を集積する装置だったのね。

この一連のプロジェクトはふつうに彼女たちの音楽を聴いて応援するライト層にとっては敷居が高いと思われるが、真鍋氏には「あえて少し挑戦的なアプローチをする方が受け入れられる」という思惑があったという。「つくれるファン」への過剰サービスに、「つくれるファン」は過剰に応える。それが世間一般でのPerfumeのブランディングにもつながっている。超不親切で、超親切。ひとことで言えば、尖ってる。

やがてサイバーな「場」に集まったファンの言葉やアクションは、LIVEのプロジェクションマッピングによって3人の生身の体に“還元”される。それは本人たち自らが「想い」を身にまとった瞬間だった。カンヌのサイバー部門でSILVERを得たグローバルサイトは、その賞を授与されたレッドカーペットの先にあるステージで完成したのだ。

Web

そんな粋で手の込んだ演出を下支えする技術もすごかった。舞台袖からリモコン制御で5回も変形させていたという衣装や、正確かつ俊敏に踊る3人の全身とリンクするプロジェクションなど、開発と実証、リスク回避策まで練られた装置をたった2ヶ月で準備したというのだから脱帽。まじで。

当日の舞台裏を真鍋氏自身はこう振り返る。

「当初与えられたセッティング、キャリブレーションの時間は始まる直前の15分間のみ。メンバー3人は本番までステージに立つことは許されずぶっつけ本番でやるしかないという非常に厳しい条件で、さらに彼女達は大阪でライブを終えてすぐに渡仏してライブという過酷なスケジュールでした。当日の会場のセットも、その日まで分かんなかったもんね(笑)。 」

『Perfume at Cannes Lions! 真鍋大度&菅野薫が、共創の最前線“ハッピーハッキング”の想いを語る』より)

そんな裏方の苦労はみじんも感じられず、ただただ彼女たちのパフォーマンスは日本人ならではの「所作」と呼びたくなる優雅さにあふれていた。真っ暗なステージに浮かび上がるカラフルなグラフィックは万華鏡のようで、直線の美しい純白の衣装は折り紙のよう。複雑に折りたたまれ、リモコン制御で動くプリーツは現代版の歌舞伎の早替えである。決して単純に海外受けを狙ったものではないだろうが、「そう見てしまう」自分がいる。Twitterではすぐさま3人の衣装をキャプチャしてギミックを紹介してくれる人までいて、ありがたい。

 

たった8分間ながらも強烈なビジュアルを披露したLIVEは、Perfumeの個性の一部を象徴的に切り出して幕を閉じた。

「今までできなかった、MVとかの映像の中だけで合成していたようなCGとかが、ライブで見せられるようになったのは、三人だけで立つステージに無限に幅が広がったなと思います」(『Switch』Vol.31・かしゆか)

「大度さん達がいなかったら、こういう前衛的なことをしてるグループには絶対見えなくて。だからPerfumeのかっこいいイメージをつけてもらってます」(同・のっち)

広島出身の、売り出し方を秋葉原あたりで彷徨うアイドルから一転、中田ヤスタカプロデュースにより「テクノポップユニット」としてオリジナルの位置を不動のものとしたPerfume。もともと肉声をヴォコーダーで変換されることで注目を浴びたテクノポップユニットは、LIVEパフォーマンスやファンとの接点でもテクノロジーを武器にすることで飛躍した。とまとめると3人がロボットのようだが、ロボットのように振る舞える肉体と表現力、それに相反するチャーミングな人間性に引き込まれる。って、完全にファンレター投稿になってきたぞ。

チームPerfumeのHappy Hackingは、これからもさらにHappyな世界を私たちに投影してくれるだろう。すべての想いをインプットし、その身にまとって。

(2013年8月31日寄稿のテキストに加筆・修正)

 

そして今。

昨年10月に発売されたアルバム『LEVEL 3』を引っさげて東京・大阪の2大ドームで行われたツアー Perfume 4th Tour in DOME 「LEVEL3」 (初回限定盤) [Blu-ray] は必見です。これについてはまた今度じっくり書きたい。

Blogなんで自分の好きな曲についてダラダラ書くよ。

http://youtu.be/FzVjxVQgVDs

『Yes-No』(1980年)
オフコース、あぁ、名曲や‥‥。

中学高校と、オーディオマニアの父とフォークソングファンの母に影響されて、中学の入学祝いに買ってもらったKENWOODのコンポで聴きまくったのが、このオフコースと、井上陽水、安全地帯、中島みゆきでした。家に母親のカセットテープがあったから。

高2の夏から友達に勧められてRADIOHEADやBjorkなどへと傾倒していきますが(ハードはMDウォークマン)、田舎の思春期のガキにとっては『Yes-No』がまぶしすぎる原体験。言葉にすると陳腐だけど、日本語の歌詞の奥深さとメロディで描かれるドラマ性に衝撃を受けたものでした。

とくにオフコースと安全地帯は今でもほんとうに素晴らしくて。
声とアレンジが。

『碧い瞳のエリス』(1985年)。
安全地帯、最高や‥‥。

この曲の作詞をされている大御所・松井五郎さんが手がけられた名曲『ふたりの夏物語』。その作曲家・林哲司さんと近年タッグを再び組んで作られた曲があるので、お聴きください。

http://youtu.be/RRlB4lNeY7c

『涙目のアリス』(2012年)
玉井詩織(ももいろクローバーZ)

いいなぁ、80年代トレンディドラマ風のこのマッシュアップも込みで。
(動画作者さんの『ももクロと警察』も秀逸です)

なんなんでしょう、この歌詞とメロディとアレンジから来る王道感。
2012年じゃなくて1985年くらいから歌い継がれてきた名曲のような。

ただ貼りたかっただけのキャプチャ。
ただ貼りたかっただけのキャプチャ。

企画物アルバムの1曲とは思えないクオリティに、アイドルかくありき!と思わず納得してしまう。

そんな80年代J-POPを彷彿とさせるこの曲のピッチを落としたものがこちら。

しおりん、大人や‥‥。
「昔、中山美穂が歌ってて、それがコレなんだよね〜」とサプカルクソ野郎がLP漁りながらこれ見よがしに言ってきたら信じてしまいそう。

玉井さんもいつかこんな落ち着きのあるしっとりとした歌い方をする日が来るのかしら。

脈絡なくつづけます。

『グランドでも廊下でも目立つ君』(2010年)
作詞・作曲 つんく♂

Berryz工房の須藤真麻さんと熊井友理奈さんのデュエット曲。これまた素晴らしい。熊井さんの声とこの曲の透明感はいまいちマッチングしないんじゃないか?と思ったりもしましたが、LIVEで観て謝りたくなりました。かわいく歌う。これに尽きます。オフコースじゃないんだから。

 

まとめられなくなってきたので、無理矢理まとめると、かわいく歌う!& シンセサイザー最高!(違)

というわけで、この人を避けて通ることはできません。
お聴きください。
tofubeats『Don’t Stop The Music』feat.森高千里(2013年)

 

避けて通れない人と組むtofubeatsさんの避けて通れないセンスに注目です。
おしまい。