2014年の帰省タイム

帰省の時間が迫ってる。
それぞれの実家へ帰る私たち夫婦は変わっていると言われる。

昨日はEspeciaというメジャーデビューが決まったばかりのアイドルグループの出るLIVEイベントに行って握手会とツーショット撮影。これまで参加したことのある握手会は渋谷で遭遇した『きゃりーぱみゅぱみゅ』と先月の『水曜日のカンパネラ』コムアイちゃんだけという遍歴もいいところだったが、ガチのアイドルとの握手会はさすがに緊張して上手く話せなかった。

メジャーデビューが楽しみなEspecia。
メジャーデビューが楽しみなEspecia。

 

それでもリーダーの悠香(はるか)ちゃんはTwitterでEspeciaの話題をFavoってくれるのでダメ元でアカウントのアイコンを見せたら「あー!知ってる!!」と言ってくれて、屈託のない笑顔がまぶしくて、なんというかその場で液化か蒸発か、ともかく固体でいることが危うくなるほど嬉しかった。これが握手会の魔力なのね・・・・。

たまたま現場で出くわしたSCRAP吉村さんに写真を見せてニヤニヤしてたが、Especia談義もももクロ談義もそこそこにその日のイベントは終了。家に帰ってもツーショット写真を開いて夢のような出来事を反芻していた、

が、

あとから帰宅した妻に新日本プロレスのオカダ・カズチカ選手とのツーショット写真を見せられ、自分のiPhoneをそっと仕舞った。

なぜか今年突然プロレスに目覚めた彼女は、100年に一人の逸材・棚橋弘至にはじまり中邑真輔、飯伏幸太、そして数時間前に撮ってもらったというオカダ・カズチカとツーショット撮影を決めてすっかりプロレス大好きおばさんになった。ジャニヲタでもあるから秋は『Hey! Say! JUMP』の横浜アリーナ公演と両国国技館(プロレス)とをハシゴして「盆と正月がいっぺんに来たよう」とか「盆と正月がいっぺんに終わった」とか言っていた。ドル誌(ジャニーズ系アイドル雑誌のこと)と週刊プロレスがならぶ居間にも慣れた。

イッテンヨンが楽しみな新日。
イッテンヨンが楽しみな新日。

 

目の前の妻は191cmのオカダがいかに巨体だったかを生き生きと語り出し、まるで黒船を見た坂本龍馬のように止まらない。そんな人を前に悠香ちょがいかに華奢でかわいかったかを語ることなどできるはずもなく。それでなくても語れる勇気はないけれど。

帰省の時間が迫ってる。

 

紅白が楽しみなももクロ。
紅白が楽しみなももクロ。

 

今年も紅白で「ももクロ」にかじりついて見る長男(僕)を次男はまるでそれが仕事であるかのように徹底的にバカにして、母は不思議なものを見るような目で「これが好きなん?」と聞いてくるだろう。せめて妻がいれば弁護してくれるかと思いきや傷口を広げる証言を披露することも明白。むしろその方が楽で、ひとりであしらうのは面倒で疲れる。口の悪い弟と妻との結託は手厳しいけれど的確で楽しい。一緒に帰省できなくて残念な点があるとすれば、あの二人のめおと・・・・ではなかった、漫才が見られない点。今年はプロレス話も加わってさらにカオスになっていただろう。

お正月というのは帰省してダラダラして、親のいる家で親のつくる雑煮を食べるためにあるんだと思う。そのためには多少太ってもしょうがないし、自堕落になってもしょうがない。それが田舎を離れた者の仕事だと思う。

妻には妻の、僕には僕の仕事がある。そんなことを言っていられるのは自分たちに子どもがいないからだが、もしいたら帰省先はどちらかに絞られ、ツーショット写真の相手も“我が子”に代わるのだろうか。「孫の顔を見せる」ことが仕事になるのか。握手会で溶けそうになる自分にはまだ想像もつかない。いい歳だけど。

 

さっき九州へ帰る妻を玄関で見送った。「よいお年を」。飛行機のチケットが冷蔵庫に貼られたまま出ていくあの人を呼び止めて、もう一度「よいお年を」と言い直して大掃除に戻る。
僕は明日帰ります。

小霜和也『コピー1本で100万円請求するためのセミナー』

渋谷のタワレコで「水曜日のカンパネラ」のインストアLIVEを観た後、コピーライター・小霜和也さんの新刊『ここらで広告コピーの本当の話をします。』出版記念【コピー1本で100万円請求するためのセミナー】に行ってきました。

書籍は発売されてすぐに一気に読破しました。

いつだって「広告制作は自己表現じゃない、発注主の抱える問題にこたえるためにある」なんてわかっているつもりだけど、ここまでひとつひとつの思考プロセスが体系立てて書かれると、はたして自分はどうなのか見直さざるを得ない。ページをめくるたびに身の引き締まる思い&目から鱗で、ときどき死にたくなるほど悶絶させられる名著でした。

そんな本を携えて入った青山会館は250人のお客さんでぎっしり。
会場でマイク片手に「コピーで100万円欲しいかー!」と拳を突き上げる小霜さんに、250人の戸惑いがちな「お、おーっ!」。どう見てもネズミ講っぽいタイトルですいません、という挨拶からはじまったセミナーは、A4ノートに8ページものメモになりました。

* * *

1:マネースクープ・・・・コピーライターのお金のぶっちゃけ話

昔は、コピー1本1,000万円と言われていた。もちろん1本書いたらすぐ1,000万も請求できたわけじゃないけど、雑誌1誌ごとにカウントして足し上げて数百万を請求できた時代もあった。

じゃあ、若いコピーライターたちはなぜ皆貧乏なのか?

昔は代理店がメディア費で稼いだ分からコピーライターに支払うことが多かった。
昔は代理店がメディア費で稼いだ分からコピーライターに支払うことが多かった。

 

今はメディアエージェンシーとクリエイティブエージェンシーが分離しているから、代理店は広告主に請求せざるを得ない。
今はメディアエージェンシーとクリエイティブエージェンシーが分離しているから、代理店は広告主に請求せざるを得ない。

 

コーポレートスローガンや数億円がかかる大きな仕事はタレントコピーライターに発注するが、そうでないコピーは広告主が社内でも書くようになった。残ったものを手間賃コピーライターに発注する。
コーポレートスローガンや数億円がかかる大きな仕事はタレントコピーライターに発注するが、そうでないコピーは広告主が社内でも書くようになった。残ったものを手間賃コピーライターに発注する。

 

書けるものは社内で書きます、という広告主が増えている。
そんな時代で、タレントコピーライターと手間賃コピーライターの二極化が進んでいる。

コピーライター格差社会の到来。

残された道は、タレントコピーライターになるか、お金がもらえるコピーを書くか。

 

小霜さんの分岐点
10年ほど前に2、3年、コピー年鑑の審査員をやった。
審査員とは権威の象徴。これで俺もタレントコピーライターの仲間入りかな?と思った。が、翌年、審査員を辞退。大変な時期もあったが、お金になるコピーを書きつづける道を選んだ。

お金になるコピーとは?
・商品価値を高めるもの
・独自のアイデアがあるもの
・努力の跡が見えるもの

逆にこの3つが感じられないものには人はありがたみを感じない。お金を払おうと思わない。

ネット社会、SNSが台頭する社会になって言葉が増えた。「うまいこと言う人」はTwitterにいっぱいいる。面白い一般人のなんと多いことか。それが可視化されてすぐに伝播・共有される時代で、コピーライターは、それとは別の軸、上記の3つで闘うこと。

 

例えば、幼児にとってiPhone 6は価値があるだろうか?

電話ができる、メールができる、と言っても価値はない。だけどタッチ操作に慣れた幼児にYouTubeが見られるよ、と言うと価値が生まれる。つまり価値があるかどうかは「伝え方」によって変わってくる。「ターゲットが価値を感じるように」表現してあげるのが広告コピー。

翻って、若手が書きがちなのは説明コピー、大喜利コピー。商品を言い換えただけで価値を上げていない。それはターゲット不在のまま書いているから。

 

2:生け贄の山羊・・・・若手と小霜さんのちがい

iPS細胞技術の実用化を進めるヘリオス社と、ライティングを小霜さんから頼まれた若手の方(生け贄のヤギさんとして登場)の承諾を得て、ケーススタディの紹介。複数回にわたるヤギさんからのコピー提出と小霜さんの的確なフィードバックがいちいちリアル。

例えばヤギさん1回目の提出コピーは「要約しただけ」、「なんとなく周辺にある言葉を組み合わせただけの組み合わせコピー」。ヤギさんの証言「そんなに組み合わせが好きならLEGOに就職しろって言われました」。ひー。

 

そんなやりとりの中で見えてきた、「若い人と小霜さんのちがい」について。

▼若い人・・・・・・すぐ書きはじめる
▼小霜さん・・・・すぐ調べはじめる

「僕は商品にまつわる本を1〜2冊は買って読む。若い人はネットで調べるくらいのことしかやらない。インプットの量が一般レベルなのにすぐ書きはじめるから限界に達するのも早い」

 

▼若い人・・・・・・実績:金の鉛筆
▼小霜さん・・・・実績:30年

「コピーライター養成講座でもらう金の鉛筆はいっそただの鉛筆にしてほしい(笑)。金の鉛筆もらって「私は書ける!」と勘違いしちゃう人が多い。むしろ僕は30年やってて「俺は書けない」からスタートする。だから調べるし悩むし検証するし。「俺はダメだ〜!」から這い上がる力が書く力になる」

 

▼若い人・・・・・・独自の表現をつくろうと考える
▼小霜さん・・・・独自の意見をつくろうと考える

「オリジナルな意見があるものに人は振り向く。表現はその後に考えればいいのに、若い人は表現至上主義」

 

▼若い人・・・・・・「業界」に興味をもつ
▼小霜さん・・・・「世の中」に興味をもつ

「あのCMをつくったのは誰々さんだとか今の広告のトレンドは何々だとかよりも、商品の生まれた世の中の背景や時代の空気に興味を持っている人の方が意見も表現も豊かになる。学生時代に広告研究も立派だけど、若いときに恋愛で失敗していない人に人間の恥ずかしい面が書けるかな」

 

▼若い人・・・・・・言葉をつくる感覚
▼小霜さん・・・・売り物をつくる感覚

「まとめると、こういうこと。広告には目的がある。目的を達成するために僕らは言葉を使う。売り物をつくる感覚になれば説明コピーも大喜利コピーもダメなことは一目瞭然」

 

コピーライターにとっていちばん大事な力は、「聴く力」。

思いがけないことは、思い込みからは書けない。
たかだか2、30年と少しの自分の先入観を捨てるために、「聴く」。「調べる」。

 

3:小霜はこわくない(PR)

ご自身の会社で無料広告学校を主宰されている小霜さん。いわく、「僕は1年かけて生徒に『君たちは書けないのだ』と教え込むんです。だから怖いって思われちゃうのかな・・・・でも、怖くないですよ」

右から 小霜さん、ヤギさんこと印部さん(かわいい)。スケープゴート役として出ていただいたおかげでとっても分かりやすかった。
右から 小霜さん、ヤギさんこと印部さん(かわいい)。スケープゴート役として出ていただいたおかげでとっても分かりやすかった。

あっという間の90分。
最後に僕も質問させてもらいましたが、丁寧に答えていただき、怖くなかったです。

コピーだけでなく広告全般の教科書としてロングセラーになってほしい(って僕が思うのも変だけど)本です。100万円を狙うなら、年に1回の公募だけじゃなくて日頃の仕事でもきちっと勝負しよう。その方が手っ取り早いぞ。

小霜さん、ヤギさん、編集の佐藤さん、ありがとうございました。