予知

珍しく朝の8時半に
一番乗りで教室に入りました。

けど、いくら待っても誰も来る気配がない。
おっかしいなーと思って研究室へ。

あの、今日ってもしかして休講ですか?
「うん、そだよ」

がっくし。
頑張って徹夜を乗り切って来たのに…。

このまま帰るのも癪だし、4年生のカノジョに紛れて
なんとなく卒業制作展の場所取り会議に参加しました。

他学科の人と説明を受け、
作品の場所の確保も無事終えて、外のベンチで休憩。

カップのコーヒーからは湯気が立ち上り、
冬季限定のコアラのマーチはほどよい甘さで。
午前中の校庭は木漏れ日と落ち葉がいい感じに揺れていました。

と、ベンチの手すりに不安定に置いたカップへ伸ばした
彼女の手が、勢い余って ばしゃーん。

茶色の液体が僕のスニーカーをビショビショに濡らしました。
広がる湯気。漂う香り。固まる二人。

 

被害者:「もう!うっわー、絶対こんな
     斜めのとこに置いたらこぼすと思ってたよ俺は!」

加害者:「お、すごい、予知!」

 

もう何も返す言葉もなくて、肩から力が抜けました。


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職