「先のことなど」

5月5日の『ほぼ日』の「今日のダーリン」より。

・『私がオバさんになっても』という歌を歌ってたとき、
 森高千里さんが想像していた「オバさん」の年齢を、
 おそらく現実の森高千里さんは、超えてしまった。

 ビートルズは、まだじぶんたちが20代のころに、
 『When I’m Sixty-Four』という曲をつくった。
 ずっと先だということの表現としての64歳を、
 追い抜いてしまった。
 その年齢までたどり着かなかったビートルもいるが、
 「ずっと先」は、もう過去のことになっている。

 「いつまでも」とか「ずっと」とかいうことばは、
 口先で言うのは簡単だけれど、あんがい2年とか3年、
 せいぜい10年くらいを意味しているかもしれない。
 そう考えた人たちが、それじゃいやだ、と。
 できるかぎり正直な「いつまでも」を、
 具体的に提示したのが、これらの歌のコンセプトだ。
 つくったときには、時間がどんな速度で過ぎていくのか、
 本人たちは知らなかったのである。
 「30歳以上を信じるな」ということばがあった。
 実にスカッとした、思いきりのいいことばだ。
 しかし、これを読んでいる30歳以上の方々なら、
 とっくにおわかりのことだと思うけれど、
 「30歳以上を信じるな」と言ったとたんに30歳になる。
 まさか、小学生とかはこういうことを言わないだろう。
 いちばん、こういうことを言うのは20代の若い人たちだ。
 だから、10年も経たず、あっという間に、その
 「信じちゃいけない年」の人になってしまうのだ。

 光陰は矢の如しである。
 想像もしてなかった年齢に、すぐなっちゃう。
 想像もしてなかった土地でも人間は暮らせるように、
 想像もしてなかったじぶんとして、人は生きられる。
 ただ、なんとなく想像してなかったので、勝手がちがう。
 64歳を過ぎたポール・マッカートニーは、
 ステージで『When I’m Sixty-Four』を歌うけれど、
 歌われている主人公と、じぶんを重ねてない気がする。
 森高千里さんは、あの歌を、どんなふうに歌うかなぁ。
 無理にまとめてみよう。
 つまり、その、「先のことなどわからないものさ」。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「こどもの日」、祝われている期間は、あんがい短いのさ。


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職