Cannes Lions 2013 Book Project


2013年8月31日、代官山蔦谷書店にて、とある本の出版記念イベントがありました。でも、そのとき肝心の本はまだ完成していませんでした‥‥どゆこと?

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『Cannes Lions 2013 Book Project』。

雑誌『広告批評』元編集長の河尻亨一さんが立ち上げ、オンライン上に集った約250名(8.31現在)の広告関係者やカンヌウォッチャーが今年のCannes Lionsの事例やトピックをアップ。それを一冊の本に編むリアルタイム・クラウド編集会議&雑誌制作プロジェクト。

8月の頭からFacebookグループで具体的に動き出しましたが、ボクが最初に河尻さんに声を掛けていただいたのは7月20日の夜の表参道でした。

「今度有志を募ってカンヌの雑誌を作るんやけど、タクローもその中でPerfumeについて書いてくれへん?」

今年、Cannes LionsでPerfumeが圧巻のLIVEパフォーマンスを披露したのは記憶に新しいと思います。で、Perfumeといえばコイツだろうという身に余る光栄なチョイスが河尻さんの脳内で働き、二つ返事でボクもこのBook Projectの中でコラムを書くことになりました。

読者が自分で好きにレイアウトして「自分仕様」に編集できる付箋つき!
読者が自分で好きにレイアウトして「自分仕様」に編集できる付箋つき!
このプロジェクトのエキサイティングなところは、なんといってもひとつの本がリアルタイムに形作られていく渦中を覗き見るスリリングさ(ボクはほとんど何もしてませんが)。

アートディレクター・重冨健一郎さん(Cannes Lionsデザイン部門で2度受賞の猛者)による創意工夫に溢れる雑誌‥‥というか「カンヌ缶」とでもいうべきブリキ缶に収められて届くらしいCaninesキットは、8月最終日の出版記念イベントのさなかもその場でどんどんレイアウトされてゆくのでした。

さながらマグロの解体ショー。

そう、出版記念イベントなのに肝心の書籍がないのは「間に合ってない」のではなく「みんなで出産に立ち会う」イベントだったから。そんな奇妙キテレツな“編集会議”に80人ちかいお客さんが詰めかけたんだから河尻さんすごい。

徹夜続きで寝ずのデザイン、おつかれさまです!
徹夜続きで寝ずのデザイン、おつかれさまです!

ボクのPerfumeコラムは実際に書き始めたのは8月最終週になってからでしたが、妻に真っ赤なチェックを入れてもらい、4回大幅なリライトをして、気がついたら3,000文字オーバーの長文に。

かっこよくレイアウトしていただきありがたい限り。
かっこよくレイアウトしていただきありがたい限り。

そしたらイベント中に重冨さんより

「このままだと4ptになってしまうので虫眼鏡を使えば読めないこともない。もうちょい短くできる?」

と、まさかのレイアウトNGが出てしまい、その場で修正。できるかぎり文字を削ってUSBメモリにデータを移し、再び重富さんのMacへ。このBook Projectがリアルタイムであることを証明できた、ということにさせてください。

我ながら申し訳ない。
我ながら申し訳ない。

 

そんなおいしい事件もありながら、イベント自体は河尻編集長を司会に、カンヌを見つめて10年以上の石井うさぎさん、CMプロデューサーとしてフィルム部門に造詣の深い石井義樹さんというおなじみのトリオがガッチリと今年の事例を解説してくれる、実りある催しになりました。

清水淳子さんのグラフィックレコード(その場で話をイラストにしてまとめてゆく!)も流石でした
清水淳子さんのグラフィックレコード(その場で話をイラストにしてまとめてゆく!)も流石でした

しかも「カンヌをマニアックなものにしたくない」という河尻さんの意向もあって、LINE株式会社の広告企画プロデューサー・谷口マサトさんもゲストに加わり、日頃のいわゆる勉強会とは別の視点もあってかなり面白かった。谷口さんのBlogは要チェックです。

 

イベントで見た事例やその場で語られた内容はこれまでのボクのBlogでも取り上げたものもあるので詳しくは書きませんが、現場でのメモをそのまま載せておきます。

 

▼Dove Real Beauty Sketch
・正しい「表」をつくると「裏」としてのパロディが作りやすい
・誰も文句を言えない「お母さんありがとう」・・・誰も否定できないインサイト。
・グローバルで展開しても強い。社会に対してみんながその通り!といえるインサイトを見つけること。

 

▼AXE スーザングレン
・監督はリーバイスの逆回転の人。
・その監督がつくったクラフトとしての出来の良さ。
・P&Gのなかに、賞を獲る部隊が世界中にいる。
・AXEチームは世界のTOPエージェンシーが世界のTOP監督を使って獲りに行っている。

 

▼サッカーを用いたドネーション
・臓器提供を呼びかけた「イモータル・ファンズ」と献血の事例(どちらもブラジル)
・社会に貢献するためのアイデアありき。人を動かすアイデアが立っているから、じつはお金はさほどかからない。
・日本じゃできないな〜〜〜、と思っちゃうものも、本当に日本でできないのか??疑ってみる。
・スピード設定が大事。何をしたいのか、何をやっているのかが、見てすぐわかる。

 

▼ソーシャル・グッドな案件は全体の8割。

ソーシャルグッドはやめかたの設計も大事。社会にいいことをしているのに企業が手を引くのはかえって反発を招くことにもつながるから。その点、サッカーの献血は「火曜日までだぞ!」と宣言して人をわっと集める設計が上手い。臓器提供の施策は、臓器を提供するシステム自体は恒常的に残る。

昔は喜怒哀楽を描き、今は「正しい」方向を描くことがふえた。

笑いだけだとバイラルしない。良い話を描くとバイラルしやすい。良い話、のストーリーテリング。

▼ウラル・シティ(サイト)
24時間以内に直った→1コ直したら終わりじゃない「他にもぼこぼこの道あるでしょう?」国中から写真が集まり、マップを作った。

▼フィリピンの小学校の教科書
▼ツイートでセレブに英会話教室・・・こどもたちがセレブの誤字ツイートをReplyで教える。

 

▼オレオのFacebookページでの施策

毎日つづけるからこそ、たとえ滑った日があっても傷は浅く済む。滑ったネタは拡散されないから。
・笑いは分散すればするほど美味しい

 

▼100年前にFacebookがあったら。
「世界大戦ミュージアム」

 

▼雑誌のありかた「使ってもらえる雑誌」・・・仕上げるのはあなた。
・缶に入っている
・ポラロイド風付箋がついている
・地図・・・世界中の広告のマップ。国のアイデンティティ「その国らしさ」がわかるようにした。

 

▼デザイン部門
・オーケストラ
・バイラルさせる起点、はじまりとしてグラフィックをつくることが増えた。

 

▼技術がすごい系
・B to B企業になったIBMが基礎研究のラボの力を訴えてリクルーティングや一般層へのアピールを。
・原子のドットアニメーション。→外に見えないものを上手に見せる。
・ぱっと見の地味さはあるけど、テクノロジーのエンターテイメントがブランディングになっている。

 

▼ガツンとされに行くカンヌ
・企画をずっとやっていると「これ以上の企画はないな」と思うのにカンヌに行くとまだまだある。(石井義樹さん)

 

▼ハイネケン インタビュー
・日本だとこういうのはカヤックが上手いよね。

 

▼占い師 DAVE「占うようにあなたの個人情報は丸見え」/ネットバンキング
・ドッキリ手法は常に強い手法。

 

▼コカコーラ インドとパキスタン
・これもソーシャルグッド。

 

▼マケドニア 宗教的に対立する人種グループ・・・毎日殺人がある。人を許す行為をつくれないか?
・祈る場所として、どちらの宗教も受け入れる教会を設けた。

▼ニベア 日焼け止め
・ニベアのサンオイル・・・あなたが太陽の下でバカンスしている間、太陽光を活用して携帯を充電しよう。

▼お酒のCM
・ソーシャルグッドへの反動じゃないか?
・What everをひたすら描く。

 

Book Projectはまだ進行中です。手元に届くのは9月下旬だとか。楽しみです。


tacrow
伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年:武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業。 同年:博報堂アイ・スタジオにてプランナー/コピーライター職。 2012年〜:株式会社BIRDMANにてインタラクティブプランナー/ディレクター職。 広告と映画と写真とあーりんをこよなく愛する36歳