煩悩

うちの実家の、祖父母の家はお寺だった。
山奥にこつ然とある、南嶺山大福寺。

祖父は僧侶で、けっこう広い庭には灯籠や、鐘、水子地蔵、そして本堂があった。
子供の僕らには、格好の遊び場だった。
正月になると、親戚一同が集まって、たき火をしながら除夜の鐘をついた。
108の煩悩が抜ける瞬間。

そんな祖父母が、山から下りたのが今年初め。
もう、あの鐘を鳴らすこともないのか。

煩悩が溜まる日々。
それもまた、一興。


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職