等身大になった?カンヌライオンズ2015

毎年6月は「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」の季節。広告クリエイティブの未来を占う貴重な見本市として注目する時期ですが、海を越えてTwitterから届くのは「レッドカーペットでSEX」の写真。

ちなみにこの写真はアメリカの広告専門メディア「ADWEEK」のエディター、デヴィッド・グライナー氏がiPhoneで撮影したものらしい。

 

果たして今年のカンヌは何が起きていたのか?
個人的に気になったものをピックアップしてみます。

 

先進的な施策に与えられる「TITANIUM AND INTEGRATED部門」のGOLD受賞、『CONTRIBUTING COMPANIES』。

https://youtu.be/Wv5b4jwABiw

サメがビーチに来たことを教えてくれるデバイスです。

え、それだけ?それだけ。
でもひと言で書けるシンプルなアイデア。
提供しているのはOptusというオーストラリア第2の通信会社らしいです。

 

続いて「DIRECT部門」でGOLDを受賞したこちら。

「MARC DORCEL」という、ヨーロッパで人気のポルノビデオサイトが行った無料視聴サービスで、その名も『Hands off』。触るな!って意味ですね。

エロ動画を無料で見られる代わりに、指定のキーを押しっぱなしにしていないといけない。
つまり、「手を使えない」。使いたければ有料で、というわけです。

ケースフィルムを見る前にその秀逸なアイデアを聞いた僕は、真っ先に「手以外の方法でキーボードを押さえられたらアウトじゃん」と思っちゃいましたが、浅はかでした。

世界中、考えることは同じ。
世界中、考えることは同じ。

男どもの涙ぐましい努力の跡も、プロモーションの一環として見られているわけです。

2いいね!しかついてないのが泣ける。
2いいね!しかついてないのが泣ける。
これはいやだ。
これはいやだ。

中には足の指でキーを押さえる写真もありましたが、制作者はきっと足の指が届くか届かないかギリギリのキーを指定しているのだと思います。そこにドラマがあるから。そうに違いない。

 

最後に、「PROMO AND ACTIVATION部門」や「DESIGN部門」でGRAND PRIXを受賞したVOLVO UKの『Lifepaint』をご紹介。カンヌウォッチをしている方なら、どれももう何度も目にしてきたかと思いますが‥‥。

イギリスでは、毎年19,000件もの自転車を巻き込んだ交通事故があるそうです。多すぎ(と思ったら日本は毎年60万件の自転車事故があり、500人以上が死んでいるらしい)。

で、それを減少させるべく、VOLVOが「吹きつけると反射材になるスプレー」を開発したと。あまりに反響があり世界展開も考えていると。

いや、そんな商品は昔からあっただろう?という声もあるそうで、物議を醸したそうですが、広告じゃなくてプロダクトを開発してブランドイメージを高めているところがカンヌ的にGREATなのでしょう。たぶん。

自転車通勤をしている身として、ふつうに欲しいし、VOLVOが自動車のことじゃなくて自転車乗りのこと(ひいては交通社会のこと)を考えてくれていると思うと、ちょっと他とちがうイイ会社だなと思っちゃう。別に東急ハンズで同じ商品が売られていてもおかしくないけど、それだとメッセージにならない。VOLVOが出したことに意味があったのかもしれません。

 

これらの事例ひとつひとつを見て「上手いなー」とか「さすが」とか、過去事例で似たのがあるぞ!とか、思うことは多々あるものですが、個々の事例が大事ってわけでもないのかも。

今年はとくに、それぞれの事例から技術的な先進性を感じ取ることは難しい。過去の受賞作の応用みたいなものも多かった気がします。

けれど、
実際に人命がサメの脅威から守られたならば。
実際に動画サイトのアクセスが増えたならば。
実際に自転車と自動車の事故が減ったならば。

そんなGoodな話はない。

‥‥技術的な先進性よりもアイデアとフィージビリティを見ているのかな?

 

現地に行っていた、元Adobeの太田禎一さんのレポートを引用させてもらいます。

カンヌもエージェンシーも「広告屋がクリエイティビティを活用して広告っぽいことをやる」的なところからとっくに離れ、「いかに社会を良くするか」という新しいルールでゲームを始めているのだということです。

このような「ゲームルールの変更」には良い点と悪い点のどちらもあると思っていますが、少なくともAKQAやR/GAに代表される「先進的」なクリエイティブエージェンシーが自らを再構築しながらブランドと社会のために貢献できる組織に進化していこうと舵を切っているのは事実です。

そのなかにあっても当然クリエイティビティーとテクノロジーは欠かすことのできないものなのですが、そこに期待される役割が以前のような「すごい」「かっこいい」「心に残る」ではなく、「社会的問題の解決」「ビジネスとしての継続性とスケール性」「多くの人をどう動かして成果につなげるのか」といった方向にシフトしているという印象を受けました。

カンヌライオンズに見えた「ゲームルール」の変更とは〜フリーエバンジェリスト 太田禎一氏 現地レポートより)

 

いわゆる「ソーシャルグッド」が語られだしたのは僕がカンヌに行った2011年頃からだと記憶していますが、それでも「すごい」「かっこいい」「心に残る」は決して劣勢ではなく、むしろいつもレッドカーペットの中心に座していました。

2011年「TITANIUM AND INTEGRATED部門」GRAND PRIX『DECODE』

https://vimeo.com/28741040

昨年の「TITANIUM AND INTEGRATED部門」GRAND PRIXを獲った『Sound of Honda/Ayrton Senna 1989』だって「すごい」「かっこいい」「心に残る」の最たるものだと思います。

https://youtu.be/_0ZTPCoQ4jI

こういった、存在自体が奇跡的で怪物的な仕事(言い換えれば、クラフトが優れた仕事)よりも、等身大な解決策で、かつ即効性のあるケーススタディの方に注目が向かっているのかな?

‥‥だとすれば、それも素晴らしいけど、「企業の外側にある問題を見つける競争」になるのは気持ち悪い。余計なお節介合戦になりそうな気もするから(過去の受賞作で「自殺の名所を“癒やしの場所”に置き換えることで自殺数を減少させた」というのがあったけど、その後、むしろ自殺の名所と認知されすぎて増加に転じた、なんてニュースを見た。今はググってもソースが出てこない。あれはガセだったのかなぁ)。

ブランドの内側に流れるヘリテージや商品の周辺にある欲望を丁寧かつ大胆に描いて引きつけることだって、まだまだできることが沢山あるんだろうな。そういう意味で『Hands off』はやられました。カンヌにお茶目があって安心した。

どっちにしても、そこにソーシャルという無視できないほどの影響力があって、どんな風に目にかけてもらえるか。

「思考は等身大、広げ方はでっかく」ということなのかな。
でも、「クラフト」への揺り戻しも絶対にあると思う。

 

後半、だいぶ散文的になりましたが、いっそう励みます!
WILL SEE YOU IN THE MORNING!

本家「Shot on iPhone 6」もOUTDOOR部門でGOLD。
本家「Shot on iPhone 6」もOUTDOOR部門でGOLD。

カンヌ勉強会 2014 – ダイレクト系など

昨日のカンヌ勉強会 2014 – フィルム系に続き、河尻さんによる、ダイレクト、プロモ、チタニウムなどで受賞しそうなものをピックアップ。

 

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河尻さんチョイス
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▼ FIRST KISS

WREN(ウォーレン)というアパレルブランドの服を着ている男女。初対面同士の彼らにカメラの前でラブシーンを演じてもらうドキュメントフィルム。「素人」が何かするのは定番になっていて、キスまでしてもらえるようになった。素人がファッションモデルの代わりをしている。
YouTubeで8,000万ビューを超えている。

 

▼ Skype – Stay Together

フィルム系だけど、これも「素人」が出ているシリーズ。血も通わないようなイメージのSkypeがやっているという面白さ。笑いを求めてない。感動を求めている。感動はシェアを生みやすい。

【COMMENT】
笑いは文化的な背景や笑いに対する成熟度などに差異が出てしまうので、それに比べて感動系の方が広くあまねく共感を得やすいんでしょう。あと、素人が主人公になるというのは世界的な流れなんですかね。

 

これもフィルム系だけど‥‥

▼ John Lewis Christmas Advert 2013 – The Bear & The Hare
https://www.youtube.com/watch?v=XqWig2WARb0
ディズニーのチームが手がけたらしい。

じつは全編CGではなくコマ撮り撮影で作られた!という驚きもある。

http://youtu.be/WKfFhUdXA5M

メイキングを見ることで二度驚く。そんなメイキングを見せることももはや当たり前の手法になりつつある。

 

▼ Digital News paper holder
http://youtu.be/80indhABZwo
アワードムービーの典型。社会的背景、問題点→アイデア→メイキング→仕組み(図説)→効果→成果。

 

▼ British Airways – #lookup in Piccadilly Circus

子供の頃を思い出させるビジュアルをインタラクティブに再現しただけでなく、ビルボードには飛行機のフライトナンバーや目的地なども表示されるとのこと。でも単純に素敵。

ケーススタディビデオもあったのでご紹介します。

 

▼ MILKA – LAST SQUARE

パッケージにIDが書かれていて、それを元に「ひとつだけ欠けたチョコ」を大切な人に贈れるサービス。企業姿勢を体現。

河尻:チョコ1欠片もらって嬉しいんかな?っていうのはありますけどね(笑)。
石井:でもリアルに1つ欠けたパッケージになっていて、それを贈るところまでやってるのはすごい。パッケージのビジュアルが上手い。

 

▼ DHL – DHL is Faster
https://www.youtube.com/watch?v=yFc3c74n3QQ
温度で変わるインクを仕込ませた箱を用意して、ライバル社に運ばせる。
河尻:「なかなか挑戦的ですけどYouTubeでもそんなにバズってなくて(笑)」

【COMMENT】
騙すという手法は昔からありましたが、そこにテクノロジーを上手く使っていて、かつ、さほど手が込んでいない(シンプル)という点に好感を持ちます。

このほかで上手な「騙しの手口」としては、オランダの『Sweetie』がすごい。

児童売春の撲滅を目指す団体が仕掛けた、CGの「10歳のフィリピン人少女」。1,000人以上が検挙されたという実績が評価されそうです。
これ自体はぜんぜん「広告」じゃないですが、このYouTube動画から団体への寄付ができるようにもなっています。

 

▼ NAR mobile – Life saving cable project

スマホ同士をつなげるケーブルで、充電を分け与える仕組みを通して献血を訴えた。
分かりやすいけど本当にこんなことできるのかな?

 

▼ social swipe
https://www.youtube.com/watch?v=ZcqsRhMHo8o
カードをスワイプすればパンが切れる。=募金になる。
見れば分かる。ビジュアルのつくり方が上手い。

【COMMENT】
British Airwaysもそうですが、デジタルサイネージ広告にインタラクティブ性が加わったものは、元々が交通広告という「通り過ぎて無視される」という問題との闘いであることを考えると、ビジュアルもオチも分かりやすいことが大前提。その意味でsocial swipeはさらにソーシャルグッドな意味合いもプラスされてて素敵だと思いました。

紹介されていなかったデジタルサイネージの事例で個人的に好きなのはコレ。

Unbelievable Bus Shelter | Pepsi Max

あと、コレも。

Photoshop Live – Street Retouch Prank

コレも分かりやすい。

 

▼ climate name change
https://www.youtube.com/watch?v=efAUCG9oTb8
one show受賞作。
台風の名前は人名(カトリーナなど)だから、自分たちで決めたい。
気候変動がこんなに起きてるのに何も政策を立てない政治家の名前をつけてやろう!というNPO団体の運動。
石井:去年も似た考えのがありましたよね、ロシアで。
河尻:悪路を放置する行政に対して、その道路で政治家の顔を描いて、工事させることで消させたやつですね。

 

 

そろそろウェアラブルも出てくるのでは?

▼ Ravijour – TRUE LOVE TESTER
https://www.youtube.com/watch?v=B8Wd831gUt4
Ravijourという、セクシーさが売りの下着メーカー。
制作はPerfumeの演出でおなじみのライゾマ!いいなぁ。

 

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カンヌ現地の情報
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・今年は97カ国から37,400エントリーがあった
・カンヌ現地では三位一体の楽しみ方をしましょう

 CELEBRATION:賞としてのカンヌ
 LEARNING:60個あるセミナーも出た方がいい。ルー・リードとか(※)。
 NETWORKING:10,000人が交流を深める。名刺が何枚あっても足りない。ヘッドハンティングも。

1日に1回、人気セミナーをYouTubeで生中継しているので見てみましょう。

※今年はU2 ボノとAppleのデザイナー、ジョナサン・アイヴが登壇するとか。

cannes_guest

石井:現地で学ぶ広告漬けの1週間なんてない。自分は何ができるだろう?ということを見つめ直せる機会。行かなくても分かることももちろんある、が、世界一の広告祭としてそこにしかない熱がある。日本から抱えてきた仕事もあってパーティーもあって今年はW杯もあるから寝られないけど、それもひっくるめて修行みたいな重要な場所。

・日本にいる人は受賞速報とセミナーまとめを活用しましょう

6/28(土)14:00〜17:00
報告会をやられるそうです。

 

以上です。

最後に、河尻さんが「時間がなく紹介できなかった」作品をFacebookにアップされていたので、そちらをコピペして終わりにします。

イベントレポート① Cannes Lions…

河尻亨一さんの投稿 2014年6月7日土曜日

▼ 43dbオーケストラ
https://www.youtube.com/watch/?v=CFMSeJJSV0w

▼ Google“Night walk in marseille” 
https://nightwalk.withgoogle.com/en/home

▼ giraaf
https://www.youtube.com/watch?v=rCJYLVbtnlo

▼ spotify“forgotify”
http://forgotify.com/

▼ coca-cola – Radar for Good

★Sound of Honda“Ayrton Senna 1989”
https://www.youtube.com/watch?v=oeO2q8FzcnM
これもライゾマティクス制作。素晴らしい。プロの仕事。

★NYC Recalling 1993 
https://www.youtube.com/watch?v=cIJNtaPDbLo

 

6月15日からのアワードの現地速報が楽しみです。

カンヌ勉強会 2014 – フィルム系

2014年も6月に入り関東は梅雨に突入‥‥と同時に広告業界ではCannes Lionsの季節の到来でもあります。

今年は6月15日〜21日に開催。
今年は6月15日〜21日に開催。

今年も銀河ライター 河尻亨一さん(編集者)とキラメキ 石井義樹さん(CMプロデューサー)によるチョイスで「今年のカンヌ」を予想するプレ勉強会が開かれました。キラメキのオフィスでワインあけながら4、5人でやってた頃がちょっと懐かしい、100人規模の大きなイベント(しかも場所は京橋の東京スクエアガーデン)になっててびっくり。

 

以下にまとめてみましたが、「10 over 9」原口さんのNAVERまとめも分かりやすい&内容はほぼ一緒なので、そちらもオススメです。僕は僕で感想や他の事例も折り込みつつ書いてみます。

NAVERまとめ:前編(フィルム、フィルムクラフト部門への予想)
NAVERまとめ:後編(ダイレクト、PR、プロモ、デザイン、サイバー、モバイル、アウトドア、チタニウムなどへの予想)

 

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予想しにくい
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One Show、Newyork Festivalがあったものの、今年はCLIOが秋に移動しちゃったので予想しにくい。また、昨年が60周年ということもあり総じてレベルが高かったので今年は揺り戻しで低いかも。今年突然出した作品がダークホース的に受賞しちゃうかもしれない。

 

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クルマのコマーシャルが面白い
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▼ Volvo Trucks – The Epic Split feat. Van Damme (Live Test 6)

One Showグランプリ

石井:今年のグランプリ候補はこれなのかなー。他に強いCMがあまりないから。「最後にオチと意味がわかる」という、昔からのカンヌの(広告の)文法。圧倒的なクオリティ。英語がわからなくても、ボルボのトラックのスタビリティが優れていることを言ってるんだなーというのは伝わってくる。いわゆるLIVE TEST(実証広告)。

じつは6つあるシリーズのひとつで、これのティザーがまたイイ。

http://youtu.be/Yatg89gi0nM

ヴァンダムのうろたえっぷりがカワイイ。
河尻:メイキングじゃなくてティザーなんですね。

 

▼ Volvo truck dynamic steering

これもOne Show獲ってる。

河尻:オチはバレるものだから最初から伝える。
実験、テスト的な作品。やってみた系、エクストリーム系
それをいかに広告ぽく見せないか。エンタメですらある。

【COMMENT】
そういえば昔、Googleも「SPEED TEST」(※)で湧かせましたが、実証広告ってバカバカしく極限に挑戦するというだけで笑えるし、男子小学生っぽいノリにその企業を好きになってしまいそうになる。Volvoはエンヤの品も無駄にあって、ディレクターの料理が素晴らしい。無駄に掛ける美学、の贅沢さ。

※Google – SPEED TESTS

 

▼ Honda – Illusions
https://www.youtube.com/watch?v=UelJZG_bF98
石井:初っぱなでネタのからくりが分かっても騙されっぷりが気持ちいいからシェアされていく。シェアされることを意識して作っている。ロンドンのCMプロダクションgourgiosのクリス・パルマー監督(カンヌ常連)による仕事。近年多い流れとして、トップクラスの監督やカメラマンと制作費を使って、YouTubeでバズることを意図している。

たとえばthe mill(※)という世界有数のプロダクションが、どこまでが実写かを分からせないくらいのクオリティで映像をつくってYouTubeで爆発的にシェアされる時代。

【COMMENT】
the millがつくったCMで最近話題になったモノといえば、NIKEの「Winner Stays」。

http://youtu.be/3XviR7esUvo

お金かかってますね。贅沢さにアッパレ。

 

▼ Honda – Hands
https://www.youtube.com/watch?v=Dxy4n0UT82o
石井:明らかにカンヌを取ろうと思ってる感がありますけどね(笑)。
ホンダの名作「The Cog」(※)からの流れを汲んだ「ナット1個からはじまるモノづくり精神」を手のひらで見せていくというシンプルさ。これまでの海外の作品が詰まってる、オマージュみたいな作品。

【COMMENT】
※The Cog(2003年)

古さを一切感じさせない。

 

▼ フォルクスワーゲン – Wings
https://www.youtube.com/watch?v=ns-p0BdUB5o
スーパーボウルのCM。

 

▼ Chrysler and Bob Dylan Super Bowl Commercial
https://www.youtube.com/watch?v=KlSn8Isv-3M

一昨年のクリント・イーストウッド(※)からのシリーズ。
今回はボブ・ディラン。アメリカの車づくりは最高であるというメッセージ。

※It’s halftime in America(実際、スーパーボールのハーフタイムに放送された)
http://youtu.be/T1c3AXZkYeU

 

▼ Video Bob Dylan
http://video.bobdylan.com/
撮影した物をTVみたいにザッピングでき、like a rolling stoneのように見られる。

 

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感動!
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▼ Apple Holiday
https://www.youtube.com/watch?v=nhwhnEe7CjE
石井:個人的に好きなのはコレ。
One Show獲ってますね。感動系。カンヌでも何か獲るんじゃないかなと思ってる。
監督はランス・アコード。

ランス・アコードといえば‥‥これも。

 

▼ P&G Thank You, Mom
https://www.youtube.com/watch?v=57e4t-fhXDs
ソチ・オリンピックのP&Gの広告。
ロンドンオリンピックの続編。当時もゴールドを獲得。家庭用品をずっと作っているブランドとしてストレートなメッセージ。

ランス・アコードは元々カメラマンで、『マルコヴィッチの穴』や『ロスト・イン・トランスレーション』の撮影監督。VWの『the Force』(2011年)で監督として名前が売れた。長尺の編集が上手い。

 

▼ Google We’re All Storytellers
https://www.youtube.com/watch?v=mpOjnXcy8NE
検索が可能性を拓くというGoogleならではのCM。

 

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笑い!
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▼ Old Spice シリーズ
https://www.youtube.com/playlist?list=PLoF_PWSjd6xXQJwRtYvwM4qrT_Lwx9Quy
良いにおいになった息子がモテるからナイスじゃない、けどつけたらモテるという話。
グランプリじゃなくてシルバーあたりを獲りそう。

 

▼ Budweiser Super Bowl XLVIII Commercial — “Puppy Love”
https://www.youtube.com/watch?v=uQB7QRyF4p4
河尻:子犬と馬の話がアメリカ人は好きなんでしょうね。
カンヌって笑いのCMの殿堂みたいなとこがあった。今は違うけど。

 

▼ 2014 Super Bowl XLVIII Ad “Ian Up For Whatever”
https://www.youtube.com/watch?v=gKKVQLDYYcw
パーフェクトなことばっかり起きるビールが「BUD LIGHT」というメッセージ。素人を使ったドッキリ企画だが、賛否両論あった。

 

冒頭でも言われていましたが、総じて今年は小粒な印象だそうです。それは昨年がカンヌ創立60周年記念で気合いの入ったCMが多く見られた分の揺り戻しか?という話も出ていましたが、フタを開けてみなければ分かりません。というわけで、明日は河尻さんパートの「ダイレクト、PR、プロモ、デザイン、サイバー、モバイル、アウトドア、チタニウムなどへの予想」をまとめてみます。明日につづく。

チームPerfume / テクノロジーで“想い”を身にまとう

昨日、全国ツアーが発表されたばかりのPerfumeですが、昨年の夏に河尻亨一さん主宰のもと出版された『クリエイティブ手帳』に寄稿したPerfumeに関するコラムを掲載します。

 

私たちは Perfume
ここに来た
日本は遥か東 出会うために
世界と 私たちと みんな
ここに立つ
日本とつながって 伝えるために
世界に

2013年6月20日、Cannes Lions 2013での電通によるプレゼンテーション「Happy Hacking: Redefining the Co-creation Frontier(ハッピー・ハッキング:共創の最前線を再定義する)」でゲストとして迎えられたPerfume。冒頭の言葉は、世界中から集まった4,000人もの広告関係者が見守る中、メイン会場であるグランドオーディトリアムのステージから世界に発した彼女たちの挨拶(メッセージ)である。

厳かな雰囲気から一変し、小刻みなビートと衣装に映し出されるプロジェクションで始まる『Spending all my time』エクステンデッドミックス。この模様はCannes LionsオフィシャルYouTubeでも全世界に生中継され、世界へのお披露目となった。

prfm_cannes04

日本で固唾を呑みながらモニタにかじりつくように見ていた僕・・・・を含めたTwitter上のPerfumeファン(Perfumeクラスタ・通称 パフュクラ)は「いいぞいいぞ!」と、まるで甲子園に出場した母校を見守るかのような緊張と連帯感をタイムライン上で共有していた。しかもプロジェクションマッピングで3人の全身に投影されていたのは、サイバー部門でSILVERを獲得したグローバルサイトに集約されたファンからのツイート。僕のタイムラインでは「俺もカンヌデビューw」というツイートも見られた。

冒頭の「日本とつながって」を体現したこの粋な演出こそが、2010年よりPerfumeのLIVEアクトの演出を手掛ける真鍋大度氏(ライゾマティクス)の真骨頂だと思う。これまで数々のテクニカルなアプローチから、ファンとの間に物語を紡ぎ出してきた。メンバーのあ〜ちゃんはこの日のことを

「みんなの想いでPerfumeはつくられているんだっていう、前々から私が思っていたことを形にしてくれた」

と、後日ラジオでしみじみと語っていた。

perfume01ここで「Perfumeグローバルサイト」について触れておこう。世界展開にあたって、ワールドワイドに自己紹介する拠点として生まれたWebコンテンツにもかかわらず、肝心の彼女たちの顔写真やアートワーク、PVなどは一切ない。不親切なほどに情報がなく、あるのは中田ヤスタカ氏のバキバキのBGMと、それに合わせて踊る3人の3Dモデリング映像のみ。

当初は、ノンバーバルな世界観の中で最小限の構成に絞り込んだ「記号としてのPerfume」をキャッチーかつミステリアスに体感してもらうことが狙いなのかもしれない(海外ファンにはYouTubeという強力な補完サービスがあるし)と思ったが、実はそうでもなさそう。

perfume02いつでもつながれるオンライン上の「ステージ」は、公開時からツイートを集積してビジュアライズする機能を持っていた。ティザーサイトは専用ハッシュタグでツイートすることで3人の3D CGによる全身像が浮かび上がる。それはハイコンテクストな「ファンレター投稿」。さらに3人の3Dデータをダウンロード可能とし、コアなファン(でありクリエイター)たちによってさまざまなテクスチャーで踊るダンシングビデオが作られたり、3Dプリンタで3人のフィギュアが作られたり。もはや「海外への自己紹介」としてのグローバルサイトではなく、3人とファンをつなぐプラットフォームになっている。ノンバーバルな顔して、言葉を集積する装置だったのね。

この一連のプロジェクトはふつうに彼女たちの音楽を聴いて応援するライト層にとっては敷居が高いと思われるが、真鍋氏には「あえて少し挑戦的なアプローチをする方が受け入れられる」という思惑があったという。「つくれるファン」への過剰サービスに、「つくれるファン」は過剰に応える。それが世間一般でのPerfumeのブランディングにもつながっている。超不親切で、超親切。ひとことで言えば、尖ってる。

やがてサイバーな「場」に集まったファンの言葉やアクションは、LIVEのプロジェクションマッピングによって3人の生身の体に“還元”される。それは本人たち自らが「想い」を身にまとった瞬間だった。カンヌのサイバー部門でSILVERを得たグローバルサイトは、その賞を授与されたレッドカーペットの先にあるステージで完成したのだ。

Web

そんな粋で手の込んだ演出を下支えする技術もすごかった。舞台袖からリモコン制御で5回も変形させていたという衣装や、正確かつ俊敏に踊る3人の全身とリンクするプロジェクションなど、開発と実証、リスク回避策まで練られた装置をたった2ヶ月で準備したというのだから脱帽。まじで。

当日の舞台裏を真鍋氏自身はこう振り返る。

「当初与えられたセッティング、キャリブレーションの時間は始まる直前の15分間のみ。メンバー3人は本番までステージに立つことは許されずぶっつけ本番でやるしかないという非常に厳しい条件で、さらに彼女達は大阪でライブを終えてすぐに渡仏してライブという過酷なスケジュールでした。当日の会場のセットも、その日まで分かんなかったもんね(笑)。 」

『Perfume at Cannes Lions! 真鍋大度&菅野薫が、共創の最前線“ハッピーハッキング”の想いを語る』より)

そんな裏方の苦労はみじんも感じられず、ただただ彼女たちのパフォーマンスは日本人ならではの「所作」と呼びたくなる優雅さにあふれていた。真っ暗なステージに浮かび上がるカラフルなグラフィックは万華鏡のようで、直線の美しい純白の衣装は折り紙のよう。複雑に折りたたまれ、リモコン制御で動くプリーツは現代版の歌舞伎の早替えである。決して単純に海外受けを狙ったものではないだろうが、「そう見てしまう」自分がいる。Twitterではすぐさま3人の衣装をキャプチャしてギミックを紹介してくれる人までいて、ありがたい。

 

たった8分間ながらも強烈なビジュアルを披露したLIVEは、Perfumeの個性の一部を象徴的に切り出して幕を閉じた。

「今までできなかった、MVとかの映像の中だけで合成していたようなCGとかが、ライブで見せられるようになったのは、三人だけで立つステージに無限に幅が広がったなと思います」(『Switch』Vol.31・かしゆか)

「大度さん達がいなかったら、こういう前衛的なことをしてるグループには絶対見えなくて。だからPerfumeのかっこいいイメージをつけてもらってます」(同・のっち)

広島出身の、売り出し方を秋葉原あたりで彷徨うアイドルから一転、中田ヤスタカプロデュースにより「テクノポップユニット」としてオリジナルの位置を不動のものとしたPerfume。もともと肉声をヴォコーダーで変換されることで注目を浴びたテクノポップユニットは、LIVEパフォーマンスやファンとの接点でもテクノロジーを武器にすることで飛躍した。とまとめると3人がロボットのようだが、ロボットのように振る舞える肉体と表現力、それに相反するチャーミングな人間性に引き込まれる。って、完全にファンレター投稿になってきたぞ。

チームPerfumeのHappy Hackingは、これからもさらにHappyな世界を私たちに投影してくれるだろう。すべての想いをインプットし、その身にまとって。

(2013年8月31日寄稿のテキストに加筆・修正)

 

そして今。

昨年10月に発売されたアルバム『LEVEL 3』を引っさげて東京・大阪の2大ドームで行われたツアー Perfume 4th Tour in DOME 「LEVEL3」 (初回限定盤) [Blu-ray] は必見です。これについてはまた今度じっくり書きたい。

Cannes Lions 2013 Book Project

2013年8月31日、代官山蔦谷書店にて、とある本の出版記念イベントがありました。でも、そのとき肝心の本はまだ完成していませんでした‥‥どゆこと?

DSC03809

『Cannes Lions 2013 Book Project』。

雑誌『広告批評』元編集長の河尻亨一さんが立ち上げ、オンライン上に集った約250名(8.31現在)の広告関係者やカンヌウォッチャーが今年のCannes Lionsの事例やトピックをアップ。それを一冊の本に編むリアルタイム・クラウド編集会議&雑誌制作プロジェクト。

“Cannes Lions 2013 Book Project” の続きを読む

中村洋基のクリエイティブ千本ノック!

Webデザインの専門誌『Web Designing』さん主催のワークショップ、中村洋基のクリエイティブ千本ノック!に参加してきました。

 

100人ちかい受講生と、洋基さん、そしてゲストにサントリー酒類の宣伝部の方がでっかい会議室に集まり、「サントリー ザ・プレミアム・モルツのWeb広告を考えよ!」というテーマで進行しました。

8つ(もっとだったかな?)に分かれた6〜8人ほどのチームでブレストをする前に、洋基さんから、「企画で気をつけるといい3つの要素」について。

 

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1:人間のインサイト と 技術のインサイト

よく、広告制作では「インサイトを突くといい」なんて言います。インサイトとは、うちに秘めたる欲求のツボみたいなもので、それを押すといいよーなんて言うけれど、PARTYは(←僕は、だったかも)そのインサイトがヒューマンインサイトとテクニカルインサイトのふたつあると考えていて。

ヒューマンインサイトは、人間の欲求。
テクニカルインサイトは、技術の可能性。

広告コミュニケーションはもともとヒューマンインサイトに則って企画化していくものだけれども、ことデジタル領域においてはテクニカルインサイトがあると他人のアイデアとかぶりにくい。そこが強みなんだから、テクニカルインサイトはバカにできない。

例:ミッシング・チルドレン(中国・Cannes Lions 2013 モバイル部門受賞)

http://youtu.be/B4eqE1GTTEs

中国では毎年2万人以上の子供が誘拐され、ストリートチルドレンになっている。そこで、ストリートチルドレンの写真を撮って送ると児童保護団体のデータベースに登録されている誘拐された子供の写真と顔認識でマッチングするアプリを開発。今までに600人の子供の身元確認ができた。

⇒ヒューマンインサイト(困っている人を助けたい/いいことしたい/子どもは宝、守りたい)
⇒テクニカルインサイト(顔認識/データベース)

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2:NOWISM いまを共有する。

Snap Chat・・・10秒だけ残す写真共有アプリ。
http://gigazine.net/news/20130822-snapchat-review/
今だけを切り取り、その瞬間だけを共有する。これがアメリがで流行ってる。

「いま」の価値が高まっている時代。

音楽でいえば、CDが売れない時代にLIVEの価値が上がっている。

言い換えれば、ストック型⇒フロー型へ。

たとえば、キャンペーンサイトの数が減っている。どうしてか?
何ヶ月もかけて頑張って作っても、今はTwitterに載ると一瞬で洪水に巻き込まれ、終わる時代。昔はもうちょっと息が長かった。今は消費が速すぎて、打ち上げ花火が瞬間すぎることに作り手も広告主も気づいてきたということかもしれない。

そんな中、Red BullのStratos。

2012年10月14日(日)昼 【日本時間 10月15日(月) 早朝】、レッドブル・アスリートのフェリックス・バウムガートナー(オーストリア人、43歳)が、アメリカ合衆国 ニューメキシコ州ロズウェル上空39,014メートルの成層圏からジャンプし、フリーフォールの世界新記録の樹立と、高高度での安全性の発展に向けた情報収集を目的としたミッション、Red Bull Stratos(レッドブル・ストラトス)を成功させました。(公式サイトより)

リアルタイムに2億8000万人が見た。
究極のLIVE体験。

http://youtu.be/7f-K-XnHi9I

 

NOWISMって、もっとシンプルにいえば、「バルス」。

「メディアや企業も参加し、過去最大の規模となったラピュタの“バルス祭り”。秒間14万投稿と世界記録を更新」ITmedia 記事より

 

考えるときのヒントは、「極端にする」ということ。

企画するとき、「お祭りか、継続か」を選ぶ。
今を共有する最高のお祭りをつくるのか、リレーションを築くコミュニケーションをつくるのか、を意識してみる。

━━━━━━━━━━━━

3:ブランド

ブランドとは、ひとことで言えば、名声。

アウディやベンツよりも日本の軽自動車の方が値段も燃費も優れているし日本の路上には適しているんだけれど、それでもベンツを買う人がいる。それはブランドがあるから。

さらにブランドが持っているチカラとは、商品や会社の存在が、人々の幸福に直結するということ。

例:Olympics P&G – Thank You Mom Commercial

http://youtu.be/2V-20Qe4M8Y

 

例:Dove Real Beauty Sketches

 

ブランドのメッセージング⇒生死、家族、美、恋愛、健康、お金・・・全員が共感できることを真ん中に置くと、効く。

他社と差別化することにこだわらない。「他社より優れてます!」「シェアNo.1」じゃなくて、「あなた×生死」「あなた×家族」「あなた×美」「あなた×恋愛」…をつなぐモノ、企業。

真に言うべきことはなにか?アウトプットは強いか?を意識してみよう。

言い換えれば、世界内自己存在意義。

━━━━━━━━━━━━

‥‥この3つのうち、2つでも取り入れられていると強い企画になる。3つとも達成できるといいんだけど、3つ全部というのは難しい。。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

で、ここから課題の説明でした。「サントリー ザ・プレミアム・モルツのWeb広告を考えよ!」

サントリー酒類 Iさまよりオリエン。
洋基さん「Iさんといえば、最近ではトリスハニーのHoney Momentを手掛けた人です」

そうなんです、余談ですが、この日ゲストに招かれたサントリーの宣伝部の方とは、僕がHoney Momentで直接やりとりさせていただいたクライアントの方だったのです。超偶然。そして関わった仕事の名前が出てきて嬉しい。

プレモルの市場動向やコマーシャルについて実際にCMを見ながらご紹介。

ずっと同じ「Shall we dance?」のメロディと矢沢永吉のモノクロCMを続けているように見えて、ちゃんと市場や時代性を見て細やかなメッセージングの調整を行っている、というお話。たとえば、特別な日だけに飲む高級品と捉えられすぎて日常飲みでは売れづらくなったと感じられたら「金曜日はプレモルの日。」というメッセージで日常的にも買いやすくなる土壌をつくる、など。じつはとっても戦略的。

 

と、TVCMをひととおり見てから、Web、インタラクティブを使った広告クリエイティブのブレスト開始。

 

━━━━━【洋基さんよりブレストのルールを提示】━━━━━

★まずはタネでいい。
⇒プレモルあるある or 技術あるある。

★紙に書いて共有しよう。
⇒飛び交うコトバを紙で文字に落としていくと、さらに広がる。

★まずはなんでも出してみよう。
⇒うんこみたいな話から黄金のうんこが生まれることも。

★人のアイデアを否定するのは最後にしよう。
⇒個別に否定・批判していると閉塞してしまう。発言しづらい空気にもなってダメ。
まずはみんなの考えていることをぜーんぶテーブルの上に出しきろう。
セレクトはその後!

★ブレストは楽しく、雑談しながら。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

‥‥今回は初対面の方々とやるブレストだったので、腹の探り合いみたいなところに思いのほか時間を要しました。ブレスト慣れしている人とそうでない人との温度差がハッキリと出てしまったのも反省点。そのぶん、ふだんの会社で気心知れたメンツとブレストできる環境のすばらしさに気づくこともできたかな?

ワークショップの中心である課題企画の提出と講評については、個々の企画について紹介せねばならないので割愛します。ただ、1位になったチームは最初に洋基さんがお話しされた企画のポイント3箇条をすべて網羅していて、学ぶところが多かったです。
ワークショップの中心である課題企画の提出と講評については、個々の企画について紹介せねばならないので割愛します。ただ、1位になったチームは最初に洋基さんがお話しされた企画のポイント3箇条をすべて網羅していて、学ぶところが多かったです。

 

とても無料とは思えないほど充実した時間。この模様は次号のWeb Designing誌に掲載されるそうなので、楽しみです。

カンヌ2013受賞:THE ANT RALLY

まず基本的なルールとして、カンヌライオンズはチャリティ・非営利機関や公共機関が実施したものはどのカテゴリであってもグランプリ候補にはなれないそうです(知らなかった‥‥)。今年5部門でグランプリをかっさらった『Dumb Ways to Die』をつくったメルボルン鉄道は、1990年代後半より州政府の運営から私鉄に切り替わったので“公共機関”ではなさそうです。へー。

そしてこれらの非営利カテゴリに属するものは全部門をまたいでたった1つだけ「グランプリ・フォー・グッド」として表彰されるとか。

今年その「グランプリ・フォー・グッド」に輝いたのが『THE ANT RALLY』。

WWF(世界自然保護基金)創立50周年に際してドイツのBBDOデュッセルドルフが制作した、アリによる熱帯雨林の環境保護デモ行進。中南米に多く生息する社会性のアリ、ハキリアリの「葉っぱを運ぶ」習性を活かした“極小のビッグアイデア”です。

ケルン動物園で5日間に渡って展示され、ビデオとともに話題になって成功!とのこと。これは実際に見たらきっと写真を撮りたくなるし、子どもたちにも受けそうだし、本当のデモみたいに見える様がチャーミングだし、メッセージは真に迫ってくるものだし、シャレが効いてるし。

ちなみに、ブランデッドコンテンツ&エンターテイメント部門でシルバー、ダイレクト部門でブロンズも獲得したそうです。

 

おなじ「虫」を使ったアイデア(bugvertising)では、こちらも。

 

これは「無視」できないなぁ‥‥。

Cannes Lions 2013 閉会

先週土曜(6/22)にカンヌライオンズが閉会しました。
日本からウォッチしていた自分なりに大ざっぱに振り返ってみます。

60周年を迎えたクリエイティビティの祭典が閉幕
60周年を迎えたクリエイティビティの祭典が閉幕

今年は開催60周年でレジェンドの年と言われ、いま新しいか?ユニークか?ということと同時に、いやそれ以上に、「この作品・仕事を後世にも残したいかどうか?」がジャッジの基準に掲げられたのではないか?と言われています(というか、現地に行っていたうちの社長が周囲とそういう話をしてたそうです)。まるでMoMaのパーマネントコレクションにふさわしいか?的な視点ですね。それもあってか、全体的に受賞作品(広告を作品と呼ぶのは個人的にはすごく違和感があるのですが、めんどくさいので作品で通します)は社会貢献モノ、人助けモノ=ソーシャル・グッドな作品が目立った年だったように思います。おそらく来年はその方向性を掘り進めたものと揺り戻しでエンタメに振り切ったものの両方がよりぐちゃぐちゃに混在するんじゃないか?と思ってます。というか、そうあってほしいな。

公式Facebookページより
公式Facebookページより

それから、これは日本での話ですが、Perfumeがゲストパフォーマーとして出演したこともあって、一般の方々にも映画祭以外の「もうひとつのカンヌ」が広く知られるきっかけとなりました。NAVERまとめに連日まとめ記事がアップされたり、BlogやFacebook、Twitterでわかりやすく速報してくれる人がいたりして、現地にいなくても何が受賞し、何がトピックとして語られているのかは瞬時に伝わるようになっていますが、その動向が今までより分かりやすくパッケージングする方々が多く現地に行かれているおかげで、広く注目されているなぁと実感します。ま、これも錯覚なんでしょうが。

直接伝わらないとすれば、あの現場特有の熱気でしょうか。あれは行った人にしか味わえない「カンヌ熱」。良くも悪くも、その熱におかされて帰ってくるのが行った人の常です。「やっぱ時代は社会貢献だよ!」とか言ってる人がいたらものすごく警戒しますが。

で、僕の身近では社長が行ってきたのですが、熱よりも冷静さをまとって帰ってきました。それは僕らの主戦場であるサイバーライオンで成果を上げられなかったことがいちばん大きく作用しています。その要因はいくつかあるでしょうが、そのひとつは先に書いた「レジェンド」=広告界の重鎮たちの審査視点がいつもと異なっていたからではないか?と個人的には思います。ことサイバーライオンに関しては。やはり審査員の構成によって結果は大きく変わりますから。

とはいえ、決まった結果にケチつけても覆りようもないですし、受賞作品にはそれぞれ見習うポイントがあるはずです。カンヌは終わったけど僕のカンヌは、というか「いいものをつくる」という思いはこの仕事をしている以上は終わらないので(あれ?熱くなってきたな‥‥)、これからも地道に気になった作品をピックアップして、自分なりの視点と言葉を添えてBlogにアップしていこうと思います。

そう、大事なのはデコンストラクション!ある成功事例を自分なりに分解してインサイトから掘り起こし、アイデアの根源へと潜り込む作業です。そうすることで事例をただ知ったかぶりで終わらせない。誰かの記事と被ったとしても、誰かの言葉をなぞることになったとしても、自分のアタマで考えて自分の手で残すことがあとあとすごく効いてくるんです。英語を音読するような感じ?「ただ聞き流すだけでいいんです」なんて嘘です。この通称「デコン会」を僕は2年前に博報堂で石井うさぎさんや木村健太郎さんらとやらせてもらって、これをやりきらないとカンヌを体験しきったとは言えないなぁと思ったのです。本当は複数人でやるのが効果的なんですが、Blogはどこまでも個人のものなので、ここではひとりでやっていきます。

あと、会期中にプロモ&アクティベーション部門モバイル部門のグランプリをBlogにまとめて気づきましたが、英語の勉強になります。アワード用のムービーは非常にシンプルに作られているので文法的には難しくないのですが、短時間に多くのことを伝えるので早口気味。そこで分からない単語や聞き取れなかったワードを調べていくと英語のボキャブラリが増えます。特殊な言葉すぎて日常では使わないよ、というものもありますが。

‥‥とまあ、2013年のカンヌは終わり、蓋を開ければメルボルン鉄道の「DUMB WAYS TO DIE」がグランプリ5冠という前代未聞の快挙を成し遂げたエポックな年になりましたが、テキスト(教科書ね)としてのカンヌはまだ終わってないのです。

 

そういえば、2011年のカンヌ勉強会で電通の岸勇希さん(ブランデッドコンテンツ&エンターテインメント部門審査員)がこんなことを仰っていました。

「今年は節目の年です!ってこの6年くらい毎年聞いてる気がするんですが、要は、カンヌは自分の中での発見でしかない。金銀銅の色を見るな、自分がどれをいいと思うかを素直に見ろと。賞を伏せてひとつの事例を徹底的に分析すると、その人の血肉になる。あと、たくさん見る。どれがすごい、ではなくて、とにかくたくさんの事例に触れられるんだから、見まくって学べばいい。今は公式サイトでも見られる」

(拙Blog CREATIVE KITCHENに行ってきました。#03 より)

つづく。

 

参考記事:
カンヌライオンズ2013受賞結果出そろう 日本は33のライオン獲得 | AdverTimes(アドタイ)
NAVERまとめ:タグ「カンヌ国際広告祭」
世界最大級の広告祭「カンヌ・ライオン」で注目された日本人

カンヌ2013:Perfume!!!

Cannes Lions 2013でPerfumeが驚愕のパフォーマンス!
昨晩23時(日本時間)からの電通さんのセミナー「Happy Hacking」にて披露され、YouTubeのLIVE配信でその一部始終を目撃。いや〜、すごかった!

どなたかが作成されたiPhone 5用壁紙。仕事早い!かっこいい!!
どなたかが作成されたiPhone 5用壁紙。仕事早い!かっこいい!!

 

まだ全受賞作品が出揃っていない段階だが、グローバルサイトは早々とサイバー部門で銀賞(SILVER LION)を受賞しており、会場となったグランドオーディトリアムには世界中から4000人を超えるのクリエイターや広告業界関係者が集結した。(ナタリー:拍手喝采!Perfumeがカンヌ銀賞で驚愕の最先端ライブより)

僕が今回獲れなかったサイバーライオンです。悔しいなぁ‥‥。

 

オープニングのナレーションが流れる中、真っ白な衣装をまとったメンバーに、プロジェクションマッピングの技法を用いて色とりどりのグラフィックが映し出される。衣装のスカートと肩の部分は電動で翼のように広がり、まるで天使のような姿に。生身の人間を全身スクリーンにするという最先端のテクノロジーに、会場中から感嘆のどよめきが起こった。(ナタリーより)
オープニングのナレーションが流れる中、真っ白な衣装をまとったメンバーに、プロジェクションマッピングの技法を用いて色とりどりのグラフィックが映し出される。衣装のスカートと肩の部分は電動で翼のように広がり、まるで天使のような姿に。生身の人間を全身スクリーンにするという最先端のテクノロジーに、会場中から感嘆のどよめきが起こった。(ナタリーより)

近未来ジュディ・オング!
からの、「Spending all my time」のエクステンデッドミックス!!

ビートの効いたイントロとともにメンバーが上に着ていたドレスを颯爽と脱ぐと、下には肩のプリーツが印象的な真っ白な衣装が現れた。3人の動きに合わせて衣装には次々にCGが映し出され、まるで光が踊っているような神秘的な光景となった。(ナタリーより)
ビートの効いたイントロとともにメンバーが上に着ていたドレスを颯爽と脱ぐと、下には肩のプリーツが印象的な真っ白な衣装が現れた。3人の動きに合わせて衣装には次々にCGが映し出され、まるで光が踊っているような神秘的な光景となった。(ナタリーより)

カンヌに行ったのはもう2年前ですが、ひとり黒の直角二等辺三角形ツアーTシャツ着て現地を歩き回っていたあの当時からまさかこんな日が訪れるなんて!今年も行ってたらP.T.A.リストバンドつけて最前列で見守ったのに!歯も磨いたし黒縁メガネで行ったのに!

そのカンヌに行っているうちの社長のTweet。

 

こちらはHotchkissのマユミさんのTweet。

裏山!

なにより真鍋大度さんとチームRhizomatiks、チームPerfumeに拍手と嫉妬です。

(菅野さんとは先日お会いしたばかりなので妙な気分)

 

さあ、このあとは7/5(金) にイギリスで行われるワールドツアーのライブビューイング、秋に3rdアルバム発売、冬に2大ドームツアー!iTunes Storeでも配信が解禁!!怒濤の攻めモードに震える‥‥。

 

カンヌでのパフォーマンスはYouTubeに落ちてますのでどーぞ(消される可能性あり)。
プレゼンテーションも込みのムービーはこちら

 

2007年 新宿Loft~オトノミライ~ より。このコたちがカンヌで…。おめでとう!

カンヌ2013受賞:TXTBKS

Cannnes Lions 2013 モバイル部門のグランプリ『TXTBKS』(フィリピン)をご紹介。

まず、有権者に訴えたいのは、フィリピンの教科書はとっても大きくて重たい!ということであります(『有吉マツコの怒り新党』風に)。

教科書を持ち運ぶのは子どもたちの「重荷」。背骨が変形する被害も!先進国ではタブレットによる教科書が普及しつつあるけど、貧しいフィリピンでは無理‥‥。

この差は歴然!

そこで目を付けたのが、中古のガラケー。通信会社SMARTは、たくさんの使われなくなったガラケーを教科書にすることを企画。

目の付け所がシャープな、リユース。

教科書のデータを入れたSIMカードを各教科ごとにつくり、生徒たちに配布しました。

準備に6ヶ月を費やしたとか。このデザインもいいですね。
それがコレ。
それがコレ。
通学かばんの重さは半分に減り‥‥
通学かばんの重さは半分に減り‥‥
テストの成績は90%向上、出席率も95%にUP!
テストの成績は90%(?)向上、出席率も95%にUP!

次々と成果を生み出すのであります(『怒り新党』の塙風に)。

「あの重さはもう勘弁」
Yeah!
でも今はこれがある!Yeah!

これが今回のモバイル部門のグランプリというのは、一見、わかりにくい気もしました。だって、ツールとしてはたしかにモバイルというハードを用いているけれど、やってることは社会貢献であり、モバイル「部門」なのかなー?と。でも、SIMカードに教科書データを入れるというアクションはやっぱりモバイルを媒介にコミュニケーションしているわけで、穿った見方をしすぎなのかしらん?と思った上で、やはり施策としては超素敵。文句なしに素晴らしい。

ビデオを見るとその素晴らしさがより伝わります。

フィリピン以外の発展途上国でも今すぐやるべき!と思いました。それは先日紹介した「immortal fans」にも言えることで。企業がただ自社のプロモーションをしていればいい時代はとっくに終わって、どれだけ世の中に役立てるかが期待されているのはアタマでは理解していましたが、カンヌは確実にそこへ向かっているんですね。クリエイティビティという翼で。

で、いいものはオリジナリティに溢れていると同時に、「みんなもやりなよ!」とアイデアのシェアを促されているような気になってきます。新しい言語を作っているようなものですね。「朝は『おはよう』と言い合おう」みたいな。というわけで、おやすみなさい。

カンヌ2013受賞:immortal fans

現在開催中のカンヌライオンズ2013のプロモ&アクティベーション部門のグランプリに、ブラジルの臓器ドナー登録を促すキャンペーンが選ばれました。AgencyはOgilvy BrasilとSao Paulo。

審査員の野添剛士さんによるレポ。

死後に臓器提供することへの家族の精神的ハードルというとてつもなく大きな課題に対して、「自分の愛するサッカーチームのファンを増やすためならオレはドナーになるぜ!」という宣言をチームのファンカードにつける。という、とてつもなくシンプルで、世界中で展開可能なアイデアで実現した仕事です。(中略)これがこの記念すべき年のカンヌで世界に知られることで、本当に少し世界を変えられるんじゃないか。そんなことを信じて選んだグランプリです。

SIXメンバーが見たCANNES LIONS 2013レポート(第1回)より

『immortal fans』不死のファン、永遠のファン。
『immortal fans』不死のファン、永遠のファン。

同じチームを応援するファンの間でドナーカードを作る。それは臓器だけでなく魂をバトンするためのドナーカードになる。日本にも「臓器提供意思表示カード」がありますが、そこにこんな熱い意味を込めるなんて、熱狂的なサッカー大国ブラジルらしい施策かもしれません。

51,000人以上がオリジナルのドナーカードを求めた。
51,000人以上がオリジナルのドナーカードを求めた。
それがコレ。
それがコレ。
臓器移植の年間件数も増加。
臓器移植の年間件数も増加(ドナー登録数は54%UP)。
初めて、角膜移植の待機リストが1,047人からゼロに!
初めて、角膜移植の待機リストが1,047人からゼロに!

スポーツの力を、選手やチームではなくサポーターが軸になって別の価値に転用する。「俺が死んでも俺の心臓でお前はチームを応援してくれよな!」と誇らしげに語るファンの姿が目に浮かびます。まさに不死のファン。さながらハッピーなレッドカード。

ファンの結束力をドナー登録に結びつけたこの施策、素晴らしいと思いました。

Cannes Lions 2013プレ勉強会

6月です。カンヌライオンズの季節が近づいてきました。

cl13-logo-homepage

今年はPerfumeがゲストパフォーマーとして出る!という、広告関係者視点ではなくPerfumeファンクラブ会員としても俄然注目のイベントになりそうですが、その前にちゃんと(?)賞レースにあがってきそうなものをピックアップして好き勝手に予測しようぜ!ってことで、6月7日(金)、Cannes Lions 2013プレ勉強会に行ってきました。

『広告批評』元編集長の河尻亨一さん主宰、ゲストは毎年恒例・kiramekiの石井義樹さんによるプレ勉強会。副題は「今年は工作系(メイカーズ)来んじゃね?」。今回で4度目の開催だそうで、僕にとっては3回目の参加です‥‥が、仕事の関係で大幅に遅刻。それでも最後にプロジェクターに映し出されたスライドに感銘を受けたので、行った甲斐はありました。その話は最後に書くとして。

いくつかピックアップします。

 

http://youtu.be/kKTamH__xuQ

イギリスの公共テレビ局 チャンネル4によるパラリンピックのコマーシャル。勝負師の顔にゾクゾクする。あまり馴染みのなかった彼らの競技を見てみたいと思う。多民族で形成されているからでしょうか、身体障害者への理解は欧米の方が進んでいる気がします。

 

http://youtu.be/YRB0i9-AUQs

学校の唯一無二の美女、スーザン・グレン。ただひたすら彼女をありったけの美辞麗句で荒唐無稽に称えるナレーション。

「『コミックのヒーローを魅了するヒロイントップ10』のライター達は、スーザン・グレンみたいなヒロインを作り出したいと願ったに違いない。スーザンが近くにいると僕の震度計は8を記録し、彼女の周りの女たちはたちまちゴブリンみたいになる」

そして「If I could do it again, I’d do it differently.」(もしもう一度やり直せるなら、今度は別のやり方にする)と現在の男(なんとジャック・バウワーasキーファー・サザーランド!)が語り終える。そして、AXEとともにFear no Susan Glenn.(スーザン・グレンなんて怖くない)。

男が惚れるヒロインと、男が憧れるヒーローのサンドイッチ。すばらしい!

 

https://youtu.be/DAAYSBfxkqQ

悪魔に魂を売らなくても手が届く値段のメルセデスですよ。

この悪魔が『スパイダーマン』シリーズでグリーン・ゴブリンを怪演したウィレム・デフォーってのがいい。昨年、同じスーパーボウル枠のCMでクライスラーがクリント・イーストウッドを起用して話題になりましたが、ハリウッドスターの説得力はすさまじい。

http://youtu.be/T1c3AXZkYeU

 

クルマ続きで。

http://youtu.be/ANhmS6QLd5Q

「Audiに乗って自信が持てた」
いいパパだなぁ。親子で乗ってカッコイイのって、Audiかもなぁ。と思わせてくれるCM。

 

『Smoking Kid』

路上でタバコを吸う喫煙者に、少年や少女が駆け寄って「ライターを貸して下さい」とお願いをする。すると喫煙者は必ず「え?」といった反応を示し、「タバコは健康によくないんだよ?」や「寿命が縮まるんだよ?」などと、子どもたちに対して優しく説明をし始める。タバコがどのように体によくないのは、理解しているのである。そして子どもたちは「じゃあ、なんであなたはタバコを吸っているの?」と逆に問いかけつつ、そっと手紙を喫煙者に渡す。そこには「あなたは私の心配をしてくれた。でも、なぜ自分自身への心配はしないの?」と書かれているのである。

(ロケットニュース24「タイの禁煙プロモーションCMが心にガツンとくると世界中で話題に」より)

これは見てて辛くなりました。ただ、「効く」だろうなぁ。

 

コカコーラ『Small World Machines – Bringing India & Pakistan Together』

第二次大戦による分裂以降、対立が続くインドとパキスタンを結ぶベンディングマシーンをコカコーラが提供。これは取り組み自体もさることながら、プレゼンテーションビデオが素晴らしい。本当にこんな風にハッピーな風景が生まれたのかはちょっと懐疑的ですが。絶対ダンスする人いるよな(とか思っちゃう)。

参照:対立関係の続くインドとパキスタンの国民がコカ・コーラ社のキャンペーンで笑顔に / 世界にも感動を与える

余談ですが、BGMの「Go Do」はプレゼンビデオによく多用されますね。

 

Ram Trucks『Super Bowl Commercial “Farmer”』

「だから神は8日目に農夫をつくった」という言葉がつづく、農作業用トラック会社のCM。重厚なHDR写真はよく見ると微妙に視差を生む角度をつけていたり雲が流れたり、見る者を引き込む細かな演出がされています。ナレーションはPaul Harveyというアメリカの有名なラジオパーソナリティ(2009年に90歳で没)による演説だそうです。

 

http://youtu.be/ev-R0tsreBw

メトロ・トレインズ・メルボルン『Dumb Ways to Die』

オーストラリアの鉄道会社による事故防止啓蒙ビデオ。Dumb Ways to Dieとは「おバカな死に方集」。コミカルな死に方に笑って見てしまうけれど、実際、こういうマヌケな死に方が後を絶たないらしい。ソーシャルで流行る「キャラクター」「歌」「シンプルなメッセージ」が三拍子揃ってて、ACの『あいさつの魔法』を思い出しました。毒っけは比べものになりませんが。

ちなみに、カンヌの前哨戦ともいわれるOne Showでグランプリを受賞。

参照:かわいいキャラが歌に乗せて死にまくるメルボルン鉄道公式のアニメムービー「Dumb Ways to Die」 – GIGAZINE

 

Dove『Real Beauty Sketches』

Doveによると、世界中の女性の4%しか自分のことを美しいと思っておらず、一方でDoveはポジティブな自尊心を築き、女性たちのポテンシャルを最大限まで引き出すことにコミットしているため、女性たちに重要なことを伝えたいという想いからこのビデオを作成するに至ったとしている。そしてその伝えたいとても重要なこととは…

“You are more beautiful than you think. ―あなたはあなたが思っている以上に美しい。”

心に触れるDoveのブランドプロモーションビデオ Real Beauty Sketches [動画]より)

自分のネガティブな証言によって描かれた肖像と、他人のプレーンな証言によって描かれた肖像。シンプルだけどこれほど説得力のあるものもない。拍手したくなるムービーです。

 

さて、ここからは、「今年は工作系(メイカーズ)来んじゃね?」という副題にのっとって、なんか作っちゃった系のプロモーションたちを。

 

『The Popinator』

ポップコーンで有名なお菓子メーカーが「ポップコーンプロジェクト」を展開。「Pop!」の掛け声に反応する“ポップコーン投げマシーン”を開発しちゃいました。

 

[vimeo http://www.vimeo.com/46975682 w=580&h=326]

『Super Angry Birds – a Tangible Controller』

世界中で人気の「アングリーバード」にリアルなコントローラーを作っちゃいました!手作り感満載だけど楽しそう。3人くらいで綱引き状になってて200インチくらいのスクリーンでやったら盛り上がりそうですね。

 

[vimeo http://www.vimeo.com/62678151 w=580&h=326]

『The Most Powerful Arm』

筋肉が急速に衰える筋ジストロフィーへの寄付を訴えるメッセージ。筋ジストロフィー症の女性が呼びかける言葉をロボットアームがたどたどしく書き起こします。キャンペーンサイトに行って寄付すると、このロボットアームが署名してくれるようです。10日間で20,000人分のサインが集まったとか。

 

他にもいろんな事例が紹介されたようですが、最後にスクリーンに映し出されたショットがこちら。

cannes_studypng

80歳代のおばあちゃんが勝手に修復作業してとんでもない仕上がりになったキリストのフレスコ画。世界中でパロディが生まれ、遊び尽くされました。しかもスペイン南部にあるこの教会は一躍観光名所となり、入場料を取り始めたら“作者”のおばあちゃんと訴訟問題に発展したとか。

河尻さんいわく「意図して広告にしようと企んだものではないけれど、これだけ世界中で話題になるような出来事をどうやって作り出すか、注目せざるを得ない」と。

ちょうど僕も先日、うちの社長に「今年印象に残ったプロモーション教えて」と訊かれ、Googleの「World Wide Maze」や「キリンのどごし 夢のドリーム」や「リアル脱出ゲームTV」や「TOKYO CITY SYMPHONY」や手前味噌ですがIntelの「PUSH for Ultrabook」が思い出されましたが、どれにも勝って印象深いのはこれ(↓)でした。

makankousappou

女子高生がTwitterに投稿したことで大流行した「マカンコウサッポウ」。これも「おばあちゃんのフレスコ画」と同じく、プロモーションじゃない。けれど日本を飛び越え世界中でこの遊びが流行し、北米のカプコンが「波動拳コンテスト」を開催するまでに至りました。

USカプコンのフットワークの軽さは見習うものがあります。折しも日本では『ドラゴンボール』の映画版が公開中だったので「映画のプロモーションか?」とも囁かれましたが、そういった形跡は見られませんでしたし、もし実際にそうだとしたらここまで流行らなかったでしょう。USカプコンは後乗りだったから良かったのかも。そこがなんとも難しいところで、「広告だとわかった途端に冷める気持ち」とどう寄り添いつつ、面白いものを仕掛けるか?おばあちゃんや女子高生の純粋さがあればこその流行に勝負を挑まないと。そのためには、動機の純粋さではなくメッセージの純粋さが求められるのかな?言葉にすると陳腐だけど。

 

それにしても、アメリカのスーパーボウル枠で放映されるCMでほぼ埋まってしまうフィルム部門の注目作。映像の派手さではなくメッセージの普遍性、人間賛歌で評価が高いものが多いのは最近の風潮でしょうか。どれも心に沁みます。

そして、どうしても工作系といえばおバカな方向で魅力を発揮しがちですが、メッセージを乗せる領域に手を伸ばしている『The Most Powerful Arm』も印象的でした。テクニカルなことやSNSで下支えしながら、確実に誰かの笑顔をふやす仕事がしたい。そう思いました。

クリント・イーストウッドが昨年訴えた「ハーフタイム」=癒やしの時間は、まだ世界的につづいているのかもしれません。だからこそ今「効く」ことを考えたいなと。今年のカンヌライオンズは6月16日から22日まで。僕は日本から見守ります‥‥。

 

おまけ参照:

アドフェスト2013まとめ
(河尻さん編集)

Cannes Lions 2013 Prediction
(Pinterestで予想している人のまとめ)

CREATIVE KITCHENに行ってきました。#03

「CREATIVE KITCHENに行ってきました。」
Vol.01Vol.02に引き続いての3本目。

 

世界の広告はいま。今年のカンヌ100連発!
岸 勇希氏(電通) × 木村 健太郎氏(博報堂ケトル)
× 嶋 浩一郎氏(博報堂ケトル) × 樋口 景一氏(電通)

 

の続きです。1ヶ月以上前のことを記憶力とメモだけでどうぞ。

 

木村さん:
「賞を獲るためのコツなんてものがあれば僕も知りたいけれど、受賞するものには3つの方向性があると思います」

 1:誰よりも早くやったこと(先駆け)
 2:誰もOKしにくいこと(偉業)
 3:いつ誰がやってもいいけど誰もやらなかったこと(盲点)

Comment→
3番目は「盲点」って言ってたかどうか、うろ覚え。

 

木村さん:
「例えばコカ・コーラのFriendship Machineなんかは3番ですよね」

 

岸さん:
「今年は節目の年です!ってこの6年くらい毎年聞いてる気がするんですが、要は、カンヌは自分の中での発見でしかない。金銀銅の色を見るな、自分がどれをいいと思うかを素直に見ろと。賞を伏せてひとつの事例を徹底的に分析すると、その人の血肉になる。あと、たくさん見る。どれがすごい、ではなくて、とにかくたくさんの事例に触れられるんだから、見まくって学べばいい。今は公式サイトでも見られる」

 

canne01

 

嶋さん:
「ボジョレー・ヌーヴォーも、今年は100年に一度の当たり年です!って毎年言われてるんだよね(笑)。CMは受賞前のショートリストにあるうんこ作品も大量に見るといいよね。世界中の人間の欲望の固まりが見えてくるから」

 

木村さん:
「カンヌがあることの意味‥‥ファッションにパリコレやミラノコレクションがあるように、広告にもそういう場があってもいいと思う。僕はカンヌからいろんなものをもらったから、自分からも何か返したいと思ってます」

岸さん:
「日本に戻って説明会をすると、(他人の偉業を取り扱うが故に)敗北感しか残らないし、要素を(体よく)抽出したことしか切り売りできない」

「日本からカンヌに出したくても、純粋にいいものが出せないこともある。カンヌではシンプルでなければ届かないから。あいまいなものをあいまいなまま扱う勇気を持っていたい。何度も言うが私はプレーヤーでありたい。生産と解釈・批評はちがう」

「批評の眼はやたら新しいものごとに向かいがち。よく聞くのが、『これは新しい!感動した』‥‥新しいから感動するのか?人を感動させるために何かをやって、それが結果的に新しいことだったのなら分かる。新しいものを礼賛しても無意味。だからこれからのカンヌに何を求めるとか、どうなるかとか、興味ない」

Comment→
的なことを仰ってました。発言は前後してるかもしれません。

 

このメニューのメモは以上です。

 

実際にはもっと皆さんまんべんなく話され、100連発!とまでは行かないまでも、もっといろんな事例ムービーを流されていました。ほんと、作品の鑑賞でよかったのは学生まで。カンヌの現地で河尻さんと語り明かした夜を思い出しました。

CREATIVE KITCHENに行ってきました。#02

さて、前回からかなり間を置いての
「CREATIVE KITCHEN」まとめVol.02。

 

世界の広告はいま。今年のカンヌ100連発!

岸 勇希氏(電通) × 木村 健太郎氏(博報堂ケトル)
× 嶋 浩一郎氏(博報堂ケトル) × 樋口 景一氏(電通)

 

・手元のメモ帳だけを頼りに記述します。
・口調などは僕の記憶から成るフィクションです。
・再現をやめて、個人的に刺さった部分だけを抽出します。

 

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加藤貞顕×佐渡島庸平×中村洋基「2010年代のヒット論」

銀河ライター主宰/元「広告批評」編集長の河尻亨一さんよりお誘いメールをいただき、『Creative Kitchen ―ヒトとテックとコトバのレシピ―』に行ってきました。そうそうたるゲストによる複数のプログラムから、個人的に面白かったものをメモしました。
 

気鋭のウェブディレクターと編集者が考える2010年代のヒット論
加藤 貞顕氏(ダイヤモンド社) × 佐渡島 庸平氏(講談社) × 中村 洋基氏(PARTY)

 

加藤さんはあの『もしドラ』を売りに売った仕掛け人。佐渡島さんは『バガボンド』『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』『働きマン』など大ヒット漫画を世に送り出してきたスゴ腕編集マン。1979年生まれってことは僕の1コ上!モデレーターには同じく79年生まれのPARTY・中村洋基さん。

遅れて入ったので、加藤さんのお話はほとんど聞き逃してしまいました。

 

加藤さん:
ベストセラーを分けると、恋愛・青春・家族・健康・お金‥‥の5つのうちのどれかなんです。

もしドラを売るときに意識したことは、読者、書店、メディアの三者とも顧客であるということ。それぞれに効くプロモーションを考えることが大事。メディア向けには、ワールドカップの最中だったから海外遠征中の日本代表にごそっと献本してみたり。「なんか本が大量にあるんですけど何ですか?」って遠征先から聞かれて「チーム論についてお役立ていただければ‥‥」と苦し紛れに話したら「岡田監督(当時)はもう読んでますよ」と!それがきっかけになって原作者と岡田監督との雑誌上での対談に結びついたんです。ゲリラ的ですが功を奏しました。

佐渡島さん:
本は面白いだけじゃ買ってもらえません。面白いかどうかは読まないと分からないから。いかに読む前に面白いと思ってもらうかが勝負なんです。

売れると一口に言っても、10万部売れるのと100万部売れるのとでは意味が違います。10万部は本に書かれていることが好きな人だけが買った数字。対して100万部は興味の無かった人たちも買った数字。広告とか周りのムードに流されて何となく買う人も含まれてくる。だからノイズも多くレビューされる。つまんないとか、くだらないとか。それでも伸びる作家は100万部を目指すし、それで潰れる作家だと思えば10万部の段階でプロモーションをやめます。マンガは毎週出るので長期プロモーションできるんです。その中で考えていきます。

 

Memo →
編集者は作家の能力に合わせた適切な売れ方までデザインする。

 

佐渡島さん:
『宇宙兄弟』の小山宙也さんの才能は、まず自分の意見があること。これがない作家は意外と多い。いちばん大事です。例えば、もともと小山さんは手描きの線に味があった。でもその味がくどすぎて、僕は『定規を使ってください』とお願いして矯正しようとした。それで小山さんは定規を使い始めたけど、細かいギザギザをわざと刻んだ定規にしてきた。そうすればたしかに直線なんだけど、微妙なゆらぎは残る。今でこそフリーハンドでも味を残したきれいな直線が描けるけれど、最初から何でも鵜呑みにする人ではなかったですね。

そして、ゼロからやり直せる人。作品として合格のものを上げてきたときに、「小山さん、これ面白いけど超面白くはないですね」と漠然とした戻しをしたら、まったく違うものを再度持ってきて、ちゃんと前よりずっと面白いものになっていた。ふつうの漫画家はちょっと直すだけです。それなら「ここが限界なのかな」とこちらも引き下がる。でも彼はどんな時もゼロからやり直せる人なんです。

あと、小山さんは編集者の「面白いですね」のニュアンスを嗅ぎ分ける。「ん~、面白いですね‥‥」だと描き直してくる。一度描き上げている時期というのは、その後の入稿やら印刷工場やら流通やら、いろんな人に影響を及ぼすウェイトが高まっている時期なんだけど、彼は最後の最後まで、いい意味で周りを気にしない。振り回されない人なんですね。

中村さん:
面白いなぁ!『ドラゴン桜』はどうだったんですか?

佐渡島さん:
あれはホリエモンにダメモトで贈ってみて、そしたらブログで紹介してくれたんです。その直後に2~3万部動いた。下手したらテレビの情報番組に紹介されるより動いたかもしれない。あと、自分が灘校出身だったので、先生に読んでもらって『灘校教師も読んでいる!』と帯に書いたり、友達のお父さんが京大教授だったので、読んでもらって‥‥(笑)。

僕は編集者になって、最初から自分の好きな作家とだけ仕事をしていきたいと考えました。だけど会社員である以上、そうもいかないから、まず『ドラゴン桜』を売って誰にも何も言われないだけの成果を出して、自分のポジションを作ったんです。

中村さん:
佐渡島さんって超エリートなんですよね。ご自身が灘校から東大出身で。

佐渡島さん:
あのマンガは5巻までは僕の体験談を描いてるんです。僕、日本史は石ノ森章太郎先生の『日本の歴史』しか読んでませんから。

 

Memo →
編集者は作家の個性を尊重しつつ、秋元康ばりに作品のプロデュースと育成もする。

 

佐渡島さんと加藤さんから見た中村さん像

佐渡島さん:
中村さんがやっていることは分かりやすくて、シンプルで、見た目はカッコイイ。それってアプリも小説もマンガも実は一緒で、共通する面が非常に多い気がしています。

加藤さん:
実は私もデジタルコンテンツをメインにしたいと考えていて、ダイヤモンド社を辞めるんです。

(会場ざわつく)

加藤さん:
例えば英単語帳って英語の部分を伏せて読んだり、発音記号を読み取って発音したりしますが、これもデジタル化すればエンタメにできますよね。で、今はそのプラットフォームもみんな持っている(スマホで)。紙の本よりも良くなるコンテンツがまだまだあるんです。

2014年追補:加藤貞顕さんはその後「cakes」を立ち上げ、noteでネットメディア&サービスを確立されました。佐渡島さんも独立され、漫画家・小説家などのクリエイターのエージェント「コルク」を設立。

 

いまだ日本では花開かない電子書籍市場

佐渡島さん:
電子書籍についてはAppleと話したことがあって。僕は、1個のすごいマスターピースを作れば、それによって電子書籍市場も拡がると考えていたんです。ビッグヒットが必要だと。でもAppleの人いわく、違うと。たくさんのコンテンツが揃っている方が市場を作ることになると。1つのヒットは1%のチカラしか持たないんだと言われて、なるほどなと思いました。だからまず有象無象の作品が、Appleの場合だとiBooksに揃う必要があるんです。

Memo →
市場を開拓するには、ビッグヒットの前にロングテールが成立する量が必要。とはいえ量を呼ぶ雪崩を起こすための質もどこかの段階で必要な気も‥‥

 

プログラムその1、以上です。

漫画家と編集さんの関係性って、プランナーとクリエイティブディレクターの関係性なんだなぁ。編集者は作るところにもどんどん介入するし、送り届けるところにもあらゆる工夫を施す。CDでもありPRマンでもあり。

佐渡島さんの「100万部売れると潰れそうな作家だと思ったら10万部売れた段階でプロモーションから手を引く」という話が聴けただけでも価値ある回でした。