渋谷のタワレコで「水曜日のカンパネラ」のインストアLIVEを観た後、コピーライター・小霜和也さんの新刊『ここらで広告コピーの本当の話をします。』出版記念【コピー1本で100万円請求するためのセミナー】に行ってきました。
書籍は発売されてすぐに一気に読破しました。
いつだって「広告制作は自己表現じゃない、発注主の抱える問題にこたえるためにある」なんてわかっているつもりだけど、ここまでひとつひとつの思考プロセスが体系立てて書かれると、はたして自分はどうなのか見直さざるを得ない。ページをめくるたびに身の引き締まる思い&目から鱗で、ときどき死にたくなるほど悶絶させられる名著でした。
そんな本を携えて入った青山会館は250人のお客さんでぎっしり。
会場でマイク片手に「コピーで100万円欲しいかー!」と拳を突き上げる小霜さんに、250人の戸惑いがちな「お、おーっ!」。どう見てもネズミ講っぽいタイトルですいません、という挨拶からはじまったセミナーは、A4ノートに8ページものメモになりました。
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1:マネースクープ・・・・コピーライターのお金のぶっちゃけ話
昔は、コピー1本1,000万円と言われていた。もちろん1本書いたらすぐ1,000万も請求できたわけじゃないけど、雑誌1誌ごとにカウントして足し上げて数百万を請求できた時代もあった。
じゃあ、若いコピーライターたちはなぜ皆貧乏なのか?
書けるものは社内で書きます、という広告主が増えている。
そんな時代で、タレントコピーライターと手間賃コピーライターの二極化が進んでいる。
コピーライター格差社会の到来。
残された道は、タレントコピーライターになるか、お金がもらえるコピーを書くか。
小霜さんの分岐点
10年ほど前に2、3年、コピー年鑑の審査員をやった。
審査員とは権威の象徴。これで俺もタレントコピーライターの仲間入りかな?と思った。が、翌年、審査員を辞退。大変な時期もあったが、お金になるコピーを書きつづける道を選んだ。
お金になるコピーとは?
・商品価値を高めるもの
・独自のアイデアがあるもの
・努力の跡が見えるもの
逆にこの3つが感じられないものには人はありがたみを感じない。お金を払おうと思わない。
ネット社会、SNSが台頭する社会になって言葉が増えた。「うまいこと言う人」はTwitterにいっぱいいる。面白い一般人のなんと多いことか。それが可視化されてすぐに伝播・共有される時代で、コピーライターは、それとは別の軸、上記の3つで闘うこと。
例えば、幼児にとってiPhone 6は価値があるだろうか?
電話ができる、メールができる、と言っても価値はない。だけどタッチ操作に慣れた幼児にYouTubeが見られるよ、と言うと価値が生まれる。つまり価値があるかどうかは「伝え方」によって変わってくる。「ターゲットが価値を感じるように」表現してあげるのが広告コピー。
翻って、若手が書きがちなのは説明コピー、大喜利コピー。商品を言い換えただけで価値を上げていない。それはターゲット不在のまま書いているから。
2:生け贄の山羊・・・・若手と小霜さんのちがい
iPS細胞技術の実用化を進めるヘリオス社と、ライティングを小霜さんから頼まれた若手の方(生け贄のヤギさんとして登場)の承諾を得て、ケーススタディの紹介。複数回にわたるヤギさんからのコピー提出と小霜さんの的確なフィードバックがいちいちリアル。
例えばヤギさん1回目の提出コピーは「要約しただけ」、「なんとなく周辺にある言葉を組み合わせただけの組み合わせコピー」。ヤギさんの証言「そんなに組み合わせが好きならLEGOに就職しろって言われました」。ひー。
そんなやりとりの中で見えてきた、「若い人と小霜さんのちがい」について。
▼若い人・・・・・・すぐ書きはじめる
▼小霜さん・・・・すぐ調べはじめる
「僕は商品にまつわる本を1〜2冊は買って読む。若い人はネットで調べるくらいのことしかやらない。インプットの量が一般レベルなのにすぐ書きはじめるから限界に達するのも早い」
▼若い人・・・・・・実績:金の鉛筆
▼小霜さん・・・・実績:30年
「コピーライター養成講座でもらう金の鉛筆はいっそただの鉛筆にしてほしい(笑)。金の鉛筆もらって「私は書ける!」と勘違いしちゃう人が多い。むしろ僕は30年やってて「俺は書けない」からスタートする。だから調べるし悩むし検証するし。「俺はダメだ〜!」から這い上がる力が書く力になる」
▼若い人・・・・・・独自の表現をつくろうと考える
▼小霜さん・・・・独自の意見をつくろうと考える
「オリジナルな意見があるものに人は振り向く。表現はその後に考えればいいのに、若い人は表現至上主義」
▼若い人・・・・・・「業界」に興味をもつ
▼小霜さん・・・・「世の中」に興味をもつ
「あのCMをつくったのは誰々さんだとか今の広告のトレンドは何々だとかよりも、商品の生まれた世の中の背景や時代の空気に興味を持っている人の方が意見も表現も豊かになる。学生時代に広告研究も立派だけど、若いときに恋愛で失敗していない人に人間の恥ずかしい面が書けるかな」
▼若い人・・・・・・言葉をつくる感覚
▼小霜さん・・・・売り物をつくる感覚
「まとめると、こういうこと。広告には目的がある。目的を達成するために僕らは言葉を使う。売り物をつくる感覚になれば説明コピーも大喜利コピーもダメなことは一目瞭然」
コピーライターにとっていちばん大事な力は、「聴く力」。
思いがけないことは、思い込みからは書けない。
たかだか2、30年と少しの自分の先入観を捨てるために、「聴く」。「調べる」。
3:小霜はこわくない(PR)
ご自身の会社で無料広告学校を主宰されている小霜さん。いわく、「僕は1年かけて生徒に『君たちは書けないのだ』と教え込むんです。だから怖いって思われちゃうのかな・・・・でも、怖くないですよ」
あっという間の90分。
最後に僕も質問させてもらいましたが、丁寧に答えていただき、怖くなかったです。
コピーだけでなく広告全般の教科書としてロングセラーになってほしい(って僕が思うのも変だけど)本です。100万円を狙うなら、年に1回の公募だけじゃなくて日頃の仕事でもきちっと勝負しよう。その方が手っ取り早いぞ。
小霜さん、ヤギさん、編集の佐藤さん、ありがとうございました。