舞台『春琴』を観劇。
〜谷崎潤一郎『春琴抄』『陰翳礼賛』より〜
演出:サイモン・マクバーニー
出演:深津絵里、チョウソンハ/立石凉子/内田淳子、望月康代、麻生花帆、瑞木健太郎/高田恵篤、下馬二五七/本條秀太郎(三味線)
ブラボー!の一言に尽きる。いや尽きない。
心の整理がつかないほど、すごいものを見てしまった‥‥。
光と陰、命を宿したかのような人形(春琴)、それを操る深津絵里(春琴の動作と声)、激高ののちに人形と交錯し、肉体も「春琴」になる深津絵里(度肝を抜かれるシーン!)、さまざまに複雑に形を変える畳、BGMとSEを同時にやってのける三味線、緞帳の向こうに広がる光、緞帳につぶされる三味線‥‥。
「見立て」の舞台芸術が、谷崎文学のなかで遺憾なく発揮されている。
数本の柱が卒塔婆になり、松の葉になり、ふすまになり、階段にもなる。
今までに見たことのない世界。だけど、見覚えのある景色になる。
どうして外国人の演出家が、ここまで日本人の美意識を構築できるのだろう。
暗い舞台の上で、深津絵里の操る人形は彼女と同じ顔をしていて艶めかしい。
ご本人はそれ以上にきれいな女優さんでした。そして、サイモンの類い希なる演出に堂々と応える、正真正銘のプロ。どんなに罵られてもありゃ惚れる。
サイモン氏の舞台は『エレファント・バニッシュ』以来、5年ぶりの鑑賞。
まったく異なる演出でありながら、当時の衝撃が蘇るような時間でした。
世田谷パブリックシアター芸術監督の野村萬斎さんと出演者との
ポストトーク、出演者いわく「サイモンの舞台は毎日が初演」
「初日は稽古場が舞台に代わっただけのこと」だそうな(!)。
まさしくその場限りの、非常に濃密な時間・空間を得た。
ブラボー!