前田知巳さんの「広告の未来」

先日、「宝島」の広告や「UNIQLO」のトータルコンセプトワーク、「amadana」「キリン」ほか数多の広告コピーを手がけているコピーライター・クリエイティブディレクター、前田知巳さんの講義を受講しました。

前田さんとは、幸運にも以前にお仕事をご一緒させていただいたことがあります。僕らWebチームは残念ながらフィニッシュ前に撤退することになったのですが、まさに目の前でトップクリエイターの仕事を垣間見る、貴重な経験でした。その日々を思い出しつつ‥‥

 

この日の講義タイトルは『広告の未来』

仕事で「なるほど!」と唸りたくなるコピーをどんどん発していた前田さんが、何を考えて取り組んでいるのか?混沌とする(と言われている)広告の今と未来をどう見つめているのか?

以下、その発言を僕なりに起こしました。

 

 

代理店よりも先に、クライアントの意識が先行して変わってきている時代。彼らはどれだけ広告媒体を使わずにメッセージを最大化するか、に注力している。

需要が減っているのに高止まりしている広告媒体費を掲げる代理店の体質は、そうとう遅れている。

SoftBankのメディアの使い方は知能犯的。
CMをニュースにして伝播。

 

クライアントの意識が変わると、クリエイターの使われ方も変わる。たとえば佐藤可士和さん。クライアントの意識変容に応える作り手

 

必要なのはコミュニケーション力。だから広告表現はなくならない。

 

今までは伝える内容が決まっていた。→オリエンがあった。今は、企業がオリエンできない時代。商品は横並び。でも発信はしたい。

今、パワーのある企業はベンチャー系やオーナー系が多い。→統率力。たとえばApple、ユニクロ、SoftBank。彼らは「こうすれば世の中がよくなる」というイメージを明確に持っている。それは、他がやったことのないこと。彼らは前例のないことを考えている。前例がないだけに、彼らはコトバで悩む。社内でイメージ共有したいのに。次に、世の中に伝播したいのに。(この順番が大事)

そこでトップは広告屋に招集をかける。延々と思いや考えを語り、「で、これを1分で伝わるようにしてくれと注文する。

 

求められるのは、

★正確に伝わるコトバ
★簡潔に伝わるコトバ
★モチベーションになるコトバ

 

今、広告媒体は苦しいが、広告表現の能力は逆に求められている時代。つまりメソッドでは生き残れない時代。メソッドは転写できる。人を動かすのは「価値観」

すぐれた企業はとっても人間くさい。Apple=ジョブズの価値観。彼らの価値観、美意識、人生観を反映させたコトバを引きずり出し、世の中と照らし合わせ、同化させてみる。その行き来を何度も検証する。最終的に「広告」ではないかもしれないが、研磨されたコトバが待たれている。

 

研磨されたコトバの組み立て方

 1)★人の目に留まるコトバ。
(網膜までは行くが、まだ脳には達していない)

 2)★共感させるコトバ。
(全員ではなく、結果的に3割が共感してくれればOK)

 3)★人を動かすコトバ。
(人はなかなか動かない!動かした例:ヒートテック)

 

全員や9割に伝えるなんて嘘。
3割4割に届くってスゴイ。を自覚すれば楽に書ける。

ヒートテックというコトバの発明→肌着が科学になった。
それは、新しい段階に格上げするということ。

 

すぐれた本のタイトルって「広告」になってるよね。

例)
『バカの壁』(コピーになってる)←→『脳化社会』(コピーになってない)

例)
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』←→『誰でもわかる会計入門』(シズらない)

つまり、いいコピーの参考は『コピー年鑑』の中だけじゃない。
今の世の中を動かしているコトバを知る。それは世の中を知ることでもある。

 

(繰り返しになるが)
人の気持ちを考えて、
自分の気持ちを振り返り、
その気持ちをコトバにする。

 

以上です。

単純に広告コピーを書くフェーズよりも上位の、トップと膝をつき合わせたコンサル的存在としての作り手という「時代の要請」を含むお話でしたが、その中にはやっぱり広告自体の組み立てに役立つヒントがたくさんありました。むちゃくちゃ考えてるな。たまに読み返そう。

前田知巳さん
オフィシャルサイト
インタビュー記事


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職