「編集者って何ですか?」というストレートな問いかけのスライドが壁に映し出された、2014年師走のTCC(東京コピーライターズクラブ)クラブハウス。
この日はコピーライターの師匠、中村禎さん主宰の「アイベヤ別館」としてセミナーみたいな懇親会みたいな催しが開かれた。ゲストは『宣伝会議』副編集長の刀田聡子(とだ さとこ)さん。1980年うまれ、僕と同い年。
刀田さんは2006年に僕が宣伝会議賞でノミネートされた際に、会社に報告と贈賞式の案内の電話してくれた方で、特徴的な名字だったので今でも記憶しています。
で、刀田さん、「編集者って何ですか?」
以下、現場のメモ書きより。
* * *
編集者とは「世の中に存在させること」。
名刺1枚で人に会える仕事。
出版の世界ではAERAの『現代の肖像』が人物インタビューの最高峰といわれる。相手の過去から現在、周辺人物への取材まで丁寧に追っている。
人物インタビューとは?
→人をひとつの建物のように考える。
私には、魅力的な人はフランク・ロイド・ライトのようなユニークな形の建物のように見える。建物の構造を外から内から把握していく。
インタビューで聞きたいことの大枠
・モチベーション
・そのきっかけとなる過去の出来事
・今やっていること
・現時点の成果、実力
・これから実現したいこと
原稿はカメラワーク(線的なもの)
原稿や言葉はタイムラインをもった線的なものだから、建物のように理解した立体構造を線的な言葉に置き換える。つまり、どのアングル、どの順序で切り取っていくか。魅力的に伝わる順番、理解しやすいスピード、印象的な切り取り方、リアリティのある描写。
大事なのは、「聞いたこと」ではなく「理解したこと」を書くこと。聞いたことだけを文字おこしするだけなら、私がいる意味が無い。
トークショー、対談、座談会などをまとめる時のコツ
→ハイライトのシーンを抜き出して、繋ぐ。
→いちばん面白い部分にストレス無くアクセスできるように。
「つい、しゃべらされちゃった」
「こんなこと、きょう初めて考えたよ」
と取材相手に言われること。
録音はするけど、テープ起こしからではなく、取材ノートから書いてみる。
ノートにメモしている時点で編集は始まっている。大事なエッセンスから拾えるから効率がいいし結果的に濃密になる。
インタビューは1時間1本勝負。
1時間を過ぎると、人は話がループしはじめる。
インタビューしてみたい人
本屋の新刊をチェックして面白い人を見つける。それは半ば習慣。あと、書店の本のタイトルからキーワードが浮かんでくる。本の9割はタイトルで(売れる売れないが)決まる。
『宣伝会議』における、編集者に求められること
★人に好かれること。
取材対象が抱く3つの気持ちに応える。
・話をしていい人か?「どうぞ!」→ 信頼を得る
・俺のこと理解してるか?「もちろん!」→ 事前の下調べをする
・俺の話、面白い?「とっても!」→ 安心感を与える
Q:「盛り上がらない対談はどうしますか?」
→盛り上がらなくてもいいんです。
それは考えながら話してくれているから。静かでぼそぼそ話していることに面白いネタがあることは多い。「面白いですよ!」という態度で聞く。安堵してもらう。
お酒を飲んでいるときの話は、話と話の間が飛ぶ。だから後で記事化するときにあまりいい原稿にならない。それを良しとする、味とするインタビューや雑誌もあるけれど。『宣伝会議』編集部に求められる気質は「真面目」。
* * *
「インタビューは1時間を超えると同じ話のループに陥ってくる」というのは分かる!
「話が盛り上がらなくてもいいんです」というのも、いいなぁ。傾聴するってことだな。
12人という少人数での催しだったため、いくつも質問させてもらい、やはり雑誌に限らず書物とは編集者個人の性格がにじみ出るメディアだなと実感。宣伝会議さん的には求められる気質が真面目というのも納得。
3年前に伺った佐渡島庸平さんのお話や『BRUTUS』西田編集長のお話などを思い出しながら、やっぱり編集者ってフィールドがあまりにも広くて面白い。
「世の中に存在させること」のノウハウを惜しげもなく棚卸ししてくださった刀田さん、素敵な機会を与えてくださった禎さん、ありがとうございました。