「地元の祭の挨拶に来たんですけどー」
という、見るからに怪しげな恰幅のいい男が
夜にアパートのドアをノックしてきました。
「向かいの青木なんだけど、開けてくれる~?」
…おいおい、お向かいさんに青木なんていねーよ。
地元の祭なんてここ五年挨拶されたことねーよ。
そんなに馴れ馴れしく言ってくる人なんていねーよ。
そしてなにより、お向かいさんは「吉田」だよ!
「いや、風呂入ってるんでまた今度にして下さい」
インターホンで応戦したら、「ただの挨拶だからサ」と
理解出来ない返答。こっちは素っ裸という設定なのに。
(実際、風呂上がりでトランクス一丁だった)
だいたい、ただの挨拶ならインターホンで言えよ!
と突っ込みたかったが、アッチの人だったら恐いので黙っていた。
次の手を考えていたら、隣の住人に「地元の祭の挨拶で…」
と、あっさりターゲットを変えていた。
ゆっくり受話器を置いた。
本当に祭だろうが詐欺だろうが、
人様に払うお金なんてありません。