蜂と父

いよいよ、スズメバチがウチのベランダにも出没。
洗濯物に染みこんだ水を吸っているものと思われる。

 

実家の天井裏に、スズメバチが巣を作ったことがある。

最初に異変を察知したのは僕だった。
中学校からの帰り、自転車からわが家を見た。
二階の屋根で、黄色い物体が大量に行き来している。

それを家族に報告した。早速、駆除に出た。
庭の裏に回った。巣は天井裏にある。屋根の隙間が、
奴等の出入り口になっているのが一目で分かった。

父が掃除機を背中におぶって、飛来してくるハチを
丸ごと吸い込もうとした。掃除機の白いパイプが、
すごい勢いで体長五センチはあるハチを吸い取った。

父は言った。

「いけるぞ」

傍らで見つつ、上空でハチの大群がパニックに
なっているのが分かった。怒りで我を忘れている。

案の定、地上のぼくらに飛んできた。
何の武装もしていなかったことが逆に幸いして、
僕はいち目散に逃げることが出来た。助かった。

が、父は、頭を刺された。背負っている掃除機を
投げるように外し、急いで母を呼ぶ。
そのまま帰らぬ人となった。じゃなくて。
病院へ直行し、一命は取り留めた。ていうか普通だった。

父の努力とアイディアも虚しく、
駆除専門の人が来て、天井裏から信じられない物を
おろしてきた。20inchブラウン管TVくらいはある。
両手で抱えるのは無理かもしれないほどの、黒い塊。
その特大の巣には、膨大な数の成虫と幼虫がうごめいていた。

傍らには、ぼろぼろになった掃除機が、あった。

(以上、プロジェクトXっぽく読んで)

そういう経験上、僕はスズメバチが恐いのだと思う。


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職