映像の中のプロジェクションマッピング

先日、東京駅で行われたイベントで初めてプロジェクションマッピングを見た話を書きましたが、その直後にTwitterで話題になっていた動画がこちら。

 

[vimeo http://www.vimeo.com/45569479 w=580&h=326]

 

実はもう2ヶ月も前に公開された作品で、「なんでまた今になって取り上げられてるんだろう?」と思いましたが、きっと東京駅の件でプロジェクションマッピングという手法自体に注目が集まり、再度話題になったのかと思います。

 

巨大建築など、投影するスクリーンのフォルムと質感を借りて新たな世界を描き出すタイプのプロジェクションマッピングがオーソドックスなもの(3Dプロジェクションマッピング)だとすれば、何もない立方体の中に世界を映して自由な角度で箱庭を映し出すこれは応用編の2Dプロジェクションマッピングと言えるのではないでしょうか。

そこで思い出されるのが、ミシェル・ゴンドリー監督のこの作品。

 

 

かつてのアバンギャルド過ぎた日々を引きずる男の心象風景。それが、雑然とした家そのものをスクリーンにして、文字通り「現実とだぶって」いるところを見せてくれます。

手法は3Dタイプですが、部屋という立方体の中で展開するさまはWillowの箱庭PV(1個目の映像)にも影響を与えているんじゃないか?と思ったりもします。

 

[vimeo http://www.vimeo.com/46309947 w=580&h=326]

 

こちらはそのWillowの箱庭PV(って称することにしますw)のメイキングムービー。

“物理的には何もないセット”の中でいかに自然の物理法則に沿った動きをしているかのように見せる演技の試行錯誤が微笑ましいです。いや、演じるボーカルの人は超大変だな!と畏敬の念すら覚えます。

 

ここで(というか本編映像でも)ひとつ、このミュージックビデオの発明だと気づくのが、ベルトコンベアの存在。この床に埋め込まれた装置があることで、真っ白な箱の中にいながらにして外へ出て、歩き、階段を駆け下り、さまざまなシーンと遭遇することが自然な動作で行えています。

そこで思い出されるのが、ジョナサン・グレイザー監督の名作。

 

 

1997年、当時僕は高校2年生でしたが、その年のMTVビデオミュージックアワードで4部門受賞するほどのインパクトがあったこの作品の見どころは、なんといってもスライドする床とそれに翻弄されることなく動き回るJey Keyの身のこなし(実際には床ではなく壁が動いているそうですが)。

部屋という限られた空間が、動く舞台装置によって無限の広がりを見せる‥‥という意味では、Willowの箱庭PVと非常に似たものを感じます。どちらも茶室のような限られた空間に宇宙的な広がりを見いだす「茶の湯」の世界観を想起させると言ったら言い過ぎかな。

 

最後に、「何もない立方体に世界を映して自由な角度で箱庭を映し出す」タイプのプロジェクションマッピングの素晴らしいCMとそのメイキングを貼っておきます。

このCMは商品である靴とそれを履く人以外のモチーフをすべて映写しています。2009年のキャンペーン。なので手法としてはべつに新しくはないんですよね。あとはプロットと描き方がどれだけ秀逸か。

まあ、手法の新旧で評価を決めることほど愚かなこともないと思いますし。ただこの2009年のクリエイティブは2012年の日本のテレビで流してもじゅうぶん話題になる強さがあります。

 

[vimeo http://www.vimeo.com/22142342 w=580&h=326]

 

気が狂いそうなほど緻密な作業だけど楽しそうだなぁ。


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職