クラウド アトラス

映画『クラウド アトラス』を観た。

 

 

一切の前情報なしに映画館のシートに座ると、19世紀から24世紀までの過去・現在・未来をめまぐるしく行き来する6つの物語が繰り広げられた172分間。ピクニックだと思って出かけたら本格的な登山だった‥‥というくらいに体力を消耗したけど、気づけば眼前にいい眺めが広がっていた、みたいな。面白かったです。今のところ今年No.1。

公式サイトに紹介されていたシノプシスがこの映画をずばり言い当てていたので(そりゃそーだ)、そのまま紹介。

 

国や人種、性別の境界線を超えた人間の本質を表現するために、同じ魂を持つ複数の人物を一人で演じるという、俳優の真の実力が問われる大胆かつ画期的なキャスティングが実行された。

トム・ハンクスに続き、
この挑戦を受けて立ったのは、ハル・ベリー、スーザン・サランドン、
ジム・ブロードベントら、アカデミー賞受賞の演技派スターたち。
さらにヒュー・グラント、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジム・スタージェス、ベン・ウィショー、韓国が誇る若手女優ペ・ドゥナなど、国際色豊かな豪華キャストが心と力を合わせ、壮大な叙事詩を紡ぎ出した。

ヒューマンドラマ、近未来SF、
アクション、ミステリー、ラブストーリー

—— いま『クラウド アトラス』の称号のもと、
全てのジャンルがひとつになり、
かつてないエンターテインメントを生みだした。
そして映画というジャンルさえも軽々と跳び越えて、
観る者の魂にダイレクトにつながるのは、
「私たちは何のために生きているのか?」という、
人類の永遠の疑問への答え。

天才監督と豪華キャストの手で、
いま、人生の謎が、解けようとしている ——

 

はい、というわけで、この映画は手塚治虫の『火の鳥』だな、と思いました。
(人によっては『マグノリア』だと言う人もいるかもしれません)

「同じ魂を持つ複数の人物を一人で演じるという、大胆かつ画期的なキャスティング」も、ヒゲ親父が時代や設定を超えていくつもの役を一人でこなすような、手塚漫画ではよく見る「スター・システム」。配役によってはかなりギャグに走ってるものもあって、それも狙いだと思いますが、いったいどこを狙ってんだ?とつっこみたくなる要素を入れちゃうあたりも、手塚治虫的な遊びだなぁと思ったりするのです。もっと意味のある演出意図があるのかもしれませんが、もしあったら知りたいなぁ。

また、「6つの物語が交錯する壮大な叙事詩」のようで、直接的には交錯していなかったり、6つ全部が壮大じゃなかったり(2012年パートがいちばんしょぼい)とチャーミングなところもある。観終わってみると、むしろこのアンバランスさ、チャーミングさがこの映画の旨味じゃないか?と思えてきます。

歴史に残る壮大なことや、そうでないこと。その両面を同じ役者、共通のセリフ、あと忘れそうになるけど意味深な共通のあざが繋いでゆく。このあたりをチャーミングと捉えるか支離滅裂と捉えるかで賛否が分かれそうな映画ではあります。

この映画のもうひとつの魅力は、なんといってもペ・ドゥナ演じるクローン人間「ソンミ451」の群を抜いた存在感。是枝裕和監督の『空気人形』でもかなしい人形の役を完璧に演じていたけれど、今回はそれを上回る、厚みのある演技!存在が切ない。思い出すだけでも泣けてくる。

cloudatlas

壮大すぎてともすればついていくのが大変な物語(途中で帰っちゃうカップルもいました)を束ねるのは、『マトリックス』3部作のウォシャウスキー姉弟と『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァ監督。数々の映画のオマージュでできた『マトリックス』のさらにオマージュとも取れるシーンも含まれており、あの映画にハマって19にして中2病を再発させた身としてはニヤリとしてしまいます。

くどいですが、手塚治虫先生が生きていたら気に入った映画じゃないかと思います。
小学生の頃に観た『トータル・リコール』(オリジナル版)くらい変な映画。

『クラウド アトラス』公式サイト

好きです。


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職