女性写真家の梯子

恵比寿に行く。

東京都写真美術館で
日本の新進作家展vol.7「オン・ユア・ボディ」
写真新世紀東京展2008を観る。

まず、「オン・ユア・ボディ」。
今年、木村伊兵衛写真賞を獲った志賀理江子の
作品が他を圧倒する凄みでもって静かに攻撃してくる。
もう、この人の個展でいいじゃないか!と思った。

闇に水揚げされる網と、なにか獣の
皮を剥いだ顔の写真は夢に出てきそう。
いや、夢の中のようでもある。

人々を不安に陥れる志賀さん(同い年!)の作品に最も
安心感があるという、展覧会としてはいびつだった気が。
(高橋ジュンコの映像インスタレーションは酷かった)
 
 
不穏なイメージに酔いながら地下へ移動。
気を取り直して新世紀展を4〜5年ぶりに鑑賞。

今年は優秀賞受賞者に母校の後輩や
ゼミの先生を通じて会ったことのある
元木みゆきさんもいて、薄いなりにも
接点のある人たちの活躍に出くわす。

個人的には元木さんの「ZOE」が良かった。
牛が食肉処理場で“加工”される様を撮った作品。

家畜の屠場へは仕事の取材で行ったばかりで、
彼女の写すものが、取材先で僕が見た景色以上に
せい惨かつユーモラスで興味深かった。でもその
ユーモラスな部分の居場所が定まっていなくて、
元木さんの良さが落ちきっていない気もした。

生意気なことをいえばセレクトでもっと絞り込んでも
いいかなぁと感じたり、合間に入る日本語が意味深で
うるさいなと思ったりもしたけど、力のある写真群に
恐れ入った。“再会”にうれしくなる。

他の人のはだんだんどうでもよくなった。
中には素敵なポートフォリオもあったけれど、
公募展に集まったものだけに、いるだけで疲れる。
僕がトシを取ったということかもしれない。
 
 
恵比寿を出て、品川の原美術館へ。
写真家・米田知子展「終わりは始まり」を鑑賞。

静かな風景の連作に、今日一日、目に飛び込んだ
有象無象のイメージの群れを浄化する思いに駆られる。
洗い流すのは勿体ないけど、ま、いっか。という気に
させられる。イオウ温泉に入った後のシャワーの気分。

友だちに頼まれた図録を買って帰宅。


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職