Worldwideということ

ここ最近買ったゲームを思い返すと、
『グランドセフトオート』とか『バトルフィールド』とか、
あきらかに洋ゲー(海外産のゲーム)が増えてきています。

 

バトルフィールド3

 

これ、ムービーパートではなくリアルタイムに描画されているゲーム本編の画面なんですよ。かつては洋ゲー=クソゲーの代名詞でしたから、この20年ほどでグラフィックは恐ろしく進化したわけです。

それってマシンの進化でしょ?と思われるかもしれませんが、そこに国の差が生まれているのです。日本のゲームはここまでリアルに描き切れていません。ムービーパートは美麗だけどゲームパートになると微妙になりがちです。

ゲームの面白さはグラフィックで決まるわけではありませんが、最近の優れた洋ゲーはムービーからゲームに至るまでシームレスでハイテンションな没入感を提供しています。しかもフィールドがものすごく広大で自由。ゲーム本来の、キャラクターを操り、なりきる醍醐味があります。

見逃せないポイントが、ハリウッドの存在

映像としてのリアリティを増すほどに、ゲームは映画の演出を貪欲に取り入れてきました。それ自体は国産ゲームでもメタルギアや鬼武者、FFシリーズなどでも見て取れますが、洋ゲーはついにハリウッドの監督を起用する時代になってきました。『Need For Speed』のトレーラーは『アルマゲドン』『トランスフォーマー』のマイケル・ベイがディレクションしたとか。

 

Need For Speed

 

また、世界中で2,000万本以上を売り上げる『Call of Duty』では『ダークナイト』や『インセプション』のハンス・ジマーが作曲を担当。もちろんフルオーケストラです。

 

こういうハイカロリーな制作費(40億円とも)がかけられたゲームを、制作者たちは本職の軍人から銃の扱いをレクチャーしてもらいながら超リアルに作り込んでいるのです。

それでも見返りがあるのは、ヒット作は全世界で2,000万本以上といわれる世界規模の売上げ(最初の週だけで489億円!)。その点もまさにハリウッド方式。それゆえにオリジナリティの高いゲーム(『塊魂』や『ワンダと巨像』など)は生まれにくい気もしますが。

 

最近、この「世界戦略」が身近に溢れとんなー、と感じることが増えました。
世界で勝負するプロダクトが僕らの生活に浸透してきたなと感じるのです。

たとえばiPhone、
ダイソンの掃除機、
ルンバ、少女時代。
そしてGoogle、Twitter、Facebook、Amazon。

これらには、世界で戦うための高品質とアイデアがあります。
昔は日本がアイデアだけ海外から輸入して品質で後出しじゃんけんをして勝つパターンでしたが、表面的な真似では追いつかないところまで来てしまった印象です。

 

逆に日本発のものが海外で受けている例もたくさんあります。
初音ミクは北米LIVEを成功させていますし、AKBもPerfumeも今やYouTubeを通して世界中にファンが存在します。アニメは言うまでもなく。ハリウッドセレブが買って帰るというウォシュレットもそうでしょう。

ただ、これらはワールドワイドに売り込んでいくことが前提にあったわけではありません。インターネットなどを通して世界に放流されたときに、たまたま「見つけてもらった」もの。よく言えば、その方が「強い」のかもしれません。

 

「日本はそこそこに市場が大きいから海外で勝負しようという狙いがない」とは、K-POPとの比較で言われることです。その点、K-POPは本国の市場人口が圧倒的に小さいので、あらかじめ海外戦略ありきで人材育成すると。だから英語も日本語もスクールでたたき込みますし、売り出す国によって曲調やグループの世界観まで変えます。

このような育成というか助走ありきの海外進出が、日本でも増えてくるんじゃないかと思います。

携帯ゲームの世界ではそれが進行中のようです。グリーの田中社長いわく、ガラケーからスマートフォンへの転換期である今、海外売上比率を8割にすることが目標だと日経で語っていました(ちなみに任天堂の海外売上比率は86%だそう)。会員数6億5,000万人の中国の携帯ゲーム大手と業務提携を結んだのもその一手でしょう。

 

洋ゲーをそれと意識せずプレイしたり、少女時代をふつうにiPhoneで聴いたり、飲み屋でルンバの自慢をするクラスタが必ずいたりする2011年の今、

「日本は1つの市場に過ぎないという認識に変えなければいけない」

と話すグリー・田中社長の言葉はまさにその通り。

家庭用ゲーム機が売れない時代です。冒頭のハリウッド式ゲーム会社もスマートフォンへとプラットフォームを移してくるでしょう。そうなると市場は最初から「世界」です。スマホのアプリに世界進出という考えはありません。「国内・海外」の2軸でもなくて、あらかじめ単一の世界がマーケット。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の議論が白熱していますが、どのような結果になろうと関税だけで国内市場を守れる仕組み自体が崩壊してきているのだと思います。

じゃあ僕たち日本人がつくるものは外国用にローカライズされているべきか?日本の良さを追求すべきか?‥‥と戦略を練る以前に市場の拡大が激しくて、頭では理解しているつもりでも身体が追いついていないのかもしれません。

 

こうなってくると商品のネーミングの考え方も
変わってくると思いますが、その話はまた今度


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年 武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業。デジタル系広告制作会社を経て、2017年〜広告会社にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職