コピーの今とこれから_3/3

TCC(東京コピーライターズクラブ)50周年特別企画のトークショー、『コピーの今とこれから』レポート、最終回です。

 

udon谷山さん:今年、「うどん県」っていう言葉が流行語大賞にノミネートされたんですね。でもTCCの新人賞には入らなかった。1票差で落ちちゃったんですよ。おそらく、「うどん県」って上手っぽくないんですね。テクニカルじゃないというか。でも世の中に広がったんですよね。

秋山さん:あれだけ見るとピンとこない。現象として見ないと。レディー・カガの方がまだピンとくるね。

谷山さん:レディー・カガも新人賞に落ちたんです。

秋山さん:あれも入ってないの?

谷山さん:入ってないです。

佐々木さん:うどん県とレディー・カガを落としたのは今年のTCCの汚点‥‥。

谷山さん:そこまで言いますか(笑)

佐々木さん:まちがいなくヒットしたし、話題になりましたからね。今後はいろんな県が「うちもうどん県みたいなのやろうよ」とか言うのが容易に想像できますし。だから来年に敗者復活賞をあげるとか。

谷山さん:広告の言葉が流行語大賞に入ること自体、最近はすごく少ないですよね。

佐々木さん:選び方だと思うんですよ。

何年か前に、キンチョーで「つまらん!」ってのがありました。あれは「つまらん!」ってキャッチフレーズはないんですけど、CMの中の1フレーズが鋭かったからその年のグランプリを獲ったんですね。だから言葉の立ち方が大事というかね。

 

佐々木宏さんのCM

谷山さん:では秋山さんに選んでいただいたCMをお願いします。

秋山さん:隣に座っている人ので癪なんだけど‥‥(佐々木さんを見ずに)。

秋山さん:僕はね、信長と秀吉っていうのが時代性だと思う。

谷山さん:それは今の時代に信長や秀吉のような人物が必要であるという?

秋山さん:それほど深い意味はないよ(笑)。シナリオ的に優れていると思った。

秋山さん佐々木さんのつくるCMは、未来にくる広告のインフラをつくっている気がする。佐々木宏のつくる広告の分析をすると、それは、未来につながる通信になるんじゃないか

佐々木さん:かっこいい‥‥よくわからないけど‥‥(会場 爆笑)。でもあのー、そのとおりですね(キリッ)。‥‥僕はもともとテレビ局に行きたかった人間で、テレビ業界に行けなくて電通に入って挫折感を味わって。しかも、そこでもCMやグラフィックに行けずに6年間、新聞・雑誌局にいながらクリエーティブを遠巻きに見ていたんですけど、自分でそっちをつくるようになって自分のつくったものが世に出たときに、ものすごく嬉しかったんですよ。で、いま58歳なんですけど、まだまだ全然やり足りないんですね。好きでしょうがなくて。

谷山さん:はい。

佐々木さん:好きでしょうがないのは理由があって。トヨタやサントリーやソフトバンクに就職しようとすると大変だけど、そういう会社と部分的にだけど関われるし、その業界の「今」と接するし、「これから」とも接するし、そういう中で言葉をひねり出したりCMを企画したりするのがめちゃくちゃ面白くて。それが1社だけだとちょっと飽きると思うんですけど(笑)、いくつかの会社を担当できるのもよくて。贅沢な話だと思う。大変だけど面白いんですね。

 

秋山晶さんについて

1968年から今日まで延べ40年にわたり、毎月女性誌に掲載されているキユーピーマヨネーズの広告のコピーライティングを手掛けていることでも知られる一方で、他にも1982年に大塚製薬から発売され、現在では同社の代表的製品として知られる「カロリーメイト」や「ポカリスエット」などの発売当初のキャンペーン広告、またキヤノンから発売されたロングセラー一眼レフのAE-1や、パイオニアのコンポーネントカーステレオ、「ロンサムカーボーイ」の広告キャンペーンを長年に渡って担当していたことでも、その名を知られており、70歳を過ぎた現在も第一線でコピーを書き続けている。

(Wikipedia「秋山晶」より)

佐々木さん:秋山さんは複数とはいえ、ひとつの会社を長く担当されてますから、もうマヨネーズのコピーは出尽くしてるんじゃないか?というくらい書かれていると思うんですけど、それでも秋山さんのキユーピーの広告からまだまだ言葉が出そうなのは、それだけこの業界が、発想が豊かな源がたくさんあるんですね。

佐々木さん:僕は、上手いコピーを書くのは先輩方がやってこられたので、そこはあきらめたんです。まだコピーもなんにもないところで、人が「大変そうだな〜」って近寄らない仕事をやって、ぜんぶ引き受けたいって思ってるんです。で、どうせなら全部やらせてください、って言いたいタチなんです。秋山さんに「インフラ」って言われると恐縮ですけど、僕は広告には力がある!って思う方で、かつて日本を統一した信長と秀吉がCMで東北を巡ったり、サントリーがみんなで歌を歌ったりをやってきたんですね。

秋山さんがずっと手掛けられているキユーピーマヨネーズの広告が僕は好きで。中でも「料理は高速へ」というタグラインの『SPEED!』が好きなんですけど、秋山さんはもう当然のごとくTCCで毎年賞を獲っていて、毎回コピーがトレンディなんです。すごくミーハーで、いつも時代の旬をつかんでいて、じつはワイドショーをいっぱい見ているんじゃないかと思うほどで(笑)

秋山さん:(笑)

佐々木さん:ゴマすってるわけじゃなくて、何歳になっても若々しくて。これ、ふつうじゃないんですよ。ふつうは歳とともに枯れていきますから。

秋山さん:自分のことは分からないですね。佐々木さんのことならよく分かるんだけど。飼ってるネコのことでさえ分からないですから。ネコといえば、今年の新人賞の「捨てたんじゃない。あのひとは、逃げたんだ。」っていうのは感心しました。これはすごいですよ。

tcc

谷山さん:うちは犬で‥‥

秋山さん:犬は夏に、犬小屋の下で自分の地下室を掘るのが大好きなんです。そこから上がってくるところは、地下のガレージからベンツが上がってくるぐらい力強いです。

谷山さん:その表現がかっこよすぎますね(笑)

佐々木さん:秋山さんはふだんの会話もぜんぶキャッチフレーズみたいなんですか。下世話なこととか下品なことは言わないんですか?

秋山さん:下品なことは黙って考えてます。

 

モチベーションについて

谷山さん:なんだか悩み相談みたいなんですけど、僕、仕事の最初の頃は「よーし、やるぞ!」と思うし、いっぱいコピーも書くんですが、飽きっぽいのでキャンペーンの2年目3年目はモチベーションが徐々に下がっちゃうんですよ。秋山さんはキユーピーのお仕事を何十年もやってらして‥‥そういうのはないですか?

秋山さん:作家の気分とか、アーティストの気分とか、クライアントの気持ちになってたらダメです。自分が株主だと思えば飽きないです。それも大株主に。株主というのは、目先の収益よりも、会社がいつも新しく見えないとダメだと思っている。

谷山さん:なるほど‥‥同じことをしていたら収益も下がりますしね。「ガス・パッ・チョ!」を書いてるとき、ガス屋のおっちゃんの気持ちにはなって書いてたけど、株主というのはなかったですねえ。でもそれは若手に言っても分かりづらいことかもしれませんね(笑)。いやー、すっごい勉強になりました。

秋山さん:なにいってんの(笑)

佐々木さん:僕は、株主じゃないんだけど、「どんなプレゼンの現場でも社長に対してプレゼンしているんだと思え」と言われたことがありますよ。時間が無い社長がそこにいると思って、その1行で変わりますよ、と提案をするんだと。

それでいうと、僕らが必死こいてカンプつくったりコンテ書いたりしてるときに秋山さんは廊下で社長にポケットからメモ出して「これがいいと思いますよ」って見せて決めるっていうのが、カッコイイなぁ!って思ってました。仲畑さんも社長にしかプレゼンしないってかつては言ってました。それはもちろんスターだからできるんだよ!と当時は思ってましたが、でも、コピーライターが時代を引っ張っていくんだと思うと、「この1行で御社は変わりますよ!」って迫れるほどじゃないとダメなんですよね。

 

TCC50年のなかで好きなコピー

谷山さん:秋山さんが選ぶ、TCC50年の中のベストは何ですか?

秋山さん:最高とか最善ということではなくて、好きなのは「服を脱がせると、死んでしまいました。」WORLDっていうアパレルメーカーなんですけど、書かれたのは仲畑さん。

谷山さん:僕もこれ、ものすごく印象に残った言葉だったんですけど、PARCOのコピーだと思い込んでました(笑)

秋山さん:より直接的ですよね。

佐々木さん:僕が選んだのはチョコラBBの桃井かおりさんがCMに出られていた「世の中、バカが多くて疲れません?」っていう、これも仲畑さんのコピーなんですけど。これが痛快で。

でも「バカとはなんだ!」ってクレームが来て放送禁止になったんですね。そのあとすぐに「世の中、お利口が多くて疲れません?」が出たんですよね。「バカ」を「お利口」に変えることでより際立ったというか。その切り返しが見事だった。

ふつうなら「ほんとにバカが多くてお蔵入りになってさあ」って居酒屋で愚痴って終わりになるところなんですけど、この超一流のコピーライターは「だったらお利口、で」って返すという、この「だったら」をつねにストックしておくタフさが必要で

 

広告で世の中を変える

佐々木さん:広告業界は、不況のせいとか、災害のせいで休むんじゃない。むしろ不況だからこそ広告の出番だろう、と。震災で日本中が何もできなかった状態からでもCMにできることはある、広告で日本を変えることはできると思っているんです。あの3.11のとき、テレビ局は不眠不休で動いていたのに、広告業界は自宅待機っていうのが、もうね。テレビに憧れていた人間としては。災害のせいにしたり不況のせいにしたりして何もしない、できないんじゃなくて、だからこそコピーライターがなにかすべきだろう?と。58歳の僕はそろそろ盆栽とかしてるころかもしれませんが。

谷山さん:絶対そんなことないでしょ(笑)

佐々木さん:でも本気で、たとえ「あいつ何いってんだ?」と言われても、広告で世の中を変えられる!って思ってるんです。糸井さんの「おいしい生活」で時代の価値観が変わったり、仲畑さんの「おしりだって、洗ってほしい。」でウォシュレットじゃないとヤバイって思えたり、秋山さんの「男は黙ってサッポロビール」がサントリーモルツとは別の価値観を示して一世風靡したり、こういう極めつけになる言葉をみんな考えようとしていないからスギちゃんの「ワイルドだろう?」に負けちゃうんです。クライアントも「キャッチフレーズっていいね!」って思ってもらえるようにしていきたいですね。商品のおべっかばかり書いて「クライアントもお喜びです」なんて言ってたら広告業界は沈没します。だから「今年の漢字はこれです」とか清水寺のお坊さんに任せてる場合じゃない。ああいうものこそコピーライターがやらなきゃとホントに思ってる。

sapporo

谷山さん:この当時は流行語大賞はなかったと思うんですが、「男は黙って」ってフレーズはみんなが言ってた記憶がありますね。

秋山さん:昔の話はもういいんじゃない?

谷山さん:すいません(笑)

 

窓際族(ウィンドウズ)

佐々木さん:僕は懲りない人間で。わりと長くつづくシリーズものを手掛けてるんですね。宇宙人ジョーンズは7年目、ソフトバンクの犬のお父さんは6年ちかくやってて。ただ、継続は力なりって言葉は好きじゃない。おじいさんが言いそうな言葉で。秋山さんはずっと続いてるけどワンパターンじゃない。トレンディなんですね。「長くやってますね」じゃなくて「よく長いこと手を変え品を変えやってて飽きないですね!」って言われる方がいい。で、ちゃんとモノが売れる広告。僕は企業広告担当みたいに思われてますけど、企業広告からキャラクターが愛されて、かつモノを売ることもちゃんとやる。そういうつもりで、「ReBORN」でトヨタの新しく出るクラウンのCMをつくりました。ドラえもんという未来からのReBORNと、秀吉の過去からのReBORNで‥‥っていうと「コラボが好きなんですね」で片付けないでほしいんですけど(笑)

谷山さん:この「権力より、愛だね。」ってコピーは誰ですか?

佐々木さん:前田知巳くんですね。

あ、もう1個紹介したいんですけど、昔、PC専門誌のコピーで「窓際族(ウィンドウズ)」というのがあって。これは賞を獲っていないんですが、ユーモアがあって励ましにもなってて上手だなって思ったんです。誰も言われて嬉しくもない窓際族を「ウィンドウズ」と言い換えるこの洒落っ気にTCCは賞を与えなかったのはいかがなものかと。

谷山さん:20年くらい前のコピーですけど、そのときも佐々木さん、そう言ってましたよね。これ、博報堂の僕の弟子が書いたコピーです。

秋山さん:実感としてわかりますね。仲畑さんの前に10年間、僕はTCCの会長をさせてもらいましたが、最後の2年間は本当に、窓際というのはこういうことかと。することが本当にないんですよ。原宿のクラブハウスの窓際にいたので、よくわかります。

今日わかったことは、佐々木さんの「テレビに勝ちたい」という気持ちが結果としてCMに出ていますね。それは無意識にかもしれないけど、「人を動かそう」、「個人個人を動かして、世の中を動かそう」というのがあるんじゃないかと思うんです。それでコマーシャルが成功しているんじゃないかと。人を動かすのが未来の広告じゃないかと思うんです。

佐々木さん:ありがとうございます。

 

愛読書

秋山さん:最後に、あと2分いいですか。僕の好きな本を2冊紹介します。

ひとつが松家仁之さんという『考える人』の編集長で『火山のふもとで』という小説。

設計事務所に入った若者の1年間の話です。その中で感動したのが、満潮の波が寄せてくるような文章があったということです。コピーとは直接関係ないかもしれませんが、すぐれた現代の文章を読むことが大事だと思っています。本の中で「大事なことは、聞き逃してしまうほど平凡な言葉で語られる」という1文がありますが、そのとおりの小説でした。海岸でオゾンに当たったような気持ちになりました。夏の小説なんですが、秋のような小説でした。

もうひとつは小野田隆雄さんの『職業、コピーライター。』です。

「ゆれる、まなざし」 「夏ダカラ、コウナッタ。」 「恋は、遠い日の花火ではない。」 資生堂とサントリーの広告を中心に数々のコピーを世に送り出してきた宣伝文案制作者が回想する広告とコピーの時代。

文章は非常に端的で、余計なものは何も書いていない。ただ記憶の中にあったものを文章にしただけである。全体のトーンとしては、白夜のようなトーンがあったと思います。黄昏のような、夜明けのような読後感がありました。その通奏低音には孤独感があって。最後の1行を読んでハッと思ったんですが、そういうものをいつも小野田さんが心の中に意識していたから、孤独感が出たんじゃないかと思います。文章を書く人には読んでいただきたくて、僭越ではありますが、宣伝させていただきました。よろしくお願いします。

谷山さん:ありがとうございます。

佐々木さん:僕も好きな本を紹介します。『ドラえもん』を。‥‥って、お恥ずかしいんですけど、本が読めないんですね。見栄でよく買うんですけど、村上春樹も家にあるけど一冊も読んだことない。ただ『ドラえもん』が大好きで。なんか、秋山さんがかっこいいこと言うから対抗しようと思ってすべっちゃいました。最後にすいません。

谷山さん:ありがとうございます(笑)

(2012年12月15日 電通ホールにて)

 

秋山晶さん、本当にかっこよかった。
生き様で勝負する人。まいりました。

(レポート1回目2回目


投稿者: tacrow

伊藤 拓郎 / Takuro ITO (April 12, 1980~) 2006年:武蔵野美術大学 造形学部映像学科卒業 2006年:(株)博報堂アイ・スタジオにてプランナー/コピーライター職 2012年:(株)BIRDMANにてプランナー/ディレクター職 2017年:(株)某広告代理店にてデジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー職(現職) デジタルガジェット、広告、映画、Netflix、写真、ももクロのあーりんを愛してやまない37歳