著名な写真家、と呼ばれる方の話を何度か聴きに行ったことがある。
上京して最初の年に行ったトークショウは、佐内正史写真展だった。
佐内正史と、対談形式でくるりの岸田くんが
ほんとーにとりとめのない話をしていた。
「あのバットの写真は何?」「あぁ、バットだね」「へえ」。
その後、別件で川内倫子と佐内正史という組み合わせも観に行った。
これも今思えば面白くて、川内倫子の胸元がガバーっと開いた服だったので、
なんかエロいなぁと思いつつそこばかり見ていた。話は覚えていない。
荒木経惟のトークも何度か聴きに行ったけど、どれもだいたい一緒だった。
「エロスですよ!がははははは」
細江英公に至っては、最初、
本人がいるとは知らずに作品を見ていて、近くで変なジイサンが
「この写真は戦争へのアイロニーではなくて、
むしろ平和への愛と希望を象徴としたウンタラカンタラ」
と、どっかの生徒諸君に解説していて、それを見た僕と彼女は、
「うわー知ったかぶりオヤジだよ、さむ〜」
「私ああいうおじさんて信じられないわ」
なんて揶揄していた。
しばらくして、さっきのじいさんが
沢山の学生にサインをねだられているのを見て、僕らは絶句。
「本人かよ!」
急いで目録を買って、ふたりで列に並んだ。
「あ、タクロウさんへ、でお願いします…」。
思えば、写真家から写真の話を聞いても、
大抵はどうでもいいことだったりする。