Future Communica vol.3
Cannes Lions 2011 pre Meeting
―これだけは覚えとかなくちゃ!―
今月下旬にはじまるカンヌライオンズ(旧 カンヌ国際広告祭)の事前勉強会に行ってきました。
世界の広告事情を語らせれば右に出る者のない3名のスピーカーが「今年はコレ!」な一押しキャンペーンをピックアップし、カンヌ参加者に今年の見所および現地での過ごし方をアドバイス(ビギナー向け)。
【登壇者】
■ゲストスピーカー (五十音順)
石井 うさぎ 氏 (博報堂/クリエイティブディレクター)
石井 義樹 氏 (キラメキ/CMプロデューサー)
嶋 浩一郎 氏 (博報堂ケトル/クリエイティブディレクター ※本年度PR部門審査員)■司会
河尻 亨一 (銀河ライター)
(Facebookページより引用)
開始から5分ほど遅れての参加でしたが、ずっとノートPCで速記しながら聴いていたのでそのときのメモと、会場で流れていた動画をセットにして振り返ります。
※あくまでメモなので、語尾とか言い回しは実際とは若干異なります。
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■ 今年の見所は?
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~ 僕が席に座る頃、嶋さんのお話が終わったところでした ~
石井うさぎさん(以下、敬称略):
今年カンヌがいちばん違うのは、これまではInternational AdvertisingだったのがCreativityになること。垣根がどんどん取り払われてくるんじゃないか。Creativityの名の下に心理と行動が問われる。どうやって心を掴み、行動に駆り立てたか?そのためにCreativityがあれば、別にAdvertisingでもPRでも別に…。
彼ら(主催側)はエントリーを増やすためにカテゴリを増やしたいんですよ。今後はゲーム分野がアプローチされたりして。例えば携帯電話だけのカテゴリーとかね。今年の見所はAdだけではなくクリエイティブを評価されるフェスティバルになりそう。
あと、行く人はこれだけは忘れるな!パスポート、お金、チケット!って自分でいつも言い聞かせているんだけど、初めての方はカーディガンとか防寒着を!
河尻:
クーラーがガンガンに効いていますからね。石井さん、映像はどうですか?
石井:
映像っていうことでいうと、ここ10年、レベルが落ちてることは否めない。(そのぶん)Webが強いコンテンツになってきている。クリオやNYフェスティバル(カンヌに並ぶ世界的広告賞)を見ても、ワクワクする、「何回も見たくなる」ものが少ない。昨年(フィルム部門グランプリ)のOld Spiceを見ても、YouTubeの再生回数が意識されて設計されていたり、最初からWeb中心になってる感じですね。
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■ 今年の受賞作を予想?オススメ作品
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石井:
ハイネケンのTHE ENTRANCE。
石井:いろんなシリーズがあって、すごくお金がかかってる。監督はフレデリック・ボンド。
河尻:
DATEってやつもよかったですよね。
うさぎ:
(Webとの絡みという話で)CMの主張の仕方が変わりつつあるなと。今のひとつ流れとしては「つづきはWebで」があって、それとは別に、テレビの逆襲がある。ホンダのJAZZ(英国)を見てください。Wieden+Kennedy Londonが作ったものです。
Honda Jazz ‘This Unpredictable Life’
iPhoneAPP
http://youtu.be/UbDYdjhnfEg
うさぎ:
iPhoneアプリでTV画面のキャラクターをキャプチャーするんですよ。隠れキャラがいたり。もはやデバイスは関係なくて。CMの前でスマホをガンガン振るんですよ(笑)。
嶋:
昔はメディアを越境すると、見てて超つらかったんだけど、今はフィルムのディレクターがWeb文脈を理解しはじめたよね。Web好きの人にすればハイネケンもトラップがいっぱいあってゾクゾクする感じとかね。
うさぎ:
ホンダのやつだと、自分のスマホがCMバンクになる。
石井:
フレデリック・ボンドみたいな一流のフィルムディレクターがWebムービーの文脈を理解して力を入れてきたり。クライアントもお金を出すように変化してきた。TV一辺倒からシフトしてる。
うさぎ:
日本の方が携帯文化が独自に進んでいるから、日本からこういうアイデアが出てもいいはずなのに。
嶋:
そうね。ただ、日本では「できない人が一人でもいればやっちゃいけない」みたいなカルチャーがありますよね。そうじゃなくて、楽しめる人がいるからやればいいと考えればいいんじゃないか。
今、「枠(メディアの垣根)がなくなる」ことは増えている。(そのぶん)器用じゃないとやっていけない。
河尻:
はい。
嶋:
雑誌の記事をWebにそのまま出すとダメなんですよ。雑誌って特定のジャンルの人が読むからいいけど、たとえばAneCamは「一週間コーデで山ガールトップスで」とかの言葉を使っていいんだけど、その言い回しをそのままWebで出すと「わけが分からない」と突っ込まれる。週プレ(週刊プレイボーイ)風に「いかがなものか」って語尾には「判断は俺たちにさせろ」と。
河尻:
アイデンティティを明快にできないですよね。
嶋:
その越境を、フィルムのディレクターがWeb用にできているのがすごい。
河尻:
その話で言うと、僕、Webには70点の原稿を出すんですよ。100点の原稿を雑誌と同様に出すと受けが悪い。(適度なツッコミどころを用意するという)そのジレンマを感じるんですよ。
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■ 猫も杓子もTwitter?
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嶋:
PRの中では応募作の10本に8本が「TwitterとFacebookでこんなにバイラルした!」というムービー。ほんとに多い。でも「人に言いたくなるネタがあるか」が大事で。コミュニケーションの中でTwitterが効果あるなら使えばいいけど、そこが考え込まれていないものが多い。
Twitterを活用した例で、自閉症のドネーションを促すキャンペーンがあったんですよ。それはユーザーが一日一度もつぶやかなかったらその日はバッテンがついてドネーション(寄付)されるというね。今までとは違った使い方のアイデア。
PR部門でいうと、チュニジアの未来の民主化されたチュニジアを見せたキャンペーンはよかった。あと、去年のハイネケンのフットボールゲームとかね。
Heineken – auditorium
[youtube http://www.youtube.com/watch?v=Qs67YkLzoI4&w=425&h=349]
嶋:
今年は、こういうPRキャンペーンが受けるのか、より大きな社会の同意を得るものが評価されるのか。真っ二つに分かれそう。
ゲータレードは今年も「REPLAY」の新シーズンをエントリーしてる。Advertising的に見ると「またか」になるんだけど、PRって継続的活動が評価の基準になるから、「いくつになっても挑戦できる」という活動がさらに進化して続いていることはいいんですよね。
うさぎ:
「REPLAY」は去年賞を獲りすぎるほど獲ったので去年ほどの受賞は無理だろうけど、今年も何らかの評価をされるでしょう。チュニジアのケースもそうだけど、PRの世の中のムードをつくること、“キモチ製造装置”としてはいい。にしてもチュニジアのはデザインがいまいち。仕組みの部分と表現として優れていることの両面、クリエイティブの基礎体力は大事。
河尻:
REPLAYのムービーにTwitterもFacebookも出てこないのが逆に新鮮ですよね。
嶋:
スーパーテレビ的ですよね。TwitterでもFacebookでも、書かれることはTVのことが多くて、それを分かってる感じがする。
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■ ソーシャルってどうよ?
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河尻:
TwitterやFacebookでこんなに話題になりました~ってムービーは、ぶっちゃけ飽きましたよね?とはいえトレンドですよね。
うさぎ:
「SMALL BUSINESS SATURDAY」はFacebookの新しい使い方を示しています。これは説明が難しいんですけど、アメックスがFacebookを使って、中小の企業を集めてセール情報を集約しているんですね。
河尻:
Facebookの仕組みをつくってますよね。でも仕組みを知るのって疲れますよね(笑)。
うさぎ:
見るだけで面白さが伝わって気持ちいいCMとは違いますよね。
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長くなってきたので、つづきはまた明日~。
うろ覚えですが、嶋さんが最初におっしゃっていたのは、今年のカンヌについて。Creativityに変わることやPR部門の審査員を務めることからか、ADとPRの違いに触れていました。「PRはADよりも上位概念。PRは誰かに言ってもらう、第三者の価値を通じて広がるものであるのに対して、ADはその中のひとつの手法である」みたいなことを。また、PR部門のそうそうたる審査員の中で「小津安二郎とウディ・アレンが監督した映画、ブルゴーニュワインとトリビアを熱狂的に愛している。なんて普通書かないですよ(笑)」(カンヌ審査員ページ参照)と河尻さんにつっこまれていたのも最初だったような。
>YANAGAWAさん
補足ありがとうございます!
なるほど、震災後の今だからこそ余計に、「PRはADより上位概念」という言葉はしっくりと来ます。のっけから、とても大切なワードを発表されていたんですね(汗)。