『秒速5センチメートル』の新海誠監督最新作『言の葉の庭』を観ました。
※以下、若干のネタバレ要素もあります。
15歳の主人公が雨の昼間に大人の美人と会ってエロいこと考えずにいられるのか、しかも足を触って我慢できるのか、なんでこんなに達観してるのか、ぜんぜん分かりませんでしたが、雨とそれに洗われた新宿の克明な描写が美しすぎて。
主人公に感情移入するとかしないとか、どうでもよくなりました。
というか、どうでもよくしないと逆に見ていられない青臭いシーンの連続です。背景の描写にはそれだけの力がある。
アニメーションや漫画って、描写の解像度で人物の心情を語ることができるんだなと実感した46分間(短いので料金は1,000円でした。しかも劇場でBlu-ray、DVDも売られている!)。秦基博さんのエンディングテーマもめちゃくちゃいい。むしろこの歌の長いミュージックビデオだと思うと、すごくいい。映画としては「?」です。
ノートに鉛筆が置かれる筆圧で紙がべこんっ!と数ミリ凹んでいる描写とか、狂ってます。この描写にエロティシズムを感じないと一向に楽しめない。脚本はあってないようなもの、というか邪魔かもしれん。
もう一人の主人公を「新宿」と捉えると、この映画はさらに生き生きしてきます。
日本の街並みの描写が生きている作品といえば『耳をすませば』や『東京ゴッドファーザーズ』、『時をかける少女』、『パトレイバー2』などが思い出されます。これらの作品は人物も動きまくり。
http://youtu.be/BKberUKvlsc
『言の葉の庭』は文字通り言葉を介して男女が逢瀬を重ねるお話なので、人はそこまで動かない(ひととき殴り合いの喧嘩になるシーンもありましたが、あれは取って付けた感がありました)。対照的に、街は常に躍動している。雨や風や電車やカラスやビルの航空障害灯。
やはり、言葉で進む映画なんだと思います。往年の朝ドラみたいな、ナレーションとテロップが満載です。そこに都市の細密描写が重なることで現実感が取り戻され、ストーリーが前へ進む。季節の移り変わりとともに。‥‥登場人物の顔つきはだいぶ少女マンガ風ですが。絵も言葉。そして、言葉で進めていくなら、映画じゃなくてもいいんじゃない?とも思えてきます。
雨と風と揺れる木々がとにかく美しい。そこに言葉が折り重なることで世界観に引き込まれてゆく。都会で雨を好きになるには、公園が必要なんだなーと思ったり。あら、いつの間にか詩的な気分になってる。
でも、最後まで登場人物たちの気持ちに寄り添うことはできませんでした。周辺ばかり観て満足してしまう。中心にはなにもない。登場人物たちの葛藤は美しい描写と音楽に乗せてさらりと流れてゆく。
見所は新宿とその解像度、そこから漂う雰囲気。昼間から新宿三丁目のバルト9で観て、そのまま作品の舞台である新宿御苑へ散歩に出かけるのが、この映画の正しい鑑賞法かもしれません。
言の葉の庭
http://www.kotonohanoniwa.jp/