発売から1ヶ月近くが経ち今さらな話題ではありますが、Perfumeのニューシングル『スパイス』。PVは類い希なるカット割りだと思うんですよね。
ビデオクリップはサカナクション、木村カエラ、RADWIMPS、9mm Parabellum BulletなどのPVを手がける島田大介が監督しており、ガーリーでファンタジックな映像に仕上がっている。
近年のPerfumeのPVはすべて関和亮か児玉裕一が制作しており、島田がPerfume作品に携わるのは今回が初。過去作とひと味違う雰囲気の映像は、多くのファンに新鮮な印象を与えそうだ。
(ナタリーより)
楽曲から受けるアンビエントテクノやプログレッシブな印象とかそういうのは門外漢なので他の人のレビューに譲るとして、ここまでエッジィな曲がメジャーシーンで発売されることが素直にうれしいです。その思いをさらに深くできるのが今回の島田監督によるPVで、冒頭から圧巻なんです。カット割りが。
最初、曲のテンポに合わせてテーブルの上の小物が次々とカットインします。
続いて「耳を澄まして」「耳を澄まして」のリフレインも、曲調に合わせるようにあ〜ちゃん、かしゆか、のっちの3人がテンポよく登場。
問題はこの後です。YouTubeでいえば23秒あたり。
「目を凝らせばほら」のあ〜ちゃんに重なるように、のっちとかしゆかのカットが一瞬だけインサートします。
続く「目を凝らせばほら」はそつなく進行し、「全てが見えるわ」でまた「ぐちゃっ」と、何に「すがる」でもないカット割りが入ってそのまま淡々と進むのです。
加えて、3人が並んでもいいであろうシーンも「あ〜ちゃん+かしゆか」と「かしゆか+あ〜ちゃん」とを分けて、構図も揃えずに撮ることで、映像に不安定な違和感を作っているように思えてなりません(半分を過ぎたくらいからは普通のつなぎ方になっちゃうのですが)。
初めて見たとき、「こわっ」と思いました。「ハラハラするわ〜」というか。
映像と音楽の定石である「テンポに合わせたカットバック」を守りながらときどき裏切る。今まで見てきたどのPerfumeとも違ったイメージです。コーラスや和楽器を取り入れた楽曲の新規性を映像にも求めるとこうなる‥‥ということでしょうか。
今までPerfumeのPVをずっと撮り続けて来られた関監督は「万華鏡の中で歌う」とか「型紙の中をすり抜けながら歌う」とか、わりと分かりやすい(記号化されやすい)手法で3人の歌を映像化してきた印象があります。別の監督がやっているから当たり前といえば当たり前ですが、歴然と関監督の延長ではないところが面白い。
思えば、振り付けを担当しているMIKIKOさんによるダンスも、曲のテンポに合わせる振りと歌詞に合わせる振りとを混ぜこぜにしているからPerfume独特の不思議なダンスになるそうです。そのずらし方に似てる気もします。
なんにしても再生直後からの気持ち悪いカットバックと構図の連続は非常にツボで、こういう編集ってちょっとでも気を抜いたらワケが分からないことになると思うので、すごいなと。しっかり「思いがけないワクワク」のスパイスになってる。
何が言いたいかというと、1月からのツアーが楽しみだぞ!と。