GINZA

まさか夜から雨が降るとは思っていなかった。

お好み焼き屋を出たらざーざー降りだった。
昼間の晴天が嘘のようだった。嘘の天気。

毎日が光速のように過ぎてゆく。

こないだまで夏だったのに。

新橋の慈恵医大で処方してもらったメガネが
三越で取り置きされているというので、引き取りに。

何度来てもしっくり来ない街です。
自分が異物感・違和感・場違い。

でも銀座は嫌いじゃない。
東京の街はどこもクセというか、性格がある気がします。

銀座・浅草・秋葉原・新宿・池袋・渋谷・青山・お台場・吉祥寺・多摩センター。

それぞれに顔がある。

 

三越ではセレブがひしめいていました。
セレブのくせに、ごったがえしていました。

金木犀


秋の気配。

家を一歩出ると、金木犀の匂い。
秋を感じる時、決まって地元の祭を思い出す。

地元では勇壮なだんじり、神輿の男祭が開かれ、
そのときが街の最も高揚する瞬間である。
ここぞとばかりに男も女も入り乱れ、最後は川で大暴れする。

秋は祭の季節。だがそれは本当に一瞬の出来事で、
あとに残るのは空っぽの酒瓶と金木犀のほの甘い香りだけだ。
日本酒の強烈な臭気と金木犀の香りが混じり、けだるさを誘う。

匂いの記憶というのは凄まじいもので、
視覚の記憶なんぞよりよっぽどリアルに情景を思い出させてくれる。
あぁ祭が近づいて来たな。秋だな、と思える。

驚いたのは、家を出てバイト先の新宿に降り立った時。
あの透明で甘い匂いがそこら中から風に乗って届くので、
思わず駅で深呼吸した。

都心にいながらにして、ぼくは地元の祭の中に立っているような気分。
少し寒い。

帰りたいな、と少し思った。

お気に召すままに

徹夜で片付けしたはいいのですが、
昨日はそのまま学校に行く羽目になり、
眠い目をこすりこすり登校して、何とか出席を果たしました。

で、授業はD写真基礎。
学校の面白い所を見つけて撮るという、至ってシンプルな内容。
その後みんなで学内の喫茶店「シスコ」に集い、
年末の展示についての大まかな打ち合わせをしました。

広報担当でDM・ポスターは僕が作ることに以前から決まっていたんですが、
今日新たにwebデザインをどうするかという話になって、webの方もなぜか
僕が作ることになってしまいました。
「あのう、広報だけでいっぱいいっぱいです」
「大丈夫大丈夫」「えーっ」「うん、大丈夫大丈夫」。

どうなるんだろうという不安というか、
こりゃバイト辞めるしかないかなと思っています。
辞めたら生活は厳しくなるけど。楽しいからいいか。いいや。

 

そんでまぁ話し合いが終わって、夕方からは
武道館に行き、椎名林檎ライヴを見てきました。

あんな華奢な体からどうしてと思うほど力強くて、
なんとも美しいライヴでした。
照明とか演出の仕事も凄いプロがやっているんでしょう。
けっこう凝った仕掛けで。

特に最後、林檎嬢の顔のホクロが消えている事に場内は騒然。
ホクロが無くなっていました。
整形したのかな。表情が柔らかくなった印象を受けました。
にしてもライヴはよかったです。
あと最後の最後にマラカスでラーメンズの舞いを披露してくれたのがウケました。
さすがラーメンズフリーク。

シャカシャカシャカシャカシャカシャカ・・・・
基本的には・お前が悪い!・からんでからんでミソっかす♪

発掘

カラオケに行って帰って。

午前4時から部屋の大片付けを開始したにも関わらず、
片付くどころかむしろ汚くなっていくばかりで滅入る。
しかもラジカセ(死語?)の配置替えなんぞをし始めたもんだから、
もう手をつけられないようなドツボにハマって更に滅入る。

ラジカセが退いたおかげで本棚はスペースを大きく確保でき、
今までそこいらに散らかっていたマンガの類いを一気に
並べることが出来たんだが、今度は「めぞん一刻」の
五巻から七巻までが無い。どこを漁っても出てこない。

自分の勘違いでどこかに埋もれているだけかもしれない。きっとそう。
にしてもどこをどう掘っても見当たらない。
日はとっくに昇り、なんだか疲れた。

しかしこうして本格的に片づけ始めると、
六畳一間の我が家も何かと収納空間があるもんだ。
押し入れはまだ空きがある。本棚もまだまだ入る。
台所も暗室用品を売り払ったおかげで料理スペースが出来そうだ。
(今まではお湯を沸かすのが精いっぱい)

工夫次第で一人暮らしはこんなに快適、みたいになりたい。
この惨状ではほど遠いが。。

 

「2時間後に女の子が束になって押し掛けてくる」
と想定して始めたんだけど、なかなか片付きません。

最低気温

東京、今日の最高気温は22度。最低気温は16度。

急に寒くなった気がする。一気に秋から冬の装いに衣替え。

冬は嫌いじゃない。

日が沈むのが早いのが残念だが、空気がぴんと張りつめた感がたまらなく好きだ。

チリひとつ浮かんでいない大気中に、光が飽和してゆく。

凍てつくような外に出て、たくさんの光を浴びながらカメラを取り出す。

レンズに陽光が反射し、プリズムが外界を写し出す。

冬の自分は布団からなかなか抜け出ずにいる情けない男に成り下がるが、

それでも頑張って外に出ると、
大気と光の合奏に我を忘れ、
ひたすらシャッターを切る。

茜色

高校時代の友達と会った。
彼女はこの夏、入院していた。

退院後、北海道・東北を回って、
そのまま東京まで来たんだと言う。

そんなことして大丈夫なん?と聞いても
平気そうに笑うだけで、少し安心した。

久々のおしゃべりは互いの進路や闘病生活の話で盛り上がった。

彼女は、神戸の大学院を出たら
とにかく家庭を築きたいと言っていた。
仕事はその次だそうだ。
少なからず入院という経験が思考にも影響して、
今の「家庭第一」に落ち着いたんだと話してくれた。

僕も昨年の闘病生活はモノの考え方にすごく影響を及ぼしたが、
とりあえずは死なない程度に好きなことをやっていたいだけだ。

コドモだと思う。
けど、管に巻かれて好きなことも出来ず、寝返りも打てない
生活を一か月も経験すると、あながちコドモとも言い切れない。

あの時の苦しみは、大袈裟だけど今を生きるためにあったんだと思う。
二十日間の意識不明から甦ったんだから、
今はたくさん本を読んで、旅行をして、写真を撮りたい。
就職とか考える時期だし、人生は甘くないけども。

例えば、海外旅行を自由に出来るのは今だけだよ、
と言う彼女の言葉は本当だと思うし、彼女が今回の北海道東北旅行を
からだのことを(ある意味)無視して決行した気持ちがよくわかる。

忙しいって連発する人はかっこわるいよね、とか、
建築という仕事の話、写真のコト、いろいろ。
次に会った時、同じ話題を話すか。どう話すか。
ちょっと楽しみ。

吉祥寺

学校はお休み。

手ぶらで吉祥寺に行った。友達の展示がある。
吉祥寺パルコの向かい側、その名も吉祥寺ギャラリー。
そこで久々の再会。ひととおり鑑賞し、近くで喫茶。

展示としては少し場所を持て余している感もあり、そこは不満だった。
けど、男女四人の展示は女の子が圧倒的に元気で、ふっきれている。

浪人時代の戦友。いい感じになりつつある。

進級制作

武蔵野美術大学映像学科三年・進級制作展。

打ち合わせは午後十時まで及んだ。
ケンケンガクガク、ああでもなくこうでもなく。

結果としていい話し合いになったと思う。
秋の第一段展覧会。よい感じである。

インスタレーション。
僕は写真を一辺2メートルに引き伸ばす。

 

10/20〜10/25・武蔵野美術大学映像学科三年・進級制作展。

小平の田舎で会いましょう。

銀ブラ

授業が午前中で終わったので、銀座を徘徊することにした。

進級制作展の準備で京橋の堀内カラーに用があったのと、
たまには息抜きも必要という大義とで、
特に予定も予算も決めず電車に乗り込んだ。

堀内カラーでは営業担当の有田さんとデジタルプリントの話をし、
彼女曰く「お安くさせて頂きます」との事。うわーなんていい人。

用件を終えて、さて。
ちょっと銀座のギャラリーでも見るか。
ん?
藤幡正樹展。この人は確か友人の大学の先生だ。
入ってみる。と、がらんとした白いスペースに、
筒のような映像が投射してあるだけだった。

なんだこりゃ。

よく見ると、なんと自分が映っている!
しかもこれは、この部屋のパノラマ!

ぐるぐる。ぐるぐる。…面白い!

すっかり楽しんで、その後有楽町無印へ。
てきとーに見て、ソフマップで日記更新。
立川に、こないだ大学を辞めた友人が来ているという。
一緒にお茶でもどう?とのことだが、どうにも間に合いそうに無い。
悪いけどゴメンと返信してそのまま新宿東急ハンズに向かう。

紀伊國屋書店へ。
芥川賞受賞の本に目が止まる。山田詠美推薦。ほぉ。
柳美里の『交換日記』に目がゆく。面白そう。買おう。
浦沢直樹の『20世紀少年』。面白そう!買おう。

三冊購入。
村山由佳の『星々の舟』を読み始めてまだ日が浅いが、まぁいい。
読書の秋ですから。

帰宅ラッシュに挟まれて、午後九時帰還。了。

再会 始業

母が、安藤忠雄のことを安藤広重と言っていた。
江戸か!

三週間ぶりに会った。

相変わらず、何と言うかしかめっ面だった。フキゲンなのではない。
と知っているので何も言わない。

「実家で南国少年パプワ君を読んで泣いたわー」
と言っていた。

 

今日からまた学校が始まる。

始まる事自体は何でもないのだけど、
最初の授業が…例のゼミなので、ちょい憂鬱。

勝手気ままに。てきとー騙し討ち。

ハイスクール

田舎に帰っている時、ふらっと母校へ立ち寄ってみた。

うちの高校は全国的にも珍しい城跡に建てられた学校で、
お堀が校舎を囲む、一風変わった建物をしている。
…で、正門の前まで来たのはいいものの、
今となってはいかにも部外者なので、どうにも困ってしまった。

困ったどうしよう?というメールを、
たまたま同じく田舎に帰っていた友人・花ちゃんに送ってみた。
ほどなくして返信メールが到着。
「じゃあ今からそっち行こうか?」 やったね。
というわけで、二人なら恐くないとばかりに約5年ぶりの高校を訪ねてみる。

highschool

日が沈んだあとの学校は廃墟のように暗い。(写真は夕方に撮影)

懐かしの美術部に辿り着くと、女の子が一人で絵を描いていた。
聞けば受験生だという。
顧問の先生も異動で変わり、昔の煩雑な美術部とは違っていた。

が、それでもここの空気は変わらない。
テレピンオイルのツンとするにおい。油絵のにおい。
ここで僕たちは絵を描き、写真を撮り、閉門時間までおしゃべりをした。
高校時代の思い出はどれもろくなものは無いし、
正直つまらない日々でしかなかったけど、この部屋だけは別だった。
ここに来れば誰かがいた。

美術部が世界だった。

逃避行

この夏は逃げた。

世間の疎ましい生活から逃げるべく、
北海道をぐるり。実家でゆるり。岡山をするり。

おかげでいい休息になったと
満足して新幹線に乗り込んだが、
無理なスケジュールがたたって、
岡山駅から新宿のバイト先まで直行するハメになった。
このままバイトとは!

先のことを考えるのも憂鬱なので、車内で小説でも読もうと試みた。
が。

最近のというか最新の新幹線と違って、
ひかりの車体は不規則に揺れ、とうとう電車酔いしてしまった。

岡山で浸かった温泉の安らぎも霞むようなせわしい駅に降り立ち、
そのまま中央線へ。
田舎と都会の差異を目の当たりにし、
早くもげんなりしてしまった。

とは言えやはり東京は便利だ。
あっというまに新宿に着く。交通網は呆れるほど正確だ。


秋が足踏みしつつこちらの顔色を窺っている。
まだ来なくていいよ、と言いたいが、
夏からも人ごみからも逃げきったばかりで、
次の季節が楽しみでもあったりする。

というわけで、今日は秋らしくしっとり書いてみた。