博報堂が発行している雑誌『広告』2012年1月号、コメディアン 関根勤さんへのインタビューより。
関根は、妄想好きとしても有名だ。
「アイドルとデートする妄想はよくやってたんですけど。最近は、妻にも妄想し始めましたよね。というのは、21年前に、家族で旅行に行った写真が娘の麻里の部屋にあったんですよ。パッと見たら、妻が35で。まあ、35というと本当に若くて、きれいで、女盛りなんですね。アレーッ、何でこんな女盛りの妻を楽しまなかったんだと。毎日眺めたり、抱きしめたり、『きれいだね』って言ったり。僕も37でそこそこ若かったんで、気づかなかったんですね。でも、ここへはもう戻れない。そのとき、ふと、待てよ、と。今の妻のことも、20年後に同じように写真を見て比べてみたら。『ああ、この頃きれいだったな。何で俺はそれを享受しなかったんだろう』って思うと思ったんです。これまでの妄想って、過去ばかりに飛んでいたんですけど、そのとき初めて自分が78歳になりまして、20年後に、未来に飛んだんですよ。自分が78歳になったという妄想で今の妻を見たら、いや、妻は若いし、きれいなんですよ」
感動しました。
33歳の僕は2ヶ月後に同い年になる妻を関根さんのように見たことはもちろんなくて。
自分なりに反省して、平日の夜に呼び出し麻布十番でイタリアンに興じたわけです。
というのはこじつけで、たまたま妻の会社の近くにいたから出てきてもらっただけですが。でも、こういう誰にも邪魔されないディナーが平日にあるのは悪くないし、20年後に訪れるかもしれない後悔をすこしは軽減できるかも。なんて。
関根さんは意識して喋っていないかもしれませんが、妄想ってたしかに「亡き女を想う」と書く。たとえ戻ってこない過去も、いったん未来に飛んで想えば、また現在に帰ってこれる。
というのはこじつけで、本当は「妄(みだ)りに想う」って意味だから、好き勝手に想うこと。それを一枚の家族写真から拡げること自体、とっても愛妻家なんだと思う。
そんな関根さんを見習って、ときどき未来に飛んでみよう。