Future Communica ! Vol.01

『広告批評』の元編集長であり、“銀河ライター”を主宰する河尻亨一(@kawajiring)さんと、コミュニケーション・デザイナーの岸勇希(@yukixcom)さん。おふたりの対談に出席しました。テーマはカンヌ広告祭。

 

Future Communica ! -cannes lions 2010を超えて-
2010年9月8日 19時~22時 at 3331 Arts Chiyoda

 

岸さんの著書、『コミュニケーションをデザインするための本』はちょうど読み終えたばかりだったので、コミュニケーション・デザイナーが語るカンヌ広告祭というよりも、著書やTwitterでの発言から受けるキレモノな印象の岸さんがカンヌをどう斬るか?に注目して臨んだセミナー。結果は、その期待を大きく上回るものでした。

 

  1. 広告業界の現状と、2010年にカンヌが示した潮流

  2. カンヌ広告祭の事例と、審査員・岸さんの見たコト

  3. 岸さんの仕事から辿る、コミュニケーション・デザインとは

 

お話は、振り返ってみたらこの三部構成で進められていました。

 

広告業界の現状と、2010年にカンヌが示した潮流

岸さん:
「広告業界への不満が多い。カンヌも、まっとうな評価を下しているか?賞というものはこだわったり狙ったりするものではない。広告は作品でもアートでもなく、クライアントの期待に応えるためのもの。広告祭のサロン的、仲良しグループ的な機能も必要ない」

河尻さん:
「吠えてるなぁ(笑)。岸さんてヤンキーですよね?で、そういう人がインタラクティブの世界には必要なんだと思う。オタクのものだったインターネットがマスに届くものに踏み出すには、ヤンキーのパワーが必要なんですよ」

岸さん:
「業界はたしかに変わってきていて、競合相手が広告代理店から秋元康さんや小山薫堂さんになってきている。つまりコミュニケーションそのものが求められる風潮にある。それは、本当に世の中を動かしたものを評価しようという、今年のカンヌが目指してきた新しい動きとも合致する」

河尻さん:
「では、具体的なカンヌの事例を見ていきましょうか」

 

つづきます。

「ことばに出会う」

『島森路子インタビュー集 2 ことばに出会う』

「広告批評」30年の歴史の中で、島森路子が行なった200余編のインタビューの中から、消えてしまうにはあまりに惜しい24編を選び、上下2冊に集成しました。各界のトップランナーが自在に語る、ぜいたくな「ことばの饗宴」です。

村上春樹   物語はいつも自発的でなければならない

鶴見俊輔   自分を根底から支えるもの

池澤夏樹   反戦の楯としての広告

是枝裕和    「九条」を手がかりに日記を描いた

深澤直人   日常感覚の中にデザインの必然がある

佐藤雅彦   本当に面白いことは何か

浦沢直樹   現実がマンガを追いかけてくる

とんねるず  おれらはニッポンのブルースブラザーズだ

爆笑問題   十年間ケンカしっぱなしです

ラーメンズ  面白いことは向こうにある

横尾忠則   福を呼んでこそ広告だ(展覧会にて)

Amazon

5年とか10年とか前のインタビュー集ですが、今読んでも面白いです。
いや、この混沌とした今だからこそますます面白いともいえます。

で、この本について、書いてみる。

“「ことばに出会う」” の続きを読む

インセプション

映画『インセプション』、なかなか面白かったです。

 

[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=ZfDm3s_IcqM&fs=1&hl=ja_JP]

 

「ダークナイト」のクリストファー・ノーラン監督が、オリジナル脚本で描くSFアクション大作。人が眠っている間にその潜在意識に侵入し、他人のアイデアを盗みだすという犯罪分野のスペシャリストのコブは、その才能ゆえに最愛の者を失い、国際指名手配犯となってしまう。そんな彼に、人生を取り戻す唯一のチャンス「インセプション」という最高難度のミッションが与えられる。主人公コブにレオナルド・ディカプリオ、共演に渡辺謙、ジョセフ・ゴードン=レビット、マリオン・コティヤール、エレン・ペイジほか。

(eiga.comより)

 

さすが『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督、
迫力の映像と荘厳な音楽、畳みかけるストーリーテリングで
どんどん見る人を引き込んでいきます。

本当に、畳みかけるのが上手い。
日本人だと庵野秀明みたいな饒舌さ。
映像のカタルシスここにあり!って感じです。

が、渡辺謙演じるサイトーの企業買収という動機に対して
やることなすことが大げさに見えたり、キーパーソンである
主人公の妻がしつこいわりにさほど魅力的でなかったり、
夢の中に潜入するという着想の面白さの中でやたらと
ドンパチが長くてなんだかなぁ…と感じさせてくれるなど、
画や音の壮大さや設定の魅力に比べてお話が小粒かつ
雑な印象を受けてしまい、傑作には及ばないように思いました。

「衝撃のエンディング」と言われるラストも
あのまんまのシーンを早々に予想できたので余計に。
全体的に、今回は力技だったかな?

そういえば、音楽に秘密があったり、
キャラクターたちの設定がわかる特別映像など、
本編とは別に深読みしたくなるネタが随所に
ちりばめられているところも、庵野秀明監督のエヴァみたい。
この監督、めちゃくちゃ頭がいいんだろうな。

 

なんだかんだ言っても、
熱にうなされて映画の設定が自分のリアルな夢にも出てくるほど
ですから、それなりに余韻はあったんでしょう。
音楽、俳優陣、かっこよかったです。

起きてる方のぼくは『ダークナイト』が好きです。

うなされて

熱が出てもがんばるんじゃなくて、
熱を下げることにがんばった方が早いことが分かりました。

急がば回れ。だなぁ。
38℃で書いた企画書は最低でした。

 

今朝のこと。

相変わらずうなされながら寝ていた僕に、
奥さんが体調について聞きました。

僕はすべて寝言で返したらしい(記憶にない)。

メモしてくれていました。

妻「調子はどう?」

僕「途中を抜いたからわかんない…」

妻「何が?」

僕「インセプションの続き…」

 

夢の第三階層くらいまで
落ちていたのかもしれません。

 

映画『インセプション』の感想についてはまた今度。

書評

初めて、人から依頼されて
書評というものを書きました。

 

天野祐吉作業室さんより献本いただき、
『広告批評』元編集長・島森路子さんの
インタビュー集『ことばに出会う』という素敵な本について
あーだこーだと感想を述べる簡単な作業‥‥と思いきや、
いざ書き出すとむずかしいものです。

 

とにかく、すごい。
島森さんの人間力と言わざるをえない。
だけど「とにかくすごい」じゃ
「本田△!」(ほんださんカッケー!)と
たいして変わらない。
どう△なのかは伝わらない。

どうすごいんだろう?
改めて読み返すと、その糸口は
巻末の橋本治さんの解説にありました。
おいおい、他人様の書評じゃねーか。
というツッコミは甘んじて受けつつ、
書きながら見えてくるものもありました。

 

いただいた本と、天野さんからの
直筆のお手紙は我が家の宝物にします。

 

肝心の書評の中身は、
天野祐吉作業室で一部紹介される
かもしれませんが、自分のblogには
後日、全文掲載させていただきます。

人生相談

電通のクリエイティブ・ディレクター、
さとなおさん こと佐藤尚之さんのblogで、
面白いエントリーがあったので貼り付けます。

 

3つの人生相談

 

岡田斗司夫の回答がドラマチック。

 

結局、ソリューションとは一般論のこねくり回しではなく、ソリューションを提示する人の「自分の露出」なのだな。最大公約数的解決策なんか意味なくて、結局「自分」なんだ。こういう回答を読むとそういう意を強くする。

 

という、さとなおさんの考察もガッテン!です。
つまんない解を導くよりも、「こういう見方もあるのか」
と相談者にカウンターパンチを食らわすような
「自分の表出」が、案外、相手をも救うんじゃないかなと。

雑誌の気骨 Vol.2

雑誌の気骨 Vol.1」のつづきです。

 

雑誌対決!
『広告』×『Libertines』×『ROCKS』
3誌編集長トークセッション

 

3誌のアートディレクターさんも交えた第2部も
非常に興味深い内容だらけだったのですが、
それらは思い切ってバッサリ省略し‥‥
(ごめんなさい)

僕が最も琴線に触れた言葉のメモを書き起こします。

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PIXELS

[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=ugV6cLgwomo&fs=1&hl=ja_JP&rel=0]

このシズル感、ファミコン世代にはたまりません。

龍馬伝

大河ドラマ『龍馬伝』、一週遅れでやっと見られました。
すごいよNHK。画がいわゆる時代劇の嘘くささのかけらもない。

糸井重里さんの感想を一部引用させてもらいます。

 

2回観ただけで、いろいろなことを思いましたが、
やっぱり「ヨゴシ」の質量がハンパじゃないです。
血と汗というやつは、じつはなかなか見せにくいもので、
過剰に見せつけるような演出をしたら、
観ている人がばかばかしくなってしまいます。
しかし、『龍馬伝』は、ホコリと、泥と、訛りです。
このドラマの画面を見ていると、
ずっと泥んこ遊びをしているかのような気分になります。
どろどろのぐっちゃんぐっちゃんです。
ばんばん舞い立つホコリに咳き込んでしまいそうです。
早口の土佐訛りは、聞き取れないところもあります。
でも、それが、アニメっぽさをかき消してくれるんです。

ほぼ日刊イトイ新聞より)

 

はい、その通りのことを僕も思いました。
床も服も髪の毛も、砂ぼこりにまみれている!
その中で龍馬や弥太郎や武市さんが動いている。

実際には、コーンスターチ(トウモロコシの粉末)を
頭から被って、扇風機でまき散らしているらしいです。
目も開けられないような状況で二枚目俳優が泥まみれに
なって殴られている姿は、もう俳優じゃなくて龍馬にしか
見えませんでした。いまDVDで『新選組!』も平行して
観ているので、江口洋介と福山雅治の龍馬がごっちゃに
なりがちですが。

 

もうひとつ、ドラマ演出家・大根仁さんのブログも一部引用。

 

美術班のセット・オープンセットの素晴らしさに惹かれっぱなしだった。所謂【汚し】という、舞台に生活感・リアリズムを加味させるテクニックがまあ凄い!!
土佐篇がこんなにすごいことになってるんだから江戸や京都の町並みは本当にテレビドラマ・映画問わず時代劇史上最高の美術ワークが観られるかもしれないなあ。

大根仁のページより)

 

美術がすごいからドラマもすごいってことになるの?
と言われれば、僕はテレビの人間じゃないので分かりませんが、
いやきっとすごいでしょう。見れば分かる、みたいな気迫が
画面からびんびん伝わってくるんです。痛快です。

一年間も楽しみなものを見つけられた!
これは嬉しいことです。

AVATAR

お正月三が日の最終日、話題の映画『アバター』を観ました。

 

[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=8-XXDzOJ1m8&hl=ja_JP&fs=1&rel=0]

22世紀、地球から遠く離れた惑星パンドラへとやってきた元海兵隊員ジェイクは、自らの分身となる“アバター”を操り、先住民ナヴィと交流するが、やがて鉱物資源を巡って勃発する人類とナヴィとの戦争に巻き込まれていく。

はい。

『攻殻機動隊』の押井守監督いわく、

「あれは事件だよ。全員に観て欲しい映画だね。こちらがやりたかったことを全部やられちゃった。ハリウッドの物量だけの映画なら悔しくないけど、(監督の)キャメロンは頭がいいよね。あれには10年かけても追いつけない。映画『ターミネーター2』『タイタニック』でやってきたことを踏まえて、カメラまで開発して、今まで積み上げたものが効いているんだよね」

と大絶賛の3D映画。(シネマトゥデイより)

 

やっぱり見どころは「どんだけ3D感を体感できるか?」に興味が湧きましたが、観てみるとストーリーもしっかりしている。予告編で「ゲームっぽいな」と思いましたが、すっごく「映画」でした。ある意味で古典SF。

だけど、「アバター」と呼ばれる異星人のボディに“乗り込む”主人公は脊椎損傷の軍人で、上半身はムキムキだけど下半身はガリッガリという設定。こういう設定の端々に現代的な要素が無理なくちりばめられていて、監督のセンスに脱帽でした。

 

一緒に観に行った人は

「火の鳥みたいだった」
「火の鳥なら主人公は人類を最後まで殺した」
「胡蝶の夢っていろんな話の元になってるね」

といろいろ感想を話してくれたので、ほっと安心。(つまんなかったら無言になる)

 

見どころでもある3Dは実写ベースで作られているので、フォーカスの合うところだけがくっきりと立体的に浮かんで見え、背景のぼかしが効いてとても上手い。

初めは3Dメガネが重くてやだなーと思いましたが、この映画に関してはここぞとばかりに「3Dを見せつけよう!」というあざとい見せ場を用意することなく、あくまで自然なリアリティを追求していて、気持ちのいい迫力だけが残りました。

 

ひとつ残念だったのは、字幕まで3Dで浮き立って見えたこと。この違和感だけがなぁ。

でも、間違いなく映画館で観るべき映画(というかテレビでは微妙な作品)。2010年最初の映画としてオススメします。

井上陽水 40th Special Thanks Live in 武道館

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「お元気ですかァ?」

の挨拶に笑いが起こるのは日本広しといえど神無月とこの方くらいじゃないだろうか?今日はホンモノ!

「みなさんのご支援の下、40周年を迎えまして‥‥。高いところからではありますがお礼を申し上げたく、本日の運びとなりました、フフ」

 

僕にとっては2年ぶり、ご本人にとってはデビュー40周年を記念する、

yousui

井上陽水
40th Special Thanks Live in 武道館

に行ってきました。ひとりで。

「10周年のときも20周年のときも特に何もしなかったのですが‥‥
 まぁ、40周年でね、なんかやるかという話になりまして。
 これもみなさんのご指導ご鞭撻あっての‥‥何度も言いますが。フッ」

 

「新しいラプソディー」を皮切りに、「嘘つきダイヤモンド」、「飾りじゃないのよ 涙は」、「心もよう」、「リバーサイド・ホテル」、「氷の世界」、「傘がない」、「夢の中へ」、「帰れない二人」、「いっそ セレナーデ」、「少年時代」など、いくつもの名曲をたっぷりと。

こう言っては失礼だけど、61歳とは思えない声量。透き通るような声。70年代の歌も余裕の貫禄でまろやかに歌い上げる。CDに収められている当時の鋭利な印象を一周して、より怖い歌詞に聞こえる。

 

冷たい雨が 今日は心に浸みる
君の事以外は 考えられなくなる
それはいい事だろ?

(「傘がない」より)

 

歌の発表から30年経って、今は「いい事だろう」と、より他人ぶった突き放した印象にも聞こえて、面白い。若者の利己的で切羽詰まった余裕のなさを感じる昔の歌い方も大好きなんだけど。

 

くるりやPerfumeやBjorkや林檎やRadiohead、武道館ではさまざまなアーティストのLIVEを観てきましたが、終始座りっぱなしは初めて。両隣が白髪のおじさま。周りを見渡してもだいたい父母の年代。そんな人生の先輩たちが「陽水ーーっ!」と叫び、「闇夜の国から」のイントロで「キターーーー!」と喜ぶさまにも圧倒されました。

みんな目がキラキラしている。頭も若干。

 

あぁ、両親にこそ観てほしいなぁ。リアルに「人生が二度あれば」を歌わなきゃいけないのは僕です。

 

ありがとう、陽水様。

あなたを聴き込んだ高校時代がありありと蘇る2時間は、あっという間に終了。50周年では親を連れて行きます。

□□□

[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=pohk7IEuKlc&hl=ja_JP&fs=1&rel=0]

東京事変のMステが消えちゃったので□□□を貼っておく。